第17話

 家に帰る途中に後ろから声が聞こえてきた。


「おーい!まってー止まってー!」


 何か後ろで叫んでる人がいる。

 しかし、この声何処かで…


 その時後ろから背中に衝撃がきた。


 ドンッ!!


「うお!なんだ!?」


 思わず驚きの声をあげる俺。


「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」


「あぁ驚いただけで大したことは…」


 謝ってきた声の方へ目線を向けると。


「あれ?春川さん?」


 そこにいたのは春川だった。


「た、田中くん!ごめんね急に走り出すから

 リードから手が離れちゃって」


 下を見ると円らな瞳でこちらを見つめている毛むくじゃらの生物…ワンコがいた。

 今にも遊んでほしそうな顔でこちらを見てくる。


 かわいい。


「もう!トルネード!駄目でしょ!いきなり走って行ったら!」


 ん?トルネード?


「あの春川さんこの子って春川さん家の犬?」


「え!?いやぁ…まぁ…」


「もしかして立花の所のトルネード?」


「え?田中くん知ってるの!?」


 春川は、驚いた様にこっちを見ている。


「えっと、何で春川さんがトルネードの散歩を?」


 聞いた後にしまったと思った。

 素直に答えられる訳ないだろ…


「それは…色々事情があって…」


 ほら、そりゃそうだろ俺…

 散歩押し付けられてる何て言えないだろ…


「あーいや、ごめん何でもないや。この子が

 トルネードかぁ触っても良い?」


 さっと話題を変える。

 深く聞いても良い事にはならなそうだ。


「え?うん、大丈夫だけどトルネードは人見知りで…」


「よしよし!トルネード!」


 遊んで欲しそうだったので大胆に触ったが

 トルネードは大興奮で、じゃれついてくる。

 人見知りとは一体…


「あれ?トルネードが初めての人にこんなに懐いてるなんて…?」


 春川は一人で喋りながら頭に?を浮かべてた。

 しかしトルネード…毛並み良いな。

 相当可愛がられてるみたいだ。


 興奮したのかトルネードが顔を舐めようと襲ってくる。


「わっぷ!やめてくれトルネード!」


 手でトルネードを制すと少し寂しそうに、こっちを見てる。


「田中くんトルネードから好かれてるんだね」


「自慢じゃ無いが動物と子供には好かれる事が多いな」


 何故か動物と子供には人気があった。

 同級生の友達は全然出来なかったが…


「そうなんだ。トルネードも遊んで貰えて良かったね」


 トルネードさんはまだまだ遊びたそうです。

 しっぽぶんぶん振ってます。


「じゃあ俺は帰るよ。春川さんまた明日学校で。トルネードもまたな!」


「うん、また明日…」


「ワン!」


 春川とトルネードに見送られながら家へ歩きだす。

 学校外でもこれか…

 春川は大丈夫だろうか。


 毎日犬の散歩してるなんて言ってたが、春川にやらせてんじゃねーか。

 やっぱり何とかしないと。


 気持ちは焦るが、なにも出来ない現状に苛立ちながら家に急ぐ。

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