第95話

 春川の言葉を頭で処理できない。俺のせい?何でだよ…?


「ちょっと麻衣!コウのせいじゃ無いでしょ!」


「ううん、みーちゃん勿論田中くんだけのせいじゃないけど、一番の原因は田中くんで間違いないの」


 珍しく春川も立花の意見を真っ向から否定する。


「はいはい、二人とも落ち着いて、とりあえずコウに訳を話さないと」


 王子が仲裁に入ったことで、二人とも押し黙る。俺はただ俺のせいだと言われた理由をひたすら考える。


「コウ、コウはさ、美咲と友達になった時の事覚えてる?」


「あ?あぁ、勿論あんなに印象的な出来事を忘れる訳──」


『まあ無理だけどそんなになりたいかー

 そーだなー友達料金でも貰えば考えてもいいけど』


 友達料金?なんだそれは陽キャの新用語か?


『と、友達料金?』


『そそ、友達やってあげる代わりにお金ちょーだいって事。まあ冗』


『いくら払えば?』





 思い出されるのは立花に冗談とは言え払った友達料金…。



「まさか…友達料金か?」


 王子は、無言で頷く。


「コ、コウ!別にコウが悪いんじゃ無いよ!冗談でもあたしが…」


 立花は俺の顔を見て、慌ててフォローを入れてくれてるが


「春川、ありがとな。何も知らなかった方が嫌だったわ。立花、勿論全部が自分のせいだとは、流石に思わないが、春川の言う通りに、責任は俺が一番重いと思う」


 春川はこちらを見て当然と言わんばかりのどや顔でこちらを見てる。立花は、俺の言葉にシュンと、落ち込んでる様だ。


「それで、何で友達料金の事バレてんの?……流石にタクが言い触らすとは思えんが」


 友達料金の事なんてタクと話した位じゃないか?


「はあ…田中君?貴方達声が大きいのよ」


 委員長が、溜め息混じりに言ってくる。


「え?そんな?」


 俺は普通に話してるつもり何だが…。


「そうよ。何時も何時も二人で見せ付けてくれちゃって…」


 いや、別に見せ付けてはないが…?


「まあ、そう言うことよ。あの時教室に居たなら知ってるんじゃない?」


「しかし…いくらなんでも冗談だって分かるだろ?…それを恐喝なんて…」


 春川や王子を見ると、二人ともうんうんと頷いてる。立花は微妙な顔のままだが。


「そうね、普通は冗談でしょう。でも、さっきも言ったように、告発した人がどう見たかが重要なのよ。それも、悪意のある見方をするならそう見えるんじゃないかしら?」


 悪意のある見方…確かにここまで穿った見方をするなら、悪意があるんだろう、しかし誰だよ?


 キーンコーンカーンコーン


「ヤバい、教室に戻るね」


 予鈴がなって皆慌てて立ち上がる。


「とりあえず、今日の放課後話しましょう」


「わかった。タクも呼んで良いよな?あいつも呼ばれないのは悲しいだろうし、他の生徒の事案外詳しいしな」


「そうね、じゃあ皆で集まりましょう」


 各自思い思いに教室に戻った。





「なんかあったんか?雰囲気怖いぞ?」


「あぁ、後で話すわ」


 タクが開口一番に話し掛けてくる。そんなつもりは無かったんだが、やはり感情が昂ってるようだ。


 授業が淡々と進んでいくが、俺はそれどころじゃない。立花の方を見ると、明らかに落ち込んでるのが分かる。タクには授業の合間に大まかな説明だけはした。その方がスムーズに話に入れるだろうし。


 俺は早く授業が終われと、祈りながら、ただただ自責の念に囚われる。あんな事しなければ、静かに喋ってれば、……今思っても仕方の無い事だか、頭の中でグルグルと廻っている。


「はい、じゃあ今日の授業は終わりです」


 やっと終わった、何時もより数十倍長く感じたが、今からが本番だ。


「タク、とりあえず行くぞ」


「あぁ、春川、委員長…立花も」


 急いで教室を出て、王子の教室の方へ向かう。教室をでると既に王子もこちらに向かってる様で目が合う。お互いになにも言わずに空き教室に向かって歩き出す。


 カチャ


 教室の鍵を一応閉めて話し始める。


「んで、ある程度は聞いたけど、詳細を教えて貰って良いか?」


 タクが話を切り出す。


「そうね、じゃあ最初から──」


 そこから、俺が昼休みに聞いた内容を委員長がタクに話し始める。



「成る程状況はわかった……すまん立花。俺のせいでもあるな」


 タクは友達料金の事がクラスメイトに聞かれてた事を謝ってる。


「ううん、あたしが冗談でもそんな事言ったりしたから…ってのもあるし」


「とりあえず!これからの対策を考えよう。このまま黙ってるなんて事は無いんだろ?」


 皆一様に、暗い雰囲気だったからなのか、少し張り気味の声で喋り始めるタク。


「そうね。対策を考えましょう。このままなんて、おかしいわよ」


「どうせうちの担任の事だから有耶無耶にしたいんだろうが、ここは徹底抗戦だ」


 不安気な表情の立花を励ますかのように、皆で立花を囲む。因みにずっと立花の隣で手を握ってるのは春川だ。


「皆…ありがとう。あたしも負けない!」


「そうだよな立花!それでこそだ!」


 立花も少しは元気が出てきたのか表情がさっきよりもましになってる。


「とりあえず、今日話を詰めて明日担任に話を付けるって感じでいい?」


「そうね、とりあえず私と春川さんと田中君が付き添いで話してくるわ。担任も話が大きくなる事はしたくないようだし」


 我らがブレインの委員長が一緒なら何とかなりそうだ!


「それじゃあ、対策を話し合おうか」


 王子の号令で話し合いが始まる。





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