第75話

「うおりゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺は今、両腕に天使をぶらさげながら、グルグル回っている。


「「キャッキャッキャ!」」


 俺の両腕にしがみつきながら、楽しそうに笑ってる双子ちゃん。トルネードも興奮してるのか、俺の周りをグルグル回ってる。


「すごいすごーい!」


「そらくんかめんらいだーになった!」


 そらの言うことはちょっと分からないが、楽しんでくれてるみたいで良かった。子供は笑顔が一番だろ!


「はーい筋肉メリーゴーランドはおしまいでーす」


「えー!もっとー!」


「もうすこしで、かめんらいだーになれたのにぃ!」


「次は別の遊びしよーぜ」


「えーっとぉ…おままごとしよ?」


「そらくんはかめんらいだーごっこ!」


 この数十分で双子ちゃんとは、かなり仲良くなれたと思う。全力で遊んだから、結構疲れたけどな。


「じゃあ、おままごとやってから、仮面ライダーごっこしようぜ」


「そうしよう!じゃああたしがままで、こうおにいちゃんがぱぱね!」


「そらくんはかめんらいだー!」


「じゃあそらくんはペットのかめんらいだーね!」


 仮面ライダーがペットの家ってどんな家なんだ?


「とんとんとん、はぁーごはんつくるのたいへんだわー」


 いきなり始まったよ。


「えっと…ガチャッ、ただいまー帰ったよー」


「ぱぱおかえりなさい。おしごとおつかれさまでした。ごはんもうすぐできるから、おふろはいっちゃって?」


 え、えらい本格的だな。


「あ、あぁじゃあお風呂先に入ろうかなぁ」


 俺がそう言うと、うみは目をつぶってこちらに顔を向けてる。


「???」


 なんだ?動かないけど?そう思って固まってると


「もー!おかえりなさいのちゅーでしょ!いつもしてるでしょ!」


 えぇ…いつもしてるって…もしかして立花の両親か?


「あーそ、そうだったそうだった!はいちゅー」


 一応形だけしておこう。もし本当にしたら事案になりかねない。


「ちがう!ちゃんとして!」


 いやいやうみちゃん…お兄ちゃんには出来ないよ。


「えっとぉ、ちゅーは好きな人としか、しちゃだめなんだよ?」


 これで納得してくれるだろう。


「なんで!うみちゃんは、こうにいちゃんのことすきだよ?こうにいちゃんはうみちゃんすきじゃないの?」


 目をうるうるさせながら抗議される。いやそりゃ可愛いし素直な子供は好きだけどさぁ…そ、そうじゃないんだよなぁ。


「あーっと、にいちゃんもうみちゃんのこと好きだよ?でもその好きは、ちゅーする好きじゃなくて…」


 4歳児にちゅーの説明を必死にする高校2年生男子。字面を見たら完全に事件です。



「にゃーん!!」


 いきなり猫の鳴き声が聞こえたと思ったらそらが変身ポーズらしきものをしながら固まってた。一応仮面ライダーは猫なのか?


「そうだ!ペットのかめんらいだーをおふろにいっしょにいれてね?ぱぱ」


「そうだね!汚れたから一緒にお風呂に入るぞー!仮面ライダー!」


 そうか、仮面ライダーって名前の猫って事なのか。しかし、ピンチに助けてくれるなんて、流石仮面ライダー!


「かめんらいだーも、おふろにはいるまえにへんしんだけしなさいね?」



 変身すんの!?じゃあ猫じゃないじゃん!


「へんしん!がおー!」


 なんか猛獣になりましたけど?


「はーい、へんしんおわったら、おふろいってきなさーい」


 え?俺今からこの猛獣と風呂に入るの?



「よーし、ザバー仮面ライダーお風呂入るぞー」


「はーい、あつい?」


 猫でも猛獣でもなくなったけど、こっちの方がやり易い。


「ちょーど暖かいぞー!」


「じゃあ、じゃーんぷ!ドバァン!ああ!きっくがつよすぎて、おふろがなくなった!」


 あの、爆心地にいた俺は死んでませんか?


「もう!かめんらいだーは、げんきねぇ、ぱぱがびっくりしちゃうでしょ?」


「よーしお風呂から上がるぞー仮面ライダー!」


「はーい!ぱぱ拭いてー」


「よし、タオルでごしごしっと。これで綺麗になったな!」


「ぱぱありがとう、ごはんできてるからいっぱいたべてね?」


「わー楽しみだなぁ今日のご飯はなんだい?」


「えーっとぉ…きょうのごはんは…たまごと、いちごとチョコレートだよ!たくさんたべてね!」


 えっと、ママは何を料理してたんでしょうか?


「うーん!美味しそう!いただきまーす。モグモグ、ママの料理は、いつも美味しいなぁ」


「かめんらいだーってごはんたべるのかな?」


「食べるんじゃない?」


 もう、俺には仮面ライダーの定義がわからん。


「そっか!じゃあぼくもたべよーモグモグ!おいしいね!」


「よかったわーがんばってつくったから、のこさずたべてね?」


 それからモグモグタイムがしばらくあって、やっと完食した。


「ふーお腹いっぱいだよー後は明日のために寝ようかな?」


「そうね!かめんらいだーには、ねてもらってふたりでえいがをみましょう。ほら、かめんらいだー、おねんねのじかんですよ?」


「はーい、ぐーぐー」


「あなた、かめんらいだーもねたみたいだから、なんのえいがみますか?」


 あー、立花の両親は映画見るのが習慣なのかな?


「そうだなぁ。このお姫様の映画にしようか?」


「そうね、はい、あなた」


 そう言って手を差し出してくる。何だろう?と思っていると


「いつもえいがをみるときは、てをつなぐでしょ?はい」


 もう一度差し出される手を握り返す。何だか立花の両親の生活が見えて若干だか恥ずかしい。


「それじゃあみましょうね?」


 そうして、本当に映画を観始める。まあ、映画と言っても数分の奴だからすぐ終わるけど。



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