第94話 戦闘終了と宝箱
「ミル、俺達でロックモンキーを全部倒そう」
「分かりました!」
「サンダーボール」
周りに他の冒険者はいなかったので、躊躇いなく雷属性の魔法を使った。サンダーボールは周辺にいる魔物にまで攻撃できるので、大勢の相手と対峙する時には有用なのだ。
「ウインドカッター」
ミルも風魔法で魔物を何匹も同時に倒していく。しかしそれでも近づいてくる魔物はいるので、そういう魔物には剣も使って応戦した。
「トーゴ様、大丈夫ですか!」
「大丈夫! ミルはそっちの魔物をお願い」
「分かりました!」
それから数分で、俺達はロックモンキーを全て討伐することに成功した。後はボスロックモンキーだけだ。
「ウィリー、ミレイア、こっちは終わったよ。ボスはどう?」
倒したロックモンキーは放置して二人の下にミルと駆けつけると、二人はまだボスを倒し切れてはいないようだ。
「こいつ逃げ足が速いんだ。すぐに木の上に逃げて攻撃を避けられて、致命傷が与えられてない」
「トーゴ、あいつの動きを止められる魔法ってない?」
「もちろんあるよ。じゃあ俺が魔法で地面にあいつを固定するから、そしたらウィリーがトドメを刺してくれる?」
「了解だ」
あいつの動きを止めるには……風魔法で上から地面に押し付けるか、それとも氷魔法で氷の蔦を作って巻き付けて拘束するか。ここは障害物が多いから、氷の方が良いかな。
俺は頭の中で一瞬の間にそう考え、木の上からこちらを睨んでいるボスロックモンキーをしっかりと見つめ返した。
「あんまり長時間は動きを止めてられないと思うから、すぐに攻撃をお願い」
「分かった」
「じゃあ行くよ。――アイスバインド」
俺がそう唱えたと同時に地面から氷で作られた蔦が出現し、一瞬でボスロックモンキーに巻きついていく。ボスは突然の出来事に動揺して、すぐには拘束から抜けられないようだ。
アイスバインドに魔力を注いで操って、ボスロックモンキーを地面に引きずり落とす。
「ウィリー!」
「わかってる! いっけぇぇ!!」
俺が魔法を唱えたと同時に駆け出していたウィリーは、地面でもがいているボスロックモンキーに駆け寄って、斧を思いっきり振り下ろした。それによってボスロックモンキーの首が体から離れ、ドスンと大きな音を立てて手足が地面に落ち動かなくなる。
ウィリーが生死を確認すると、ちゃんと倒せていたようだ。
ふぅ……倒せて良かった。やっぱり数が多いと楽勝とまではいかないな。でも上手く連携できたんじゃないかと思うし、これからもっと経験を重ねていけば良いだろう。
「倒せたな!」
「やったね! ウィリー、宝箱が出てるよ」
「おっ、本当だな。ミレイアが開けるか?」
「良いの? じゃあ、ありがたく開けさせてもらおうかな」
二人はもう宝箱に意識が移ったみたいで、周囲を警戒しつつ宝箱の周りに集まっている。まだ宝箱を開けていないのはウィリーとミレイアだけなので、二人に任せよう。
「トーゴ、ミルちゃん、開けるね!」
「分かりました!」
「りょーかい」
興味津々のミルが宝箱に駆け寄ったところで、ミレイアが興奮の面持ちでゆっくりと宝箱を開けた。そして中身を取り出すと……中から出てきたのは何かの毛皮みたいだ。
「これってもしかして……」
ミレイアはそう呟くと、手の中にある毛皮と傍に倒れているボスロックモンキーを見比べた。
「ボスロックモンキーの毛皮?」
「やっぱりそうだよね? もっと良いものが出て欲しかったのに〜」
「こいつの毛皮かぁ、外れだな」
「ミレイアさん、元気出してください!」
フロアボスからドロップする宝箱の中身は、そのフロアボスの素材のことが多いって聞いてたけど、ビッグレッドカウの時に布肉が出ちゃったから期待しすぎてたな。
「仕方ないよ。これも高く売れるかもしれないし、爪とかより毛皮の方が当たりじゃない?」
「そうかなぁ」
「確かに毛皮の方が使い道はありそうだな」
俺達のそんな慰めにミレイアは早めにショックから立ち直ったようで、ボスロックモンキーの毛皮を俺に手渡してきた。
「トーゴお願い。せめて高く売れることを祈ってるよ」
「うん。でもこれ意外と暖かそうじゃない? もしかしたら寒い環境のダンジョンとかで使えるかもよ」
頑丈そうだし、地面に敷いたりするのには重宝するかもしれない。一つは売って一つは取っておくのもありかな。
「確かにそっか。寒い環境のダンジョンだってあるんだもんね」
「もしかしたら、そういうダンジョンがある街で売ったら高く売れるかもよ。後は寒い地方とか国とか」
ずっとこの国にいるわけではないし、これからたくさんの国を巡るのだから、寒い場所に行く機会もあるだろう。寒いのは嫌だけど、雪景色はちょっと見たいかもしれないな……雪景色って神秘的で静かで好きなのだ。
「私達もそういう場所に行くんだよね。楽しみだね」
「本当だな! 俺はずっとあの村だから寒い場所にも行ったことないんだ」
「私もだよ。楽しみだね」
それからは二人が寒い場所への憧れを語っている間に、俺は倒した魔物を全てアイテムボックスに収納した。これで解体まで完璧だ。
「じゃあ地上に戻ろうか」
「そうだな。そろそろ夕方だ」
「本当だ、急ごうか。宿のご飯に間に合わなくなっちゃうよ」
「それはやばい! 早く帰るぞ!」
夕食に間に合わなくなるという言葉にウィリーとミルが面白いぐらいにやる気を出して、避けられず出会ってしまった魔物を秒で倒しながら上に向かったことで、昨日よりも早く一時間弱でダンジョンから出ることができた。
ダンジョンを管理している建物から出て空を見上げると、あと少しで完全に日が沈む時間だ。
「結構暗いね」
「早くギルドに行って依頼の達成報告をしようか」
「あと鑑定も頼まないとな」
「そうだったね。鑑定結果が楽しみだよ」
「わんっ!」
そんな話をしながら冒険者ギルドのドアを開けると、中はそこまで混んでいなかった。もう冒険者でごった返す時間は過ぎたのだろう。
「この時間だとあんまり並ばなくて良いから、楽かもしれないね」
「確かに。いつもこのぐらいの時間でも良いかも」
「本当だな。じゃあ早く受付に行こうぜ」
ちょうどモニカさんの受付が空いていたのでそこに向かうと、モニカさんはにっこりと綺麗な笑みを浮かべて俺逹を迎えてくれた。
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