第4話 眷属
眷属の作り方は、自分の身体の一部を使って作り出すらしい。俺の場合は一本髪の毛を取って、それに神力を送り込みつつ、どんな眷属にするのかイメージすれば良いそうだ。
眷属は何体でも作り出せるけど、維持するのにも神力がかかるので作りすぎると危険らしい。もし全ての神力がなくなったら、眷属は消滅するそうだ。折角作り出して仲良くなった子が消えちゃったらショックすぎる……とりあえず一体だけにしておこう。
俺は作った家から早速外に出る。大きい子を作り出すのなら家の中は狭いかもしれないからな。
さて、どんな子にしようか。まずは人型か動物型かを決めないといけない。やっぱり人の方が話し相手にもなってもらえるし、寂しさを紛らわせられるだろうか?
でも俺って犬を飼うのに憧れてたんだ。それもゴールデンレトリバーのような大型犬! ふわふわの毛にぎゅって抱きつきたい……
話せる相手か、大きなもふもふか。
人生で最大に悩む二択だ。そうしてしばらく悩んでいると、ふと思いつくことがあった。
別に犬が話せないって決まってる訳じゃないよな? 俺は神だし、話せる犬も作り出せるんじゃないか?
そう思いついたらそっちを試してみたくて仕方がない。うん、今回は犬にしよう!
そう決めて髪の毛を一本だけプチっと抜き、それに神力を込めつつ犬をイメージした。どうせなら日本の常識に囚われない、大胆なイメージにしようかな。
体は凄く大きくて、俺の身長より大きいぐらい。そして体はもふもふでふわふわの毛に覆われている。その毛は真っ白がいいな。更に身体の大きさをある程度自由に変えられると嬉しい。たまには小さくなった姿をぎゅってしたい。顔は精悍な感じだけど、凄く人懐っこくって甘えたがりな可愛い性格。それから、ある程度は力も持っていてほしい。この世界に敵がいるのかわからないけど、もしいたとしたら自分の身を守れるぐらいは。あとは、俺と意思の疎通ができてほしい。人の言葉を話せるように。
そんなことを考えて神力を注ぎ込んでいくと、一瞬ピカッと強く光り輝き、その光が収まった時には目の前にさっきまでイメージしていたままの犬が姿を現していた。
いや、大きすぎて犬って言っていいのかわからないけど……
……でも、すっごく可愛い! キラキラの光り輝く瞳で俺を見つめていて、さらに大きな尻尾がぶんぶん振られている。
「ご主人様! 僕をお作りいただきありがとうございます! お役に立てるよう、精一杯頑張ります!」
その犬は少し高めの声で元気にそう言った。やばい、すっごく可愛い。
「こちらこそこれからよろしく。俺は神城東吾って言うんだ。君の名前は……」
何にしようかな。考えてなかった。
うーん、白いからシロ、ユキ、スノー、ホワイト……なんとなくしっくりこない。外見的にもっと可愛い名前がいいかな。おもち、おこめ、シュガーとか?
そうだ、ミルクはどうかな? いや、もう少し短縮してミルクのミルとかいいかも!
ミルって可愛いし呼びやすいし良い気がする。あっ、でもこの子って男の子なのかな? 僕って言ってたよな。
「名前を決める前に一つ聞いても良い? 性別はどうなってるの?」
「僕に性別はないです。眷属には性別はないものなのです」
「そうなんだ。じゃあどんな名前でも良い?」
「はい! ご主人様に頂ける名であればなんでも嬉しいです!」
「それなら君の名前はミルにする。ミル、これからよろしく」
俺がそう言ってミルに近づき首の下を少しだけ撫でてあげると、ミルは途端に破顔した。犬なのに笑った顔がわかるのだ。
そして破顔したあとはぶつぶつと呟き始めた。
「僕の名前はミル。ミル……ミル……」
ミルはそう言って名前を何度か繰り返し呟いてから、さっきまでよりも更に嬉しそうな顔になって頷いた。
「ありがとうございます! とても素敵な名です! 僕はミルです。今日からミルなのです」
ミルはそう言って俺に近づき、俺の顔をぺろぺろと舐め始めた。うわぁ……嬉しいけど、嬉しいけどびちゃびちゃになるよ! ミルはあれだね、結構やんちゃな性格だ。俺は大好きだけどさ。
「ミルありがとう。一回やめてくれる?」
「はい!」
俺がそう言うと、ミルは直ぐに止めて俺の前にお座りをした。おおっ、ちゃんと言うことは聞いてくれるんだな。そこはさすが眷属だ。
「まず確認なんだけど、ミルは俺のことをどこまで知ってるのかな?」
「はい、ご主人様が今まで経験してきたことは全てわかっています」
「日本でのことも? 神界に来てからのことも?」
「はい!」
確かに眷属は俺の一部のようなものって書いてあったし、記憶を共有してるのは普通なのか?
まあ、それはそれで便利でいいか。というか待って、それなら俺が今考えてることとかもわかっちゃうの?
「俺が今考えていることはわかる?」
「いえ、眷属として生み出されてからのご主人様のことについては分かりません。しかし、繋がっていますので共有することは可能だと思います」
「共有?」
「はい! 頭の中で思い浮かべた知識を送り合ったり、声に出さずとも意思疎通をしたりすることです」
俺はミルにそう言われて、頭の中でミルに呼びかけてみた。するとミルから元気な返事が返ってくる、もちろん頭の中に直接だ。
凄いな……これは便利だ。
「これ、便利だね」
「はい! 何かありましたらお使いください。どれだけ距離が離れていても通じます」
「わかった。じゃあ遠くにいる時は使うよ。あといくつか確認させてほしいんだけど、ミルは身体の大きさを自由に変えられる? あと、何か戦いの力が身についてる?」
俺がそう聞くと、ミルは途端に身体を小さくした。
凄い……みるみるうちに小さくなっていき、すぐに小型犬サイズになった。
「この大きさまでは小さくなれます。そして先ほどまでの大きさが最大です!」
「そっか……とりあえず、その大きさのままで抱っこしてもいい?」
俺はミルにそう一言断りを入れて、ミルを抱き上げた。そして腕の中でぎゅっと抱きしめる。凄い、凄すぎる。あったかくてもふもふで最高だ。落ち着く……
それからしばらくは小さなミルを堪能して、俺はミルを地面に下ろした。するとミルは元の大きさに戻ってしまう。
「小さいままより大きい方が楽なの?」
「はい。この一番大きいサイズが標準なので楽です」
「そうなんだ。じゃあ基本的にはその大きさだね」
「そうさせていただきます」
「あと、ミルは戦ったりできる? 敵に勝てるようにってイメージしたんだけど」
俺がそう言うとミルは俺から少し離れたところまで走っていき、そこで水を身体の周りに出現させた。それから前足の爪をギュインと伸ばし、その爪で水を切り刻んだ。
……何あれ? 爪が伸びるのも不思議だけど、急に現れた水にも驚きだ。でもそうか、俺がなんでも作り出せるのならミルにもできるのか。
俺がそうして驚いていると、ミルは得意げな顔で俺のところまで戻ってきた。
「爪は自由自在に伸ばしたり縮めたりすることができ、更に硬化したり鋭くしたりも可能です。更に私は水を発生させることと風を操ることができるみたいです。ご主人様が付与してくださったのですよね? ありがとうございます!」
俺そんな力付与したっけ……? 多分イメージする時に俺が水と風のことを考えてたんだろうな。
確かに乾いた土を見て、神界って雨降るのかなとか風は吹くのかなとか考えた気がする。うん、これからは余計なものを視界に入れないように、目をつぶってやることにしよう。
「戦える力があるのなら良かったよ」
「はい! 水と風も上手く使えば攻撃にもなりそうです。これから練習します!」
「じゃあ、ミルのために広場を作ろうか」
それから俺はミルのためにかなり広い範囲を芝生にして、そこに山を作ったりジャングルジムを作ってみたり、はたまた普通に木や花を作ってみたりした。
これほどの広さがあればミルも自由に走り回れるだろう。
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