第147話 守護者討伐の衝撃
建物の中にあるとより一層大きく感じられるゴーレムの足に、ギルド内にいる誰もが呆然と口を開いて固まった。
「これ、ゴーレムの部品です。あともう片方の足と両腕、それから胴体と頭もあります。どこに出せば良いでしょうか?」
「ちょっ、待っ、待ってください!! ゴーレムを討伐したって……本当なんでしょうか?」
「もちろんですよ」
俺がすぐに頷いたのを見て、ゴーレムと俺たちを何度も交互に見つめたティトーさんは、しばらくして大きく頭を下げた。
「大変申し訳ございません……! 討伐の事実を疑うような言動をしてしまいました!」
「いえ、構いませんよ。俺たちはCランクですし、この街でなんの実績もないので、すぐに信じてもらえないのは仕方がありません」
「いえ、それでもこちらの落ち度です。不快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。……それにしても、本当に守護者を討伐されたのですね」
ティトーさんはもう一度しっかりと謝罪を述べてから、ゴーレムに視線を戻した。
「はい。少しだけ苦戦しましたが」
「少しだけ……」
「お、おい、これゴーレムだよな!? 守護者を倒したって本当か!?」
「あいつを倒せたのか!」
俺とティトーさんが話をしていると、周囲にいた冒険者の一部が興奮の面持ちでこちらに詰め寄ってきた。それほどに守護者の討伐とは大きな出来事なんだろう。
「ちょっと苦戦したけど倒せたぜ!」
ウィリーが握り拳を掲げてそう宣言すると、よりギルド内のざわめきが大きくなる。
「どうやって倒したのか教えてくれ!」
「弱点があるのか!?」
「武器は何を使ってる? それとも魔法か?」
「何人で挑んだんだ?」
そんな質問が次から次へと投げかけられ、俺たちは一気に大勢の冒険者に囲まれた。
ここまでの騒ぎになるなんて……予想以上に守護者討伐のインパクトは強かったみたいだ。
「静かに! お前たち、ちょっと下がれ。――光の桜華の皆さん、倉庫で話をするのでも構いませんか? ゴーレムの全容も見せていただきたいので」
ティトーさんは集まってきていた冒険者を一喝して下がらせると、俺たちに対してはにこやかな笑みを浮かべた。武闘派じゃない人だと思ったけど、さっきの迫力からして細身なだけでかなり強い人なのかも……。
「もちろんです。よろしくお願いします」
「ではこちらへどうぞ」
それから俺たちはティトーさんと共に倉庫へと移動して、そこにゴーレムの素材を全て取り出した。とは言ってもゴーレムは解体という解体はなく、腕や脚などに分かれているだけだ。
「確かにゴーレム、それも守護者として五層に君臨していたものに違いないですね……どのように倒されたのですか?」
「足と胴体の繋ぎ目に集中攻撃を仕掛けて、そこに入ったヒビから胴体を割って、出てきた核となる球を壊しました」
「繋ぎ目を壊せたのですね」
「はい。かなり硬かったですが、ウィリーが馬鹿力なのでなんとか」
苦笑しつつウィリーを示すと、ウィリーは斧を軽く掲げた。しかしこの斧は、俺たちには持ち上げられないほどに重いものだ。これをティトーさんに持ってもらえば理解してもらえるかな。
「ウィリー、斧を少し借りても良い?」
「もちろん良いぞ。でも持てるか?」
「そこに置いて欲しいんだ。ティトーさん、この斧を持ち上げてみてください」
「……分かりました」
不思議そうな表情で倉庫の床に置かれた斧に手をかけたティトーさんは、持ち上げようとして――斧が動かないことに顔を強張らせた。
「…………はっ!」
今度は思いっきり力を入れたようで、なんとか斧が持ち上がる。しかし相当辛いのか、顔は歪んで腕には血管が浮かび上がっている様子だ。
「な、なんですか、これ」
「重いですよね。ダンジョン産の特殊な金属で作られていて、ウィリーはこれを軽々振り回せるんです。なのでその力でゴーレムに対処できました」
その説明を聞いたティトーさんは、俺たちがゴーレムを討伐できた理由を完全に理解してくれたようで、斧を床に置いてから大きく頷いた。
「光の桜華の皆様はとてもお強いのですね。守護者であるゴーレムの討伐、誠におめでとうございます」
「ありがとうございます」
「もしよろしければ、ゴーレムについて情報提供をお願いできますでしょうか? また六層に行かれたのでしたら、そちらについても教えていただけたら幸いです」
「もちろんお伝えします。ただその代わり、守護者の復活に関する検証の手伝いをお願いしても良いでしょうか。私たちだけでやるには少し大変そうなので」
その言葉を伝えると、ティトーさんは瞳を輝かせて食い気味に頷いてくれた。
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