第137話 地獄の門の中へ
次の日の朝早く。俺たちは部屋に運ばれてきた豪華な朝食に舌鼓を打ってから、地獄の門の入り口に向かった。
「アーネストよりも頑丈そうな建物に囲まれてるんだな」
「凄く大きいね……」
入り口で冒険者カードを提示して中に入り、何度か扉を通ってダンジョンの入り口に辿り着く。そこにはアーネストのダンジョンよりもたくさんの管理人が待機していた。
「おっ、新入りか?」
まだ年若い男性が俺たちに気付き笑顔で声をかけてくれたので、入り口に向かう前に一度足を止める。
「はい。今日から探索する予定です」
「そうかそうか。無理はするなよ。ここは一層でも強い魔物が出るし、何よりも広いからな」
「毎年迷って帰って来れなくなるやつが出るんだ。しっかり印を付けて地図を描くんだぞ」
若い男性の近くにいた壮年の男性も忠告をしてくれた。確かに数十キロにも及ぶ広さのダンジョンでは容易に迷うし、他の冒険者にも出会えない可能性は高いのだろう。
「おうっ、気を付けるぜ」
「ありがとうございます」
「わんっ!」
「ここでは手続きはないですか?」
「ああ、自由に入っていいぞ」
そう言って入り口を示されたので、男性たちに挨拶をして入り口に向かった。地獄の門の入り口は五大ダンジョンに相応しくかなり大きな洞窟だ。
恐る恐る中に入ると、すぐ一層に続く階段が視界に入った。階段はかなり大きくて豪華な作りみたいだ。
「じゃあ皆、行こうか」
「ああ、早く行こうぜ!」
新しいダンジョン、そして五大ダンジョンに心躍らせながら全員で階段を降りると……降りた先に広がっていたのは、小さな広場だった。
その広場には通路への入り口が五つあって、どれかを選んで先に進むようになっているみたいだ。
ちなみに二層への階段に繋がっているのは、一番右の道と左から二つ目の道のみ。他の道には宝箱がいくつかあるけど……全部を開けるのは大変だし、とりあえず見逃しても良いかな。
俺たちの目標は、このダンジョンの制覇なのだから。
「一番の最短距離でいい?」
「おうっ、もちろんだ。どんどん攻略してこうぜ」
「でも依頼は達成しつつね。バードラビットの羽を五つと、オークの棍棒を二つは手に入れないとだよ」
「それはもちろん。魔物は積極的に倒しつつ、階段を目指そうか」
『そうですね!』
それから洞窟の中を先へ先へと進んでいくと、意外にもそこまで魔物と出会わずに、スムーズに階段に向かって歩みを進めることができた。
「魔物よりも冒険者の方が多いな」
「マップで見ててもそんな感じかも。一層はそこまで魔物が強くないからかな」
「この層なら、そこまで強くない人たちでも探索できるって冊子にも書いてあったもんね。まあこのダンジョンに来れる人たちの中では強くない人だけど」
「これだとつまらないなぁ。依頼の魔物って二層にもいるんだっけ?」
「オークは基本的に二層かな。でもバードラビットは基本的には一層にいる魔物だったはず」
この調子だとバードラビットを倒せないまま二層に行くことになりそうだ。ちょっと最短距離を外れて魔物がいる方向に向かうかな。
多分この層は他の人たちも最短距離を分かってるから、この道が一番魔物が少ないんだろう。
「こっちに寄り道しよう。かなり先で行き止まりだから、冒険者が入っていかなくて魔物がいるはず」
「おっ、それいいな!」
脇道に入ってしばらく歩いていると、案の定マップに魔物を表す黒い点がいくつか現れた。
「皆、この先に魔物が三体いるよ。それから途中の脇道を入った先に五体」
「おっ、マジか! 早く行くぞ!」
楽しげに斧を手に持って走っていったウィリーに、ミルも尻尾を振りながら続く。俺とミレイアもそんな二人のことを追いかけると、しばらくして魔物の姿を捉えることができた。
魔物は……ゴブリンだ。
「依頼の魔物じゃなかったか」
「ゴブリンって特に取れる素材はないよな?」
「うん。魔石ぐらいかな」
「じゃあ思いっきり斧で倒しても大丈夫だな」
そう言ってニッと口端を上げたウィリーは、一体のゴブリンに向けて斧を掲げながら飛び掛かった。上から思いっきり斧を振り下ろされたゴブリンは、体を真っ二つにして血を吹き出しながらその場に倒れる。
「ちょっとウィリー、あんまり血を飛ばさないで」
ミレイアのそんな苦言に苦笑して謝りつつ、しかしウィリーはまた次のゴブリンに思いっきり斧を振るった。
なんかウィリー、だんだんと戦闘狂みたいになってない? 普段は怪力の力を抑える方に意識を注いでるから、たまには思いっきり力を使いたくなるのかな。
「わんっ!!」
ミルが僕にも獲物を残してくれというように吠えてから最後のゴブリンを倒し、案の定俺とミレイアはただ見ているだけで討伐は終わった。
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