第140話 オークの棍棒
「そろそろオークを倒して、棍棒を手に入れておきたいよな」
「そうだね。依頼を受けてるし、早めに手に入れられると安心なんだけど……」
二人のそんな会話を聞いてマップを見てみると、いくつか魔物の反応は映るけど、どれも群れを成しているからオークである可能性は低そうだ。
「ちょっと違う方向に進んでみる?」
「そうだな……そういえば、俺が選んできた道って正解だったのか?」
「あれ、もう聞いて良いの?」
「気になってきたからな」
ウィリーが正解と言われるのを期待しているような瞳で俺の顔を覗き込んできたので、苦笑しつつ残念な事実を告げた。
「ウィリー、まず最初の分かれ道なんだけど……三つのうち一つだけ外れの、その一つを選んだよ」
「え、マジかよ! じゃあ左と真ん中は正解だったってことか?」
「うん。その二つなら三階への階段に辿り着ける可能性が残されたかな。右はどう頑張っても行き止まりか、最初の広場に戻るよ」
その言葉を聞いて、ウィリーは悔しそうに頭を抱えて叫んだ。
「俺、めっちゃ運ないじゃん! 今進んでる道はどこに行くんだ?」
「この道はもう少ししたら行き止まりかな」
「ふふっ、マップがないと大変なことになるね」
『ウィリーさん、元気出してください』
ミルがウィリーの足を前脚でポンポン叩くと、ウィリーがそんなミルをギュッと抱きしめた。
「俺を励ましてくれてるのか? ミルは優しいなぁ」
「元気出して、だってよ」
それからウィリーがミルの可愛さを堪能したところで、俺たちはマップを見て魔物がいそうなところへ向かう方針に切り替えた。
とりあえず今の道は引き返して何回か脇道に逸れ、最初の広場に戻ることにする。
「最初の道はどれが一番の正解なんだ?」
「三層への近道という点では左かな。ただ魔物討伐だと真っ直ぐが良いと思う。まっすぐの道は定期的に大小様々な広場があって、魔物がその広場ごとにいると思うから」
「そうなのか……最初からまっすぐ行きたかった」
「ははっ、でも右も楽しかったから良いんじゃない?」
ゴブリンの群れと戦えたのは良い経験になったし、マップがない場合の洞窟型ダンジョン攻略の難しさも体験できた。
こういう経験は、討伐の効率よりも大切だろう。
「あっ、そこ右に曲がって」
「分かったぜ」
それから俺たちは元の広場に戻って今度こそまっすぐ進み、さらに数分歩いたところで、さっそくオークと相対していた。
「オーク、久しぶりに戦うな!」
「アーネストのダンジョンの最下層以来だね」
「あの時は簡単に倒せたけど、このダンジョンにいるオークの方が強い可能性もあるから油断しないように」
「おうっ、もちろんだ」
『僕も行きます!』
ウィリーが重そうなオークの巨体に向かっていくとミルもそのすぐ後に続き、二人は仲良く並んでオークに向かって駆けていった。
そしてウィリーは左から、ミルは右から首に向かって攻撃をすると……両側から強い衝撃を喰らったオークの首は地面に落ちることはなかったが、リアルに首の皮一枚で繋がっている状況になった。
――やっぱりオークも俺たちの敵にはならないな。
オークは棍棒を振り上げた状態のまま固まって地面に倒れ、そのまま息絶えたようだ。
「倒せたぞー」
「瞬殺だったね……次は私とトーゴで倒そうか」
「そうだな。俺が前衛をするよ」
そんな会話をしつつ倒れたオークのところに向かい、アイテムボックスに収納した。
「これであと一つだな!」
「うん。次はここからまっすぐ進んで途中で左に曲がった先の広場に一体の魔物がいるから、そこに行ってみよう」
「おっ、良いな」
それから俺たちはマップを駆使したことで次々と魔物に遭遇し、最終的には十体以上のオークを討伐し初日の探索を終わりにした。
今は地上に戻って依頼達成報告を済ませ、宿に戻っているところだ。
「明日からはどうする? このダンジョンは広いから、奥に行くなら野営をしつつ進むしかないけど」
「そうだな……低層階にいても仕方ないし、野営をしてどんどん下を目指さないか?」
「私もそれが良いと思う。今日一日でこのダンジョンのことはなんとなく分かったからね」
『僕も賛成です!』
「ミルも野営に賛成だって。じゃあ、明日からは三層以降を探索しよう。とりあえずは五層の守護者討伐までかな」
守護者を討伐したら何が起こるのか、守護者は倒してもまた復活するのか、倒したパーティー以外も六層以降に行けるのか、六層から五層に上がるには守護者を討伐する必要があるのか。
この辺のことを色々と検証したいと思っているのだ。未知のダンジョンだから、できる限り慎重にいきたい。
「それで良いと思うよ。少し六層を見て帰る予定にしようか」
「そうだな。ゴーレム討伐、楽しみだぜ!」
それから俺たちは明日からのために市場で色々と買い込んで、宿に戻って快適なベッドで眠りについた。
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