第116話
「ええっっ!!なんで泣いてんのコウ!」
立花がブランコから立ち上がり急いで駆け寄ってくる。
「だって…立花にフラれただろ…もう二度と一緒に遊んだり笑顔を向けられたりしないと思ったから……」
最悪…二度と言わないでなんて告白した相手に言わないだろ。
「ちゃんと最後まで聞いてよ!!二度と言わないでってのは自分を悪く言わないでってこと!あたしが好きになったコウをコウ本人だとしても絶対悪く言われたくないから!」
何だよそれ…俺が俺を悪く言ったって…あたしが好きになったコウ?
「え?あたしが好きになった?」
俺の聞き間違いじゃなければ好きになったって…。
「もー!あたしだってもっとサラッと格好良く返事しようと思ってたのに!いきなりコウが泣いてるから!ばか!」
立花もちょっぴり泣いてるけどあれ?もしかして告白はOKなの?
「た、立花も俺と気持ちは─」
「一緒!あたしはコウが好き!もう大好き!誰よりも好きだしずーーっと一緒に居たいよあたしも」
立花の声が俺の頭の中で繰り返される。
「それじゃあ俺と付き合ってくれる?」
「あたしだってコウと付き合いたいの!よろしくね」
そう言うと俺に抱き付いてくる立花。
「ずっと─こうしたかったんだ」
俺のコートに顔を埋めながら少しこもった声で喋ってる。柔らかい立花の体が俺にそっと寄り添う。
「俺だって、ずっとこうしたかった」
暫しの沈黙、数十秒は経った頃
「よし!あんま遅くなったら心配されるから帰ろ!」
何時もの立花がそこに居た。いや今は俺の彼女だけど。
「そ、そうだな立花も俺も風邪引いたら大変だしな」
さっきまで抱き合ってたから体と心はホカホカですが。
「むー!まだそんな呼び方!」
「呼び方?」
何だか少し怒ってる様子の立花がこちらを見詰めてくる。
「だってさ!コウとあたしは彼氏彼女なんでしょ?それなのにあたしはコウでコウは立花なの?おかしくない?」
ズンズンとこちらに詰め寄ってくる立ば…これがダメなのか。
「そ、そうだな。み、美咲?」
恥ずかしいが恐る恐る呼んでみる。ずっと立花だったから余計にな。
「んふふー!よし!許しましょう!さっ帰ろ?」
そう言いつつ手を差し出してくるたちば…美咲に俺も手を重ねる。
「暖かいねコウ」
「そうだな美咲」
二人で手を繋ぎながら皆の待つ家に向かう。
「ああああああああーーーー!!!」
家に近付くと
俺達の前まで来て繋いだ手と俺達の顔を交互に見てから再度
「ああああああああーーーー!!!」
「はるちゃん!近所迷惑だから!静かに!」
流石に五月蝿すぎて美咲も注意してる。くっくっくっ!怒られてしまえ!
「だ、だって!!手!手繋いでる!」
俺達が繋いでる手を指差しながら頻りに指摘してくる春川。そりゃあ付き合ってますからね?
春川の声で家に居たらしい皆も外まで出てきたようだ。
「コウ、美咲おかえり。……上手くいったみたいだね?おめでとう二人とも」
王子は俺達を見てすぐに察したのかお祝いの言葉をくれる。良いものだ。
「ありがとう王子、正直王子のおかげな所も多々ある!これからも俺達は親友だよな!」
「うん、もちろんだよ。まあ僕は絶対上手くいくと思ってたから心配はしてなかったけどね?」
その割にはクジで失敗してましたけどね?
「やーーっとかよコウ!一応俺からもおめでとう!仲良くやれよ?まあ言われなくてもやるだろうけどな」
そう言いつつタクが近くに寄ってくる。そして耳元で
「本当に女の子紹介してください」
こいつ……お前のためなら何回でも美咲に頼んでやるから安心しとけ!!
「それじゃあ私かしら?二人ともおめでとうこれで美咲ちゃんから田中君とどうやってもっと仲良くしたら良いかな?って聞かれなくなると思うと少し寂しいわ」
委員長はサラッと爆弾を投げてきてる。美咲そんな事相談してたの?
「あはは、僕にも良く言ってたよコウはあたしの事あんまり好きじゃないのかもってそんな事無いんじゃない?って言っても、うーんでもでもってずっと言ってたしね」
そこに王子まで追撃してくる。横の美咲は顔を真っ赤にして俺のコートに顔を埋めてる。
「もう!二人とも何で言うの!恥ずかしいじゃん!!」
コートに顔を埋めながらも文句はしっかり言っていくスタイルの美咲。
「いいじゃない?ねぇ逢坂君今まで何回も同じ様な相談をされてちょっぴり面倒臭かったし?美咲ちゃんって見た目と違って意外とネガティブよね」
ここぞとばかりに委員長が言いたい放題です。明らかに饒舌だし本当は嬉しいんだろう。
「まあまあ、早川さん嬉しいのはわかるけどそれくらいにしてあげてよ。美咲の顔が真っ赤だよ」
すかさず王子のフォローが入って委員長も気が付いたのか美咲に顔を向ける。
「ごめんなさいね美咲ちゃん、私嬉しくなると口が悪くなるの。でも本当に良かったと思ってるわおめでとう二人とも」
最後は綺麗にまとめた委員長。しかし嬉しくなると口が悪くなるのは初めて知った。
「うん!ありがとね!」
ニカッと笑ってお礼を言う美咲。この頃仲も急速に良くなったからある程度わかってるんだろう。
そして最後は──
「み、みーちゃん!!」
ガバッと美咲に抱き付く春川。まぁしょうがないか、反応があるのはわかってたし。
「はいはい泣かないで、はるちゃん」
春川の頭をポンポンしながら抱きすくめる美咲。鼻をぐずぐず鳴らしながら抱き付く春川。
「みーちゃん……今幸せ?」
泣いていた顔を上げて美咲に問いかける。
「うん、とっても!」
それにとびきりの笑顔で返す。
「そっか……じゃあ私は大丈夫だから…」
スッと美咲から離れる春川に俺はちょっと意外に思うが、考えてみたら美咲が幸せって言うなら春川は何も言わないか。
美咲から離れて俺にの方を見る春川。え、怖い。
「田中くん!!」
「は、はい」
なんだ?殴られるか?まあ一発位なら…そんな覚悟を決めたが
「みーちゃんをよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて家に戻っていった。呆気に取られる俺を残して。
「はー…コウあれが今の麻衣の精一杯だからさ、大目に見てよ僕はちょっと麻衣を慰めてくるね」
「お、おう?俺は一発位なら殴られてもって思ってたんだか」
「ないない、麻衣が美咲の大事な物を傷付ける訳ないじゃん。じゃあ行ってくるね」
そう言って王子は家に行った。考えてみたらそうかもな、春川が美咲の大事な物を傷付けるなんて事故じゃない限り無さそうだ。
「よーし俺も戻るかぁ」
「私も一緒に戻るわ川島君。ここに居ると何だか冬なのに暑いからね?」
そうやって委員長が俺たちをからかいながら戻っていく。
「もう…嬉しいけどさ」
ちょっぴり不満気な美咲が皆の背中を見詰めてる。
「さて、俺達も戻りますか?そろそろ年も明けそうだ」
時刻は0時に近付きつつある。今年は最高の一年になった!さあ皆で年越しだ!
「「「happy New year!!」」」
年が明けた。あの後春川はズンッと落ち込んでいたが、王子や美咲達の励ましもあり幾分か元気を取り戻した様子だった。
ちなみに俺は近付くなって言われました。今はダメだそうです。時間が経てば落ち着くからと、王子に言われました。
そして皆で年明けをお祝いして、朝方まで近所迷惑にならない程度に騒ぎ、初日の出を拝んでから初詣へ。
初詣は人が多くさっとお参りだけして即退散しました。春川が人に酔いそうになったりとちょっと大変だった。
そして、皆で俺の家に帰ってから爆睡してパリピパーティーは終わりを向かえる。
そして時は経ち──
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