第3話 自分の浮島
浮島の真上まで飛んでいくと、遠くからでは何も見えなかったけど、浮島のちょうど真ん中に何かがあるのが見えた。真四角の台のようなものだろうか? とりあえずあの場所に向かってみよう。
そう思って浮島の真ん中に降り立つと、そこにあったのは一辺が一メートルほどの四角柱だった。高さは俺の腰ほどだ。材質は大理石のようにツルッとしていて、触ってみるとひんやりと冷たい。色は真っ白で、持ち上げようとしても押して動かそうとしてもビクともしない。
そんな台の上に一冊の本が置いてある。この本が細かい説明が書いてある本かな。そう思って本に触れたその瞬間、本が一瞬だけ光り輝き完全に消えた。そして本が消えると同時に俺の頭の中に様々な情報が流れ込んできた。
うわっ……凄いな。頭が痛くなったりはしないけど、情報の量が凄くて他のことを考えられない。自分の頭が自分で制御できない感じだ。
――そんな気持ちの悪い状況を堪えること数十分。やっと情報の波が止まり、頭がスッキリした。
さて、情報ってどうやって引き出せば良いんだろう? 俺の頭に情報はインプットされたけど、辞書のように引かないとわからないような感じだ。まずは神の初心者が何をやるべきなのか知りたいんだけど……
そう思った瞬間、頭の中にゲームのウインドウのような感じで情報が表示された。
凄い、これめちゃくちゃ便利。でも目の前にテレビみたいな感じで出る方がもっと便利だな。それからどうせなら、タブレットみたいに手でパネル操作できるともっと便利かも。
俺がそう考えたら、次の瞬間には目の前にウインドウが現れた。指で触ってみるとパネル操作もできる。
……神って万能すぎる。
ウインドウには『神界のルール』という項目があり、他にはまだ何もない。恐る恐るその項目を指で押してみると、ずらっと目次が表示された。
おおっ、本当にタブレットみたいだ。神界のルールっていうのがさっきの本の名前で、今出てきた目次がさっきの本の目次なのだろう。俺は目次の一番上の項目『神がまずやるべきこと』を押してみた。
するとウインドウに文章が表示される。とりあえず最後まで真剣に読んでみた結果、やるべきことは大きく分けて五つだということがわかった。
まずは神台に神石を登録する。そして神力を数値化できるようにする。この二つが最優先だ。
知識によると、まずは神台に神力を流し込むらしい。
俺は両手で神台に触れ、先ほど神石に神力を流したのを思い出しつつ神力を流してみた。おおっ、簡単に出来た。
それからしばらく神力を流していると、神台が強く光り神力を流せなくなる。多分これでいいのだろう。
ええと、次は神石を神台に触れ合わさせるみたいだ。俺はポケットに入れていた神石を手に持ち、恐る恐る神石を神台に触れ合わさせた。
「うわぁ!」
……びっくりした。触れ合わせた瞬間、神台と神石が同時に強く光り輝いたのだ。でも光ったのは一瞬ですぐ元に戻った。知識によるとこれで登録完了らしい。
なんか、意外と呆気なかったな。神石は絶対に無くさないようにと本にも書いてあるから保管方法を考えないと。
そういえば、さっき世界の根源が神力を使えばイメージでなんでもできるって言ってたよね。それならアニメで良くあるアイテムボックスってできるのかな?
時間停止で容量無限のアイテムボックス。空間に入口を作り出せて、そこから自由に出し入れが可能。
そうしてイメージしていると、目の前にブラックホールのようなものが現れた。もしかして……これがアイテムボックス?
そう考えて恐る恐る手を入れてみると、その中に手を入れた瞬間、頭の中にリストが表示された。
……本当にアイテムボックスだ。思い描いた通りだ。
神ってマジでチートだな。
ちゃんと使えるか試してみよう。そう思ったけど、流石に最初から神石を入れるのは怖い。何かないかな……そう思って当たりを見回すけど、ここには神台と神石、硬い地面と俺しかいない。
着ているパジャマを入れてもいいけど、もし取り出せなくなったら半裸で過ごさないといけなくなるし……それは避けたい。
……そうだ! 何かを神力で作り出せばいいんじゃないか?
確か世界の根源が物を作ることもできるって言ってたはず。それなら何か食べ物を作ろう。
あっ、でもこの身体って何かを食べても良いのだろうか? そう疑問に思って『神の身体の作り』を開いてみた。
それによると、神は食事をすることはできる。しかし食べた物は神力に変換されることから、お腹がいっぱいになることはないらしい。またトイレに行く必要もない。
食事は必要不可欠な物ではなく、ずっと食事をしなくても何の問題もないようだ。これはかなり便利だ。いくらでも食べることができて、体調を崩すことも太ることもない。最高すぎる。
早速何かを作り出そうかな。そう思って俺がイメージしたのは……、炊き立て熱々の白米で作った塩おにぎりだ。
結局こういうのが一番美味しいんだ。後はきゅうりの漬物と豆腐とわかめの味噌汁、それに箸と緑茶。
うん、完璧だ。アイテムボックスの検証のために作り出したけど、とりあえずこれは食べよう。そして同じ物をいくつか作り出してそっちをアイテムボックスに入れてみよう。
そうして俺は、先程のおにぎりセットを三つほど作り出してアイテムボックスに入れた。これでしばらく経って取り出して、入れた時と同じく熱々ならばアイテムボックスは大成功だろう。
とりあえずその待ち時間で、いただきまーす!
俺は海苔が巻かれた塩おにぎりに、大口でバクっと齧り付いた。う、う、美味い!! やっぱりこういうのが一番美味いんだよ。マジで美味しい。
そうして塩おにぎりを食べながら、きゅうりの漬物をポリポリ食べる。うん、幸せ。そしてたまに味噌汁をずずっと啜る。ここは天国かな。あっ、神界だった。
そうして俺はとても美味しい食事を堪能した。途中でアイテムボックスから、おにぎりセットをお代わりしながら堪能した。本当に美味しかった……
途中でお代わりとして取り出したおにぎりも最初のものと全く変わらなかったので、アイテムボックスは成功で良いと思う。俺はそう結論づけて、神石をアイテムボックスに仕舞った。
よしっ次だ。次は神力を数値化するんだったな。これもイメージでできるらしいんだけど、できればウインドウに表示できたら嬉しい。
そう思ってウインドウに残りの神力が表示されるようなイメージを固めていくと、ウインドウに変化があり残りの神力がわかるようになった。
それによると満タンの神力は十億のようで、今まで使ったので千ほど減っている。これは……、相当使わないとなくなることはないだろう。多分世界を作るのに神力をかなり使うんだな。それ以外で気にする必要はなさそうだ。
自然回復はどれほどなんだろうか。そう思ってウインドウで調べてみると、基本的に一日一万ほど回復するらしかった。
よしっ、次だ。どんどんいくぞ。後のまずやるべきこと三つは、浮島を充実させる、眷属を作る、世界を作る、この三つだ。
世界を作るのは後回しにするとして、とりあえずは浮島からかな。この浮島には椅子一つないから休める場所もない。この身体は疲れないから休む必要はないんだけど、そこは人間の時の記憶があるから休みたい気がしてくる。とりあえず最低限は整えたい。
神台がある場所を大きなリビングルームにして、その他に寝室があれば良いかな。お風呂もトイレも必要ないし、食べ物を作り出せるから台所も必要ない。
とりあえず、めちゃくちゃ座り心地の良いソファーと机だけあれば良いや。そう思って浮島を改造していく。
本当に俺が頭の中でイメージをして神力を使うと何でもできる。この力が便利すぎて使えなくなったら生きていけなくなりそう。これからはずっと神だからそれでいいんだけど。
そんなことを考えているうちに、とりあえず部屋は出来上がった。また後で暇な時にでも充実させれば良いだろう。
とりあえず次、ついに眷属だ!! 早くこれをやってみたかったんだ。
本によると、眷属とは俺の一部のようなものらしい。個別の意思は持つけれど、主人に逆らうことは絶対にない存在だと書いてあった。この浮島に俺一人は寂しいし、可愛くて話し相手になってくれそうな子を作り出そう!
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