第106話

「まあ、とりあえずあがって?」


「「おじゃましまーす!!」」


 双子ちゃんは俺をすり抜けて家へ入っていった。


「えっと?なんでそらとうみが?」


「実はさぁ、クリスマスにコウが遊びに来ると思ってたみたいでね、その時会えなかったのが寂しかったらしくて今日コウと王子と買い物に行くって話をママにしてたら聞こえちゃったみたいで、どーしても付いてくるって聞かなくてさぁ」


 なるほどなるほど?理由はわかった。


「それでさ、急なんだけどそらとうみも連れていって良いかな?買い物。二人にはコウと王子が良いって言ったら一緒に連れて行くって言ったんだけど、二人共もう行く気マンマンでさぁ」


 そりゃもう家の中に入って王子と話してるしな?ここまで声が聞こえる。


「まあ、良いんじゃね?王子も仲良しだし、大丈夫だろ」


 双子ちゃんのキャッキャッと笑う声が聞こえてきてる。王子は何度も立花の家に遊びに行ってるみたいだし、王子には懐くよなぁかっこいいし。


「ほんと?よかったー!大丈夫だとは思ってたんだけどね!一応ママがここまで送ってくれたから、もしダメなら二人とも何処かに遊びに連れていってくれるって事になってたんだーママにもう大丈夫だから帰って良いよって言ってくるねー!」


 靴も脱がず玄関に留まってたのはそう言うことか。しばらくすると立花が戻ってきてる途中で車がゆっくり通り過ぎる。


 明らかな高級車にはお義母さんが乗っていて、軽く会釈をされたので、こちらも頭を下げる。


「おっまたせー!中入って良い?」


「おう、どうぞいらっしゃいませ」


「なにそれ!お店みたい」


 クスクス笑う立花。確かにいらっしゃいませ何て友達には言わないのか?ここに来て友達が少ない弊害が出たな!


「おもてなしの気持ちだよ」


 適当に言葉を返す。


「ふーん?じゃあおもてなしされようかな?」


 目を細めながら笑う立花を何でもない様に迎え入れる。本心は見惚れる程可愛くて鼻血が出そうです。




「おかえり、遅かったね?」


「「おかえりー!」」


 すっかり王子とソファーで寛ぐ双子ちゃん。ここまで来ればこっちのものだと言わんばかりに帰る気は更々無さそうだ。


「それでそらくんとうみちゃんが一緒に買い出しに行くって言ってるけどそうなの?」


 もう、双子ちゃんが既成事実を作ろうと王子に話してた様子だ。侮れないな!


「うん、それでさコウは良いって言ってくれたから王子は大丈夫?」


 大丈夫?とは聞いてるが実際大丈夫だよね?に聞こえる。まあ、二人は長い付き合いだし長くない俺でも王子が受け入れるのはわかるが。


「うん、僕は全然問題無いよ。寧ろ二人に久々に会えて嬉しい位だし」


 ニコニコと双子を見詰める王子。本当に子供が好きなんだろう。


「そかそか!じゃあそらー!うみー!二人にありがとうは?」


「「ありがとー!」」


 うんうん、お礼が言えて偉いね。


「こうにーちゃん!きんにくメリーゴーランドして!」


 お?好評だな筋肉メリーゴーランド。


「よしきた!捕まれ!そら、うみ!」


 その声と共に二人が俺の腕にがっちりしがみつく。


「筋肉メリーゴーランドにお乗りの際は決して腕を離さない様にお願いします」


「「はーーい!」」


「筋肉メリーゴーランド!回転!」


 そして俺は周りだす 。 the筋肉



「うおおおおおお!!」


「「キャッキャッキャッ」」


 室内に響き渡る俺の気合いの声と双子ちゃんの愉しげな声、唖然とする王子に爆笑の立花。まさにこの部屋は混沌ケイオスだった。


「筋肉メリーゴーランドしゅーりょー!」


 俺の回転が止まる。双子ちゃん達は大満足の様だ。王子は唖然としたままだけど。


「王子どうした?そんなに驚いて?」


「いやいや、いきなり筋肉メリーゴーランドって言われて親友が叫びながらぐるぐる周り始めたら誰だって驚くでしょ!」


 そうか……?そうか。


「あー確かに王子がいきなりぐるぐる周り始めたら俺も……そうか?」


「そこは止めるか驚いてよ!」


 王子はツッコミまで上手くなったな!


「あーおもろ。やっぱりコウは面白いね」


 立花は余程面白かったのか目に涙を浮かべながらお腹を押さえてる。


「あれだ。子供と遊ぶ時は全力で!が俺の信条だからな!」


 何より本気で遊んだ方が俺も楽しいし。


「こうにーちゃんこんどはかめんらいだーきっくやって!」


 次はそらからのリクエストだけど


「はーい二人共!お買い物に行くんでしょ?」


 立花が一旦区切ってくれる。多分そうしないと俺は永遠に双子ちゃんと遊ぶことになってるだろう。


「そうだった!ねー!おかしかう?あといちごは!?」


「そらくんはかめんらいだーかいたい!」


 そらは仮面ライダーを買う気らしい。スーパーに売ってるかな?


「それじゃあ皆で行こうか?」


 王子の一言でいそいそと準備を始める。


「よーし!それじゃあ行くよー」


 準備と言っても上着を来て買うものリストチェック位だから、すぐ終わるんだか双子ちゃんは買い物へ皆で行けることにワクワクしてる。


「はやくはやく!うみちゃんのいちごがなくなっちゃう!」


「え!そらくんのかめんらいだーもなくなる?」


 いちごはあるだろうけど仮面ライダーは元々売り切れかもしれない。


「はいはい!手繋いで!そらもうみも離しちゃダメだからね」


「うみちゃんはしゅうちゃんと繋ぐ!」


「そらくんはこうにーちゃんと!」


「あらあら二人に取られちゃった」


 そう言いながらもニコニコと二人を見詰める立花。


「二人共良い?特にそらは結構動くから…」


「全然いいよ?コウもでしょ?」


「ん?まったく問題ない。何なら俺の方が動く」


 少し申し訳なさそうだった立花も俺と王子の返事を聞いて


「うん、ありがと!それじゃあお願いします!」


 そして、手を繋いで皆で出発だ。





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