第148話 検証についてと危機
「守護者に関する検証については、こちらからお願いしようと思っていたのです。ご協力してくださるなら、ぜひお願いいたします」
「そうだったのですね。ではよろしくお願いします。ちなみに討伐時にできるだけの検証はしてみたのですが、六層から戻っても五層からまた広場に戻っても、守護者は復活しませんでした。あとは現在どうなっているのかですね」
今の時点でゴーレムが復活してるなら、時間経過で復活する可能性が高まるだろう。あとは……討伐した俺たちがどれほど広場から離れたか、距離の可能性もあるかもしれない。
「階を移動しても復活しないのですね。それが討伐したパーティーだけなのか、他の人たちも同様なのかが気になります」
「確かに……他の人たちにとって守護者がどうなっているのかも知りたいですね」
「ではその辺の検証についても、このあと話し合いをいたしましょう。まずは応接室に向かっていただけますか? ここでは話し合うにも落ち着かないですし」
確かに座るところもないもんな。広い倉庫で声は響いてるし。
「分かりました。ゴーレムは置いておいても良いですか?」
「もちろん構いません。こちらは売られますか?」
「そのつもりです」
「かしこまりました。では買取の手続きも後ほどさせていただきます」
それから皆で冒険者ギルドの応接室に移動して、より詳しい話をすることになった。ゴーレムの特性や倒し方から始まり、六層の様子や戦った魔物について、そして最後は守護者に関する検証についてだ。
「検証には腕に覚えのあるギルド職員が同行する形で良いでしょうか? もちろん私も向かいます」
「ティトーさんも来てくださるのですね。それはありがたいです」
ギルドマスターが来てくれるなら、検証が適当になることはないだろう。結果もしっかりと記録してくれるはずだ。
「日程はいつ頃がよろしいでしょうか。光の桜華の皆様にできる限り合わせますが……」
ティトーさんのその言葉を受けて左右にいるミレイアとウィリーに視線を向けると、二人とも少しだけ悩んでからいつでも大丈夫だと声を揃えた。
『ミルはどう?』
『僕もいつでも大丈夫です!』
『了解。ありがとう』
ミルも問題なさそうだったのでティトーさんにその旨を改めて伝えると、検証要員の選定と準備に数日は掛かるらしく、三日後ということに決まった。
「では三日後の朝にギルドに来れば良いでしょうか?」
「はい。そのようにお願いいたします」
三日後だと微妙な空きが数日できるな……ダンジョンに潜っても良いけど、何日も連続でダンジョン内にいたんだし、ここは休息が良いかな。
まだこの街を見て回ってないし、いつも通り皆で食べ歩きでもしよう。
そんなことを考えながらティトーさんとの話を終えて、冒険者ギルドを後にした。
三日後の朝。俺たちは約束通り冒険者ギルドにやってきた。ギルド内に入ると壁際にティトーさんの姿が見え、その周囲には四人のギルド職員らしき人たちがいる。
「おはようございます」
「あっ、光の桜華の皆さん、おはようございます。本日から数日間、よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします」
初対面である四人の職員とも挨拶をしたら、これからの日程と検証内容について最終確認をして、準備完了だ。
皆でダンジョンに向かおうと、ギルドの出口に向かったその時――
突然、外から凄い勢いでドアが開かれた。そして駆け込んできたのは、荒い息を吐きながら床に倒れ込んだ一人の女性冒険者だ。
「た、助けて……! はぁ、はぁ、はぁ」
女性の悲痛な叫び声がギルド内に響き渡り、まず動いたのはティトーさんだ。
「マリベル! どうしたんだ!?」
「五層の、守護者が……ゴーレムが何故かいなくて、それでグロリアが、六層に行ってみようって。皆で行ったんだけど、途中で急にゴーレムが現れて、六層に逃げた人たちと五層に取り残された数人に分かれちゃって……私は足が一番速いから、助けを呼びに、ここへ……」
息も絶え絶えながらマリベルