第14話 これからの予定
「ミル、真剣にこれからどうすればいいのか考えよう。一緒に考えてくれる?」
「もちろんです!」
「まずは今の現状を知るべきかな」
俺はそう考えて、ウインドウでマップを開いた。この世界を楽しむために極力使わないとか言ってたけど、これからはガンガンに使っていこう。もうなりふり構ってられない。楽しむとか言ってる場合じゃない。
俺はウインドウのマップを世界全体に広げて、自分がいる場所を確認した。
この世界は四つの大きな大陸からできている。真ん中には一番大きな大陸があり、その東と西にそれぞれその半分ほどの大きさの大陸が存在する。そして北側にはもう少し小さい大陸がある。
俺が今いるのは一番大きな大陸のようだ。
「ミル、見える?」
「はい!」
「俺たちが今いるのは一番大きな大陸の西側みたい」
「この赤い点が現在位置ですね」
「そう。そして最終目的地はこの大陸」
俺はそう言って北側にある大陸を指差した。この大陸にあるダンジョンのクリアボーナスが神界への招待なんだ。でもこのダンジョンに入るには五つのダンジョンのクリアボーナスである宝玉が必要。その五つのダンジョンは今俺たちがいる大陸に三つ。そして東と西の大陸に一つずつある。
「では、まずはこの大陸にある三つから向かうということですね」
「そう。でも問題があって、ダンジョンの難易度はかなり高い設定にしてあるんだ。この世界で才能に恵まれた人達がパーティーを組んで必死に努力をして何とかって感じ……。だから、今の俺達じゃ話にならない」
こんなことになるならもっと難易度下げればよかったし、俺の能力をもっと上げておけばよかった。でもゲーム感覚だったんだ。それなら難易度高い方が楽しいでしょ?
はぁ〜少し前の俺に言ってやりたい。めちゃくちゃイージーモードにしろ!
「トーゴ様は、現在お力がほとんどありませんからね」
「そうなんだよ」
俺の身体能力は成長限界が人間の最大値にしてあるけど、まだ戦ったことも鍛練したこともない今は激弱だ。唯一魔力量だけは既に最大値で全部の属性魔法が使えるけど、魔法だって使い慣れないとダメだろう。
うん、とにかく鍛練しないとダメだ。
「この世界には今挙げた五つのダンジョンの他にも初心者用のダンジョンとか色々あるから、そこから始めて鍛えないとダメかな。いや、まずはダンジョンどころかその辺にいる魔物からかな」
この世界のダンジョンはいろんな形があるんだけど、そのダンジョンから外に魔物が出てくることもできるから、ダンジョン内で生存できなかった魔物がダンジョンの外に出てくるのだ。ダンジョン内の方が食料も豊富だし居心地がいいようにしてある。
だからダンジョン外にいる魔物は一番弱い魔物ということになる。まずはそこからだ。
そういえばこの世界のダンジョンは、ダンジョンコアっていう大きな宝石のようなものに、神力を使用する権限を一部与えて運用してもらってるんだけど、そのダンジョンコアに頼めば俺を神界に連れ戻してもらえないかな?
