第143話 ゴーレム撃破
「なんとなくの違和感なんだけど、人間で言うと左脇腹あたり? を庇ってるような気がする。そこをずっと腕で隠してるの」
「左脇腹か……ウィリー! 左側の胴体を狙って欲しい」
弾かれても果敢に斧で攻撃しているウィリーに指示を出すと、ウィリーは「おうっ」と楽しそうに返事を返してくれた。
俺はその間に……関節を狙ってみるか。大体こういう魔物は、関節部分が脆いのが特徴なんだ。
「アイススピア!」
魔力をかなり込めたアイススピアを右足の付け根に放ってみると、完全に弾かれる音ではなくてダメージを与えたような音が響き渡った。
「少しだけひびが入ったかも」
「本当だね! ……結界っ」
攻撃が通ったことで体勢を崩したのか、ゴーレムが反対の足を地面に叩きつけ、また小さな石や岩が飛んでくる。
「ロックウォール!」
ウィリーのことはミレイアが結界で守ったのが見えたので、咄嗟に俺たちを守るために土壁を作り出した。
あの地面に叩きつける範囲攻撃、意外と厄介だ。打ちどころが悪くなければかすり傷程度だろうけど、最悪の場合に備えて毎回防がないといけない。
「ミレイア、ありがとな!」
「ウィリー、左側の胴体が無理そうなら、関節から狙った方が早いかも」
「分かったぜ!」
『僕も関節狙いで行ってきます』
ミルが駆けて行ったのを見送り、俺もまたさっきと同じ場所を狙うためにアイススピアを作り出した。
それからは皆が関節を狙ってひたすら攻撃を仕掛けていき、さすがに俺たちでも疲れてきた……そう思い始めた頃に、やっと両足の関節が破壊されてゴーレムがその場に倒れ込んだ。
「よしっ」
「やったぜ!」
しかしまだゴーレムは動いていて、腕だけで這うようにこちらに向かってくる。
「ちょ、ちょっと怖いね……」
「本当だな……」
やっぱりどこかにある核を壊さないといけないのか。関節部分が壊れたから、そこから胴体に向けて攻撃を仕掛ければ――
「ロックバレットッ!」
小さく凝縮させた鋼鉄のように硬い弾丸を放つと……その弾丸は、ちょうど関節が壊れて胴体に僅かにひびが入っていた部分に命中した。
ドンッッッという衝撃音の後に、ピシっという何かが壊れる前兆の音が聞こえてくる。それから少しだけ時間が過ぎて――突然、ゴーレムの胴体は真ん中からバリバリッと割れた。
「おおっ、さすがトーゴ!」
割れた胴体から転がり出てきたのは、鉄のような色をした球体だ。多分あれを壊せば良いんだな。
「ウィリー、あれを思いっきり叩き割って欲しい」
「分かったぜ」
ウィリーの怪力によって球体が真っ二つに叩き割られると、マップに映っていたゴーレムの印が消えた。これで、完全に倒せたみたいだ。
「倒せたよ」
「マジか! よっしゃあぁぁ!」
「倒せたね!」
「少しだけ苦戦したかな」
『でも次からはやり方が分かったので簡単ですね』
皆で自然とゴーレムの近くに集まって、ハイタッチを交わした。なんだか久しぶりに強敵を倒して達成感がある。
「ゴーレムの素材を回収しちゃおう」
「そうだね。これ、高く売れたりするのかな?」
「うーん、どうだろう。硬いけど弾力性はなさそうだし、武器にはならないかな……」
『でもゴーレムは珍しいので、研究目的として買う人がいるかもしれませんね!』
『確かにそれはあるかも』
そんな話をしながらゴーレムの素材を全てアイテムボックスに収納して、俺たちは階段の手前に見える宝箱に向かって足を進めた。
キラキラと装飾が輝く宝箱は、中身にとても期待が持てる外見だ。
「宝箱、誰が開ける?」
俺のその言葉に三人で顔を見合わせて、俺たちは一斉に足元で瞳を輝かせているミルに視線を向けた。
「ミル、開けて良いぞ」
「ミルちゃんが開けてくれる?」
『本当ですか!? ありがとうございます!』
ミルは一応声を発さずに念話で感謝を告げると、念話が聞こえないウィリーとミレイアの足に顔を擦り付けた。
そして尻尾を振りながら宝箱に近づいていき……鼻先で豪華な宝箱の蓋を持ち上げると、宝箱から巨大な何かが飛び出してくる。
「うわっ、なんだこれ!?」
飛び出してきたのは大きな白い何かで……これって、ベッド? しかもキングサイズよりも大きい。五、六人が寝ても余裕がありそうな巨大なベッドだ。
「ベッド、だよね?」
「そう見えるけど……こんなに巨大なものが出てくることもあるんだな。これってアイテムボックスを使えなかったら、持ち帰れなくないか?」
「確かに。あっ、でもここにボタンがあるよ」
木枠に白いボタンがあったので何が起きるんだろうと押してみると――まさかの事態が発生した。
「消えた? え、押しちゃダメなやつだった?」
慌てながらミレイアとウィリー、ミルに視線を向けると、ミルが地面を鼻で押しながら「わんっ」と吠えた。
『トーゴ様! こちらにありますよ!』
ミルのその声に従って地面をよく見てみると……そこには、手のひらサイズの小さな四角柱がある。そしてその側面には、さっき押したボタンが小さくなったものが見えた。
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