第138話 依頼の魔物討伐
「久しぶりの魔物討伐、楽しいな!」
「それなら良かったよ」
ウィリーの言葉に俺とミレイアは苦笑いだ。
「ゴブリンを片付けて次の五匹に行こうか。こっちに近づいてきてるからすぐだよ」
「この先か?」
「ううん。少し戻ったところにある脇道を入った先」
また皆で移動して脇道に入ると、すぐに魔物の群れが見えてきた。次の魔物は……おっ、バードラビットだ。
「ちょうど五匹だし依頼達成できるね」
「うん。ウィリーとミル、羽はできる限り傷つけないようにお願い」
「分かったぜ!」
『もちろんです!』
「あっ、あとバードラビットは飛べるから気をつけて」
ウィリーがさっきまでよりも慎重にバードラビットに近づいていくと、バードラビットは一斉に羽ばたいてウィリーから宙に逃げた。
風魔法を駆使して飛んでるって話だったけど、思ってたよりも自由自在に飛べるみたいだ。
「アイススピア!」
俺が魔法を放つとほぼ同時にミレイアも矢を射って、命中した二匹のバードラビットは地面に落ちた。やっぱり飛ぶ魔物に対しては遠距離攻撃が楽だな。
「さすがだな!」
それに続いてウィリーも洞窟の壁を蹴って宙に体を踊らせると、一匹のバードラビットの首元を切り付けて絶命させる。
残りの二人はミルが爪の攻撃と風魔法を使い、羽が傷つかないように上手く地面に落とした。
戦闘は一瞬で終了だ。五大ダンジョンと言えども、やっぱり低層階の魔物は強くないな。
「羽は大丈夫か?」
「多分大丈夫だと思う……うん、ここの二匹は大丈夫」
「こっちも大丈夫だよー」
羽の状態を確認してから全てをアイテムボックスに仕舞って解体して、バードラビットの羽の採取依頼は完了だ。
「これで一層でやるべきことは終わりだな」
「そうだね」
「さっそく二層に行こうか。さっきの道に戻ろう」
それから俺たちはひたすら二層への階段に向けて歩みを進めた。一層の入り口から二層の階段までは最短距離で五キロほどで、早歩きでも一時間は掛かる。
これは二層までは日帰りで行けるけど、三層以降を探索するなら野営をしないとダメだな。
「やっと着いたか〜。一層が広いダンジョンは大変だな」
「このダンジョンでマップがなかったらって思うと、想像だけで嫌になるね」
「それは……ちょっと無理かも。大変どころじゃないだろうな」
『何キロも進んで行き止まりだったら、心が折れそうですね』
皆でそんな話をしながら顔を見合わせて、一斉に階段へと足を踏み入れた。このダンジョンの階段はかなり広くて数人なら余裕で横になれるほどだ。
無事に辿り着いた二層は、一層とほとんど景色が変わらなかった。まあ同じ洞窟エリアなのだから当然だろう。
「この層ではオークの棍棒を二つだったな」
「そう。今日は三層への階段を目指すんじゃなくて、適当に魔物を倒す? 三層への階段がかなり遠くにあって、十数キロは歩かないとだから」
「そうだったね……今日は初日だし、ここの探索をして終わりにしようか」
『賛成です! それなら宝箱も見つけませんか?』
ミルのその提案に二人も頷いて、今日は二層で魔物討伐と宝箱探しをすることになった。
「じゃあどっちに行くか皆が決めて良いよ。あっ、冊子に載ってた正解の道を覚えてる?」
「いや、俺は覚えてないな」
「私は覚えてるからウィリーが決めて良いよ。ふふっ、ウィリーが好きに選んだらどこに行くのか楽しみだね」
最初の広場にある通路への入り口は三つだ。その中で階段まで辿り着けるのは真ん中と左なんだけど……
「右に行こう!」
おおっ、三分の二を外してるよ。そんなウィリーに笑いそうになりつつ、楽しそうに右の通路に向かったウィリーに付いて通路に入った。
「右が正解かどうか聞く?」
「……いや、帰る時に聞くことにする。その方が楽しいからな」
そんな話をしてる間にもまた別れ道だ。十字路になっていて、左に行くと数キロ進んだ先が行き止まり、まっすぐは数百メートルで大きな広場に到着して行き止まり、右はいろんな道につながっていて、最終的にはさっきの広場に戻ってしまう道だ。
「うーん……悩むけど右にする!」
ウィリー、三層への階段を目指してたとしたら、悉く外れの道を選んでるな。せめてまっすぐ進んでいれば、すぐにその道は行き止まりだと発見できたのに。
「ちなみにトーゴ、魔物はどのぐらいいるんだ?」
「一層よりはたくさんいるかな。特に奥に進むほど多くなるかも。後は所々に広場があるんだけど、そこには群れがいるよ。それからいくつか隠し部屋があって……もしかしたらそこは、入ったら魔物が出現するタイプかも」
アーネストのダンジョンでもそういう隠し部屋があったし、ここでも存在していて不思議じゃない。
「隠し部屋いいな! それだけは近くを通ったら教えてくれ」
「もちろん、宝箱だけは伝えるよ。ちなみに次の曲がり角は宝箱がある方とない方に分かれるけど、どうする?」
「マジか! じゃあ俺が決めた方が合ってるか教えてほしい」
楽しそうなウィリーのその言葉に頷くとウィリーは足を速め、すぐ分かれ道に差し掛かった。
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