いや、そんなに大きな権限は渡してないか……
……うん、順当に頑張るしかないな。
でも俺一人が強くなったとしても流石に限界がある。強い仲間が必要になるだろう。その仲間をどうやって見つけるのかも課題だ。マテオたちは……良くも悪くも普通って感じがしたな。
「ミル、仲間が必要なんだけど、どうすれば強い仲間を集められるかな?」
「それは……かなり難しいと思われます。トーゴ様が強くなられれば必然的に周りにも強い方が集まるとは思いますが……」
「やっぱりそっか。あとは有用なスキルを持ってる人も仲間に入れたいんだけど……」
この世界には、いくつかチートなスキルも作ってあるのだ。例えば魔力回復速度十倍とか。あれを持ってる人で更に光属性が使えたなら良い回復役になってくれると思う。更に元の魔力量も多くないとダメだけど……
そんな奇跡のような人材、どこにいるんだよ。
あと有用なのは神の愛し子かな。あれはとにかく周りに良い人ばかり集まって、人生が幸せに暮らせるってスキルなんだ。そのスキルを持つ人を仲間にしたら旅もうまくいきそうな気がするし、仲間集めも捗りそうだ。
でもあのスキル持ってる人を見分けるのって大変すぎない? 「運が良い人知りませんか?」って聞いて回るぐらいしか思いつかない。
あぁ〜、こんなことならスキルを鑑定できる能力を俺につけとけば良かった!! それに俺の魔力量と身体能力も人間レベルでの最大にしたけど、依代をちょっといじって神レベルにしちゃえば良かった。
今更後悔しても遅いんだけどさ……
「ミル、前途多難だよ……」
「そうですが、僕もお助けしますので頑張りましょう!」
「うん、そうだね。ミルありがとう」
俺はミルにもふっと抱きつく。ミルがいてくれて本当に良かった。ミルがいなかったらもっと狼狽えて落ち込んで、どうしようもなかったと思う。
「そういえば、トーゴ様と僕のスキルは結局何だったのですか? 後でのお楽しみだということでしたが……」
「えっと……ミルはもふもふってスキルで、俺は四葉のクローバー」
本当に、なんでこんなスキルにしたんだか。俺とミルのためにあえて新しいスキルを作ったのに、こんなにくだらないやつにしちゃったよ。
「もふもふとは……?」
「ミルのこの最高に触り心地のいい毛並みがそのまま保たれるようにって、毛が汚れないし濡れないようになるスキル……です」
「トーゴ様、それはあの、攻撃も防げるのでしょうか?」
「ううん、防げない。一度汚れても定期的に綺麗になるって感じだから……」
「……そうですか」
こんなに役に立たないスキルでごめん……でもミルの足は肉球だけ綺麗に拭けば他が汚れることはないから、ベッドにいつでも登れるし、少しは使えるスキルなはず!
まあ、そんなのよりもっと強いのが良かったっていうのは分かるけど。
「トーゴ様の四葉のクローバーというのは?」
「これは努力が報われる可能性が上がるよ。っていうスキル」
「僕のよりは……役立ちますか?」
「うん……そうかも」
チートはなしで努力して頑張ってこの世界で強くなる予定だったから、努力が報われるようにちょっとだけ補正しようかなと思ってこのスキルにしたんだ。
どうせなら努力したことが全部報われるとか。そんな凄いやつにすれば良かった。
「まあ、スキルはちょっと、あれですけど……僕は神界での強さと同じになっていますし、トーゴ様も人間の中では最強になれるのですから大丈夫です。なんとかなります!」
「……うん、そうだよな。そうだよ! ちょっと予定が狂って神界に帰れなくなったけど、元々この世界を楽しむ予定だったし、ダンジョンだって全部クリアする予定だったんだ。ならもう、楽しもうか」
そうだよ。結局やることは変わらないんだ。あの邪神から絶対に俺の世界を取り返してやるけど、その過程も楽しむことにしよう。せっかく冒険できるんだから。
「はい!」
「じゃあとりあえず明日は初心者講習を受けて何か仕事をして、お金を稼げたら服とかタオルとか必要な物を買っていこう。まずはこの世界での生活基盤を整えるところからだ」
「そうですね。あとは僕の首輪もお願いします!」
「そうだった、それは最優先だ。あとはミルの足を拭く布も。そしたら一緒に寝れるから。ミルの体もしばらくは小さくしていてもらうけどごめんね」
「大丈夫です。街の外でたまに大きくなれれば十分です」
「うん。外では好きなだけ走り回っていいから」
「はい!」
そうして今後の方針が決まったところで少し落ち着いて、俺は眠りに落ちた。下界では人間の体だから眠くなるし疲れるのだ。
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