第104話

「そうは言ってもなぁ…」


 皆で事件?解決のお祝いをやった後一人自室で物思いに耽る。今回の騒動で俺は勘違いで先走りやすいってのがわかった。薄々は感じてたけどね?


 まず、立花が春川をイジメてるんじゃ無いかって時も、まああれは仕方無いが勘違いだった。


 次はなんだぁ…王子か?王子が立花の事を好きで、立花も王子が好きなんだろうって思ってたが、今思えば凄い勘違いだったな。


 そして今回の静原さん黒幕説。高校一年生が担任と先輩を操って立花を陥れてると言う妄想だ。まあ、騒動に関わってたのは事実だから完全に勘違いじゃないが、それでも斜め上に推理が飛んでいったしな。


 待てよ?そうなると立花が俺を好いてくれてるって言うのも…?あれれー?不安じゃない?これまでの実績から、田中さん家の浩一君は勘違いヤローの可能性が高くないですか?


「コウちゃーーんご飯よーー!」


「はーーーい!今行く」


 さて、ご飯が出来た様ようだ。今日も感謝していただこう。





 あの騒動から数日。くそ教師は学校に来ては居ない。そりゃそうか。多分このまま自主退職とかになるのかな?ちなみに立花の両親や森中の両親も学校に呼ばれた様で、森中の親は自分達の息子がやった事を最初は信じられなかったそうだ。


 しかし、くそ教師の証言や立花の話に、静原さんの話が加わると、完全に息子がやった事だと認識したらしい。


 そこからは森中のお父さんは息子をぶん殴り、立花や立花の両親に土下座したとの事。元々森中の両親は警察官で森中の正義感の強さは両親から来るものだったんだろう。


 立花の両親も大事にはしたくないし、今回は未遂で終わったから、これ以上は咎めないって事になった。学校側も教師の部費着服に生徒の将来を台無しにしかけるなんて外にバレたら…今の時代SNSで拡散でもしようものなら…。


 そうなると他の生徒にまで類が及ぶ可能性があると、この件はこれで終了だそうだ。俺はまあ本人達が良いならそれで良いが。


 それから静原さんが立花に謝罪に来た。静原さん自体にお咎めは無かったらしいが、本人がどうしても謝りたいと場を設けて貰ったらしい。


 謝罪自体は二人っきりだったから、内容までは聞けなかったか、一応俺も当事者?ではあるから、立花に謝った方が良いのか?でも何て言うんだよ…?


 静原さんが俺を好きで俺が立花を好きだから陥れる為に協力してたみたいです!ごめんなさい?これはもう告白なんじゃないのか?


 悶々としながら立花を待っていると


「ただいまーコウ、色々やってくれてありがとうね」


 立花に声を掛けられる。教室の外を見ると静原さんがコクリと頭を下げる。


「別に俺は話しただけで何もしてないんだが…」


 素直にそう言うと


「そんな事ないよー静原さんが怪しいって気が付いて話に行ってくれたんでしょ?静原さんも色々事情があったみたいだし…本当にありがとね!」


 立花はうんうん首を動かしながら一人納得してるみたいだが、これは…上手く静原さんが簿かして話してくれたって事か?


 先程まで静原さんが居た方を見るが、既に姿は無かった。心の中で静原さんに感謝する。ありがとう静原さん。



 因みに森中は幾分か大人しくなったが、基本はあんまり変わってなさそうだ。まあ、イジメられたり無視されたりはしてないし、元々友達少なかったからダメージは少ないのかな?


 しかし、端から見るとあんまり人とも話さずに一人で佇んでる姿は暗い青春を感じさせる。あれ?去年迄の俺とそう変わらなくないか?……この話題を深く掘るのは止めておこう。自爆しかねない。





 それからは、期末試験に向けて皆勉強モードに入っていく。俺達は来年受験だし、勉強にも力が入るってもんだ。


 今年は王子を初め、秀才組が味方に付いてるから、何時もより余裕がある位だ。王子や立花様々です!


