第95話 依頼達成報告と鑑定
「皆さん、お疲れ様です。依頼達成報告ですか?」
「はい。こちらの二つを達成してきましたのでよろしくお願いします」
俺が依頼票を手渡すと、モニカさんは内容をざっと確認してすぐに木製のトレーを手渡してくれる。
「こちらのトレーに依頼の品をお願いいたします」
「分かりました。痺れ蝶の鱗粉は羽のまま持ってきたのですが、それで大丈夫でしょうか?」
「羽ごとなのですね! その方が綺麗なままの鱗粉が採取できるので、依頼者に喜ばれるのです。ありがとうございます」
そうだったのか。それなら俺達も楽だし、これからも羽ごと持って帰ってこよう。
木製トレーに痺れ蝶の羽と幻光華を一つだけ載せると、モニカさんはすぐに受け取ってくれた。そして状態を確認してから後ろの台におく。
「依頼の品、確かに受け取りました。受注記録の方にも達成で記録しておきます。それから報酬もお持ちいたしますので、少々お待ちください」
それから数分後に報酬を受け取って、依頼の達成報告は終了となった。いつもはここで買取受付に向かうんだけど、今日は鑑定について聞きたいので話を続ける。
「モニカさん、鑑定はどこで頼めば良いのでしょうか?」
「ダンジョン産アイテムの鑑定でしょうか?」
「そうです」
「それならば買取受付の方で仰っていただければ、鑑定士をご紹介いたします」
「そうなのですね。ありがとうございます」
買取受付の方を見てみるとちょうど誰も並んでいないのでちょうど良さそうだ。俺達はモニカさんにお礼を言って、買取受付にいる男性に声をかけた。
「すみません。買取と鑑定をお願いします」
「分かりました。ではまずは買取からでよろしいでしょうか? こちらのトレーに買取希望の品を載せてください」
まずは買取からか。今回買取に出したいのは……大量にあるロックモンキーの素材と、二つあるからボスロックモンキーの毛皮を一つかな。
あとは途中で採取した薬草類もいくつか出しておくか。それから白狼の爪とかもいらないかな。
そうして俺達には必要ないものをトレーの上に出していき、不自然に思われない程度のところで止めた。これって毎回全部を売ることはできないから、俺のアイテムボックスの中はひたすらものが増えていくな。
「これでお願いします」
「かしこまりました。こちら査定して参りますので、少々お待ちください。鑑定士の紹介は査定後にいたします」
男性が素材を乗せたトレーを持って後ろに下がったのを見届けて、俺達は受付から離れて冒険者ギルド併設の食堂に向かった。席が空いていたので座って待つことにする。
「受付の人、ボスロックモンキーの毛皮を見て驚いてなかった?」
「ミレイアも気付いた? 俺も他の素材を出した時と反応が違うなって思ったんだ」
持ち運ぶ前にトレーの上を整える時に、ボスロックモンキーの素材だけかなり丁重に扱ってる感じだった。もしかしたら貴重な素材なのかもしれない。
報酬をもらう時に、どんな効果があるのか聞いてみようかな。
「光の桜華の皆さん、お待たせいたしました」
「あっ、もう終わったみたい」
「本当だね。行こうか」
さっきの受付に戻ると、男性は袋にいっぱい詰まったお金を渡してくれた。予想以上に金貨が多い。買取の詳細が書かれた紙を見てみると……思った通り、ボスロックモンキーの毛皮の買取金額がかなり高くなっている。
「あの、ボスロックモンキーの毛皮ってどんな効果があるんですか?」
「……知らずに買取に出してしまわれたのですか?」
「はい。ただもう一つあるので、宝箱からも毛皮が出て」
「そうでしたか」
俺の返答に受付の男性は納得してくれたのか、一つ頷いてから説明をしてくれた。
「ボスロックモンキーの毛皮は、森の中などで魔物に見つかりづらくなる効果があるんです。マントなどにして全身を覆い隠せば、かなりの確率で魔物から逃れられます」
そんな効果があったのか! それは欲しがる人は多そうだ。でも俺達にはあんまり必要ないかな……マップで魔物からは逃げられるし、魔物は基本的に倒せるから。それに俺逹が倒せないような強さの魔物にまで、この毛皮が効果を示すのかはちょっと疑問だし。
でも何かの時に役立つかもしれないから、一つは持っておこうかな。
「教えてくださってありがとうございます。便利なんですね」
「はい。貴族や商人によく買われていくんです。では次に鑑定でしたね。鑑定室にご案内するので付いてきていただけますか?」
「もちろんです。よろしくお願いします」
そうして案内された部屋は、冒険者ギルドの二階の奥にある部屋だった。かなり広い部屋にたくさん設置された棚には、見たことがないアイテムがたくさん詰められているようだ。
『トーゴ様、ワクワクしますね!』
『うん。アニメとかで見たことない? どっかの錬金工房とかそんな感じ』
『分かります!』
俺とミルがそんな会話をしながら瞳を輝かせて部屋の中を見回していると、部屋の奥にある机に座っていた男性が立ち上がってこちらに来てくれた。
眼鏡をかけた真面目そうな細身の男性だ。部屋の入り口近くにあるソファーを勧められて腰掛けると、ここに案内してくれた受付の男性は部屋を出ていった。
「初めまして、セルジと申します」
「私はトーゴです。こちらはミレイア、ウィリー、そして従魔のミルです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いいたします。一応こちらをお見せしておきます。鑑定士のバッジです」
そう言ってセルジさんが胸元に付いたバッジを外して見せてくれた。これが鑑定士のバッジなのか……鑑定士について書かれていた本にバッジについても記載があって気になっていたので、本物を見れてちょっと嬉しい。
鑑定士は国家資格なので、このバッジを持っている人は信頼できる。このバッジを持っていて、さらに冒険者ギルドに雇われているのなら詐欺師ということはないだろう。
「鑑定料は鑑定書込みで金貨を一枚いただきます。こちらの金額でよろしければ、鑑定希望の品をトレーに載せてください」
金貨一枚なのか……意外と高いんだな。でも今の俺達なら躊躇うほどじゃない。
「ミレイア、ウィリー、パーティー資金から払うんで良い?」
『ミルも良い?』
「もちろん良いよ」
「問題ないぜ」
『大丈夫です!』
三人にしっかりと確認してから、俺はセルジさんに向き直った。
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