第93話 ボスロックモンキー
可愛いミルに皆で悶えて、ミルを可愛がって褒め称えてから、俺達はやっと幻光華の確認をすることにした。アイテムボックスのリストを見てみると、幻光華だと思われる植物という項目に数字が七と書いてあるので、七本も採取できたようだ。
ちなみにアイテムボックスの名称は、俺の認識がそのまま反映される。したがってこれから幻光華をしっかりと確認して、これは幻光華で間違いないと判断すれば、アイテムボックスの名称は幻光華と変わるだろう。
よって先ほどの宝箱から出たお皿は、宝箱から出現した不思議なお皿となっているし、さっき森の中で見つけて何か分からないけど採取してみた実は、ダンジョン九層で採取した正体不明の赤い実となっている。
なのでアイテムボックスを鑑定のように使うことはできないのだ。それができたらめちゃくちゃ便利だったんだけど……まあそこまで求めるのは酷だろう。今の状態でめちゃくちゃ便利なんだから。
「――幻光華で、合ってると思う」
依頼票とダンジョンの本に載っている幻光華の特徴を確認して見比べると、ほとんど一致するのでまず間違いはなさそうだ。
「これで依頼達成だな!」
「大変だったけど、見つけられて良かったね。でも魔物が嫌う匂いを発してるんだよね? それにしては変な匂いはしないけど」
「本当だな。どちらかと言えば良い匂いじゃないか? ミルはどうだ?」
「そうですね……不思議な香りはしますが、別に嫌な匂いというわけではないです」
ミルが反応しないのはミルが眷属だからかな。でも魔物が嫌う匂いだって話だから人間にも臭いのかと思ったら、ハーブ系の良い香りなのには驚きだ。
「成分を抽出しないとそこまで効果はないんじゃない?」
「確かにそっか。これを香水にするんだもんね」
「俺達もその香水を買っておく? ダンジョン内で野営をするってなったらあったら便利だと思うんだ。思った以上にダンジョン内って魔物が多いし」
魔物除けなしで野営をしたら、一時間に数匹は魔物に襲われるだろう。そんな状態じゃ寝られないと思う。
「そうだね、一度買ってみようか。でもミルちゃんは大丈夫かな」
「僕はこれを嗅いだ限りでは大丈夫です! もしかしたら魔物除けと言っても、一般的な多くの魔物に効くだけで、効かない魔物もいるのかもしれません」
「そう言えばそんな話を聞いたことがあるぞ。村で魔物除けの香水を買うかって話が出た時に、全ての魔物を防げるわけじゃないとか何とか言ってたな」
そうなのか。それならミルに効果がなくてもそこまで怪しまれないかな。俺は魔物除けを普通に使うことができそうでほっと安堵のため息を吐いた。
「今度買ってみようか」
「そうするか。じゃあ今日は地上に戻るか?」
「そうしよう。あっ、でも途中でフロアボスがいたら倒していく?」
「もちろん!」
「じゃあフロアボスっぽい魔物以外は避けて地上に戻ろう」
それから俺達は十層を抜けて九層、八層まで戻ってきた。もうここまで来たらフロアボスはいないかな……そう考えて少し残念に思っていると、突然マップの端に二十個ほどの黒い点が映るのが見えた。
俺はそれを見た瞬間に足を止め、その黒い点が全てマップに入るように足を動かす。
「皆、フロアボスを見つけたかも」
八層のあんまり他の冒険者が行かないような、階段からは遠い場所にある森の中だ。フロアボスを探すために、階段から逸れて遠回りをしてた甲斐があったかも。
「マジか! マップを見ても良いか?」
「周りに他の冒険者は……いないから良いよ」
マップで確認して目視でも確認して、誰もいないのでマップを目の前に広げた。そして全員で覗き込む。
「うわっ、凄い数だね」
「これは倒し甲斐があるな」
「もしフロアボスだったら一体はボスロックモンキーで、他は全部ロックモンキーだと思う。ロックモンキーは木の上にいることが多いから、さっきのアイスフラワーは使えないよ。どうやって倒す?」
俺達は考えなしに突っ込んでいくのではなく、ちゃんと作戦会議をすることにした。さっきのキラーアントが楽勝とはいかなかったので、気持ちを引き締めたのだ。慢心が重大事故につながるからな。
「とりあえず、ボスロックモンキーは俺が引きつけるぜ」
「では僕がその他のロックモンキーを倒しつつ、前衛として後ろに行かないように牽制します」
「分かった。じゃあ私はミルちゃんの後ろから弓でロックモンキーを狙えば良いね」
「俺もミレイアと一緒にロックモンキーだな」
このフォーメーションならロックモンキーを倒し切る方が早いだろうから、早めに倒してウィリーの援護に行こう。ロックモンキーは木の上を身軽に動くから、近距離武器は相性が悪いのだ。
「じゃあ行こう」
「おうっ」
隊列を作りつつ慎重に魔物の群れに近づいていくと、あと数十メートルのところで気付かれたのか、マップに映る魔物の動きが変わった。多分だけど、数体はボスロックモンキーを守るためにその場に残り、残りのロックモンキーが俺達を襲ってくるのだろう。
これならボスロックモンキーが出てくるまでは、四人でロックモンキーを倒してれば良いかな。
作戦変更を皆に伝えたところで、さっそくロックモンキーが襲いかかってきた。やっぱりロックモンキーの群れだったんだ。ということは、後ろに残ってる数匹の中にボスロックモンキーがいる可能性は高いな。
「皆、着実に一匹ずつ倒していこう!」
「おうっ!」
ロックモンキーは木の上から土魔法で作った石を投げてくるので、それを上手く避けつつ木から落としてウィリーがトドメを刺したり、俺達の魔法や弓で確実に倒していく。ミルは身軽で木にも登れるので、上手く相手の攻撃を避けながら爪でロックモンキーを切り裂いていく。
そうして倒したロックモンキーの数が二桁に上るというときに、森の奥に映っている数体の魔物が動いたのが分かった。
「ウィリー、多分ボスが来るから迎え撃って!」
「了解っ!」
かなりの速度で俺達の下にやって来たのは……やっぱりボスロックモンキーだ。めちゃくちゃ大きい、普通のロックモンキーとは比べ物にならない大きさだった。
普通のロックモンキーが猿なら、ボスはゴリラだな。それもめちゃくちゃ素早くて身軽なゴリラ。事前情報によると爪が鋭くて、魔法よりも物理攻撃をしてくるって話だ。
「うわっ、こいつ力強いぞ」
「ウィリー、倒せなくても良いからこっちに来ないようにお願い! ミレイア、ウィリーを結界で援護してあげて」
「分かった!」
ミレイアの結界にボスの攻撃が阻まれて、ウィリーが体勢を整えたのを確認したところで、俺は他のロックモンキーに視線を戻した。
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