 しかし、勉強とは違い俺の目標は遠退くばかりだ。皆が勉強に集中してるのに、一人だけ立花への告白で頭が一杯です。なんて事がバレたらクラスの男子(モテない)に吊るされる!


 でもやっぱり一緒に居ると気持ちが溢れ出てくる。この感情はジムで涼さんにぶつけなければ!!






「はぁ……はぁ……やった……」


「お?久々に一本取られたか?」


 ジムに向かうと運良く涼さんも居て丁度練習相手を探してたから、元気良く立候補してみた。


 何時もは嫌々やらされてるから、自分から来るとは思わずに涼さんから


「どうした?美咲ちゃんにフラレたか?」


 なんて縁起の悪い事まで言われる始末。今日はギャフンと言わせてやると意気込んだ結果……


「お、おま……本気出しすぎだろ……」


 二人共大の字で寝ながらの会話だが涼さんも俺のやる気に驚いてるみたいだ。


「涼っ…さんがっ……縁起のでもっ……無いこと……言うから……はぁ」


 多分普段以上の力が出てたとは思う。これが愛のパワーか?


「なんだよっ……本当にフラレたかっ……のか?」


「ち、違います!!まだフラレてません!!」


 俺は飛び上がり否定する。息も整ってきたし。


「はぁー……でもよ、コウ?マジな話し早くしないとヤバいぞ?あんな良い子他の男達が放っておかないだろ?」


 ぐっ!それはわかってるんだよ!


「わ、わかってますよ!俺にだって計画ってものが……」


 しどろもどろになりながら反論を返す。そうすると涼さんがニヤニヤしながら近付いてくる。


「ほほー?何だよ計画って?この頼れるお兄さんに言ってみなさい?」


 もう、顔がダメです。言ったら最後、絶対に茶化される。


「何が頼れるお兄さんですか!同じ人に何度もフラレてるくせに!!」


 俺は渾身のストレートを放つ。


「はあ!?お前!言っちゃあならねえ事を言ったな!?」


 涼さんが、すっと立ち上がって襲いかかってくる。それを寸前で交わして何とか逃げる。


「なんですか!本当の事でしょう!チャンピオンのくせにフラレてるー!モテないんだー!!」



「てっめえ!!待ちやがれ!俺はモテる!!一昨日だって恭子ちゃんとご飯を食べに行ったし!モテるぞぉぉぉぉ!!」


 何を口走ってるんだこの人は。お互い笑いながら追いかけあってると


「っうっるせえええ!てめえら!練習は静かにやれ!」


 会長のカミナリが落ちる。ピタリと止まる二人。


「コウ!お前のせいでっ」


「な!何でですか!涼さんが追い掛けて来たんでしょ!」


「あれはお前が俺がモテないとか適当な事言うからだろ!」


 お互いに小声で話してたが段々ヒートアップしてきて声がまた大きくなり始めた所で


「あ゛あ゛!?お前ら聞こえなかったのか?今から走るか?朝まで」


「「すみませんでした」」


 会長はやる。本当に朝まで体力と気力を見極めながらギリギリ朝まで走らせる…。


「それとコウ、さっきのスパー良かったぞ」


「え!?本当ですか!?」


 今でも会長に褒められるのは嬉しい。


「おう、ああ言うがむしゃらな所がお前の良いところだ。だから……なんだ、お前のそう言うと所を見てくれてる人はいるはずだ。だから自信持っていけ」


「か、会長……!!」


 これは会長なりのエールだろう。不器用ながら、温かい言葉を掛けてくれる会長に感動してると


「え?会長盗み聞きですか!?あ!恥ずかしがってる!顔が赤いぞ!お前達!来てみろよ!」


 本当にこの人はろくなことしねーな。


「おう鎌田。お前は朝まで走りたいみたいだな」


「え?いやいや、冗談ですから!え?まじで?目がマジなんですけど!?おいコウ!助けろ!あ!やめて!ごめんなさい!!」


 うーん……日本の格闘技界の未来は明るいのか……?


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