第53話

「海だああああああああ!!」


 タクが海が見えた瞬間走り出して海に向かって叫び始めた。海に居る人達は皆タクに釘付けだ。…ちょっと距離取ろうかな?


 そう思ってると


「くっ!負けてられない!」


 立花もダッシュし始めた。や、止めてくれ!


「うーみーだああああああああっ!!」


 立花も負けじと絶叫してる。


 ふと海の方を見ると浜辺に居る人達の期待する様な眼差し、タクと立花のキラキラした眼差し、後ろを見ると王子の微笑み、委員長の私に関わらないでと反らされる目線…。


 え?そう言う流れ?いやいや…行かないよ?そうしてると立花が少し悲しそうに、こっちを見てくる。心なしか浜辺の人達からも視線が冷たい気が…ええい!ままよ!


 走り出す俺を見て王子は笑顔に委員長は呆れたような顔をしてる。でもさぁ!好きな子が悲しそうな顔してたら、行かなきゃならんだろ!


 海が見える位置まで来た。


 すぅぅぅーー……


「うみだあああああああああっっ!!」


「「「うおおおおおおお!!」」」


 浜辺の人達もスタンディングオベーションだ。何だこれ??




「「イェーイ!」」


 タクと立花がハイタッチを求めてくる。俺は浜辺の人達に晒されて羞恥に身悶えてます。


「……イェーイ」


 でも立花とは触れ合いたいからハイタッチはするけど。


「あはは、三人共元気だねぇ僕には真似できないよ」


「まったく、恥ずかしいじゃない?良く叫べるわね?こんなに人が居るところで」


 王子は楽しそうに、委員長は呆れた様子で近付いてくる。あれ?春川は?


 ……すぐ近くで海だーって小声で叫んで身悶えてる。ぶれないな春川、見なかった事にしよう。



「それじゃあ、場所決まったら着替えに行こう!」


 ぶらぶらと浜辺を歩きながら空いてる場所を探す。しっかしさっきから男女問わず視線が激しいな。さっき叫んだのもあるだろうが、王子と立花への視線が大部分ぽいな。


「うっわ…あそこのカップルえぐい」


「はーレベル高っ、絶対モデルとかだよ。撮影でもあんのかな?」


 ちょくちょく会話も聞こえてくるが王子と立花だけでモブの俺達は見えてないらしい。


「よし!ここにしよ!盗まれなさそうな物だけ置いて着替えにいこー!」


 いこー!って言いながら自分だけ走ってますが?立花さん。


「待ってみーちゃん!」


 おーおー春川も走って追いかけてる。


「まったく…じゃあ三人共また後で」


「うん、早川さん二人の事頼むね」


 やっぱり王子は二人の保護者だな。


「よし!俺達も行こうぜ!」





「三人共まだかよー」


「まあ、女の子は準備が色々とあるしね?…それより、コウはすっごい身体してるねぇ」


 そう言いながらジーっと見詰めてくる王子。一応鍛えてるから、まぁそれなりの身体にはなってるかな?


「あーそっか王子とかは別のクラスだから知らねーのか。うちのクラスの男子の中でコウがムキムキなのは当たり前だったから気が付かなかったわ」


 確かに、男子で着替える時なんかはすげーすげーって周りが言ってた気がする。俺にしてみればジムで他の人の身体見てるからあんまし感じなかったけどな。



 そんな話をしてると……



「おーい!お待たせー!」


 この声は立花達だな、声のする方へ振り返る。

 うおおおお!ビキニです!ありがとうございます!走って近付いてくる立花が急に止まる。どうしたんだ?


「お待たせ三人共……田中君凄い身体ね?」


 委員長は競泳水着みたいな感じか。似合ってるな。


「そうか?それは誉められてるのか?てか委員長似合ってるな水着」


「えぇ誉めてるわよ。それにありがとう、嬉しいわ」


 うーんクールだな委員長。俺とタクの事を語ってた人物と同一人物だとは思えない。


 春川は…なんかヒラヒラが付いてる水着かな?俺には種類など分からないけどこっちも似合ってるな。


 そう言えばさっきから立花が固まってるけどどうしたんだ?



「おい、立花?どうしたんだよ」


 一歩近付くと、一歩下がられる。あれ?俺なんかした?


「え?なんで逃げるんだよ?」


「ちょちょーっと待って!!何その身体!!」


 そう言いながらこちらを見ないように顔を隠してる。指の間からばっちり見てるけどな。顔真っ赤だけど大丈夫?


「何って……何か変か?」


 自分自身を見てみるが別に変わったところは無いよな?あ、顔はもう変わらないので、すみません。


「変って……もう刃◯じゃん!オーガの血受け継いでるじゃん!!」


 立花って◯牙知ってるんだな。意外な共通点でちょっと嬉しい。


「えっと…駄目か?駄目なら上着羽織ってくるけど…」


 立花には筋肉は不評なのか?はぁ、また1つ立花との仲が離れていく…。


「んーなわけ無いじゃん!!てか上着羽織るなんて許さないから!一生その格好で居てよ!!」


 何かちょっと怒ってるけど別に嫌だって訳じゃ無いのか??一生この格好は無理だけど。


「美咲は筋肉大好きだしね?格闘技見てるのも筋肉見たいからもあるって言ってたし」


「しゅうちゃん!ちょっと!恥ずかしいじゃん止めてよ、ばらすの!」


 おー!筋肉好きで格闘技好きなら少なくとも嫌われはしないな!安心した。……そうだチケットの事聞いてみるか。


「あーそう言えば今度さ、うちのジムの選手のセコンドの手伝いやることになって、良かったら皆も見に来ないかなーなんて。会長が席用意してくれるらしいからさ?」


「へーコウがセコンドの手伝い?いつかなぁ興味あるから行ってみたいけど…」


「俺は予定無いだろうから行くわ!ちゃんと見たこと無いんだよなぁ格闘技」


 王子は乗り気だな。タクはまぁ来るだろうとは思ってた。


「へ、へー試合のセコンドの手伝いかぁ。あたしも日程会えば行きたいけどなぁ…」


「あーっと……8月中旬の日曜日だったかな?」


 確かそうだったはず…


「あーおっきい大会も別にあるよねーパパと行きたかったんだけどチケット取れなくて…試合は録画で良いからコウの方の試合見に行こうかな」


 ふぅー、立花は来てくれるみたいだ!てかさいたまスーパーアリーナ以外でもデカイ試合あんのかぁ。


「で、コウ。何処であんの?」


「あぁ、さいたまスーパーアリーナでやる予定だけど」


「「はああああああああああ!?」」







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