第139話 二層を探索
宝箱があるのは斜め右に伸びている道で、左はすぐに行き止まり。そして右は数キロ先で行き止まりで、まっすぐはいろんな道に続いているんだけど……
「俺の直感は――左だ!」
「あぁ、不正解」
苦笑しつつ伝えると、ウィリーは悔しそうに表情を歪めて軽く項垂れた。ウィリー、さっきから運が全くない。
「私的には斜め右前かな」
「おっ、ミレイア正解。凄いな」
「ふふっ、直感だけどね。ウィリーよりは当たるみたい」
『では宝箱の下に行きましょう!』
それから悔しそうなウィリーと楽しそうなミレイア、そして宝箱にはしゃいでいるミルを連れてその場所に向かうと、マップで見た通り隠し部屋への入り口があった。
いや、入り口というよりも隠し部屋が開くボタンかな。洞窟の壁に少しだけ色が変わっているところがあり、多分ここを押すと入り口が開くのだと思う。
罠はないから心配はいらないはずだ。
「押しても大丈夫なのか?」
「大丈夫なはず。でも一応慎重に、武器で押してみよう。それから今のところ中に魔物はいないけど、入り口が開いた瞬間に出てくるかもしれないから気をつけて」
「おうっ、分かったぜ」
ウィリーが好奇心と少しの緊張が入り混じった表情で壁を押すと……ゴゴゴゴッという音と共に、壁の一部が動いて隙間が生まれた。
「……うわっ」
入口が開いたところでマップを見てみると、中に三十匹ほどの魔物が発生しているのが分かって思わず声を出してしまう。
予想以上に多いな、何の魔物だろう。
「どうしたの?」
「中に三十匹の魔物が出現した。慎重にいこう」
「マジか。それは多いな」
『気合いを入れ直さないとですね』
皆で少し緩んでいた気を引き締めて、頷き合ってから壁の隙間に入った。横に二人は並べないけど一人で通るならさほど狭くない隙間を通っていくと……その先には、大きな広場とゴブリンの群れがいた。
「トーゴ、ミレイア、ミル、ゴブリンの中に杖持ってたり弓を持ってるやつがいるぞ」
先に広場に着いていたウィリーの言葉にじっと後ろ側のゴブリンを見てみると、確かに武器を持ってるやつらが何体も確認できた。ゴブリンは群れになると武器や魔法を使うやつが生まれるっていうのは本当だったんだな。
「まずは武器持ちから倒そう。ミレイアは相手の遠距離攻撃の防御に意識を集中させてほしい」
「分かった。ウィリーとミルちゃん、普通のゴブリンの攻撃は各自防御をお願いね」
「おうっ、もちろんだ」
「わんっ!」
軽く戦闘に関する打ち合わせをしていたら、さっそく何匹かのゴブリンがこちらに向かって駆けてきたので戦闘開始だ。
ウィリーとミルが先頭のゴブリンたちを薙ぎ払うのと同時に、俺とミレイアは魔法と弓で着実にゴブリンの数を減らしていく。
「ファイヤーポール!」
スピアよりも数匹にダメージを与えられる魔法を選んで放つと、ゴブリンは倒れはしなかったけどかなり動きが鈍くなった。
魔力は無限じゃないから、どの程度の威力の魔法を使うのかが難しいところだよな。高威力の魔法で一気に倒すことはできるけど、それを繰り返してると魔力回復薬がいくらあっても足りないし。
「おりゃぁぁああ!」
ウィリーがゴブリンの最後尾に辿り着いたようで、何匹ものゴブリンを一斉に薙ぎ払った。それに負けじとミルも爪の攻撃でゴブリンを倒していく。
そうこうしているうちに立ち上がっているゴブリンはほとんどいなくなり、数十秒後には全てのゴブリンが息絶えていた。
「よしっ、倒せたな」
「魔法を使ったり弓を放ってくるとはいえ、ゴブリンはゴブリンだね」
「油断せずに戦えばゴブリンの群れは問題なさそうだ。じゃあ、宝箱を開けようか」
広場の奥に鎮座している宝箱を指差すと、ミルが嬉しそうに尻尾を振りながら奥に駆けていった。
『何が入ってるか楽しみですね!』
「ミルが開けて良いよ」
『良いのですか!?』
「うん。二人も良い?」
「おうっ、良いぜ」
「もちろん良いよ。ミルちゃんは宝箱を開けるのが好きだよね」
二人の了承を得られたところで、ミルは高速で尻尾を振りながら、器用に鼻先で宝箱を開けた。
中に入っていたのは……
「これって、ヒーリング草だよね?」
「ハズレだな」
「まあ仕方ないよ。ここはダンジョンの冊子にも載ってる隠し部屋だから、宝箱は頻繁に開けられてるだろうし」
落ち込んでいる様子のミルの頭を撫でてからヒーリング草を取り出すと、品質は凄く良さそうだった。ただあくまでもヒーリング草なので、そこまで高く売れることはないだろう。
「宝箱の中身は、他の冒険者が到達できてない層に行ってから期待した方が良いかも」
「確かにそれもそうだな」
「早めに守護者を倒そうか」
「わんっ!」
それから倒したゴブリンを全てアイテムボックスに仕舞って解体まで済ませたところで、隠し部屋を出て探索を続けることにした。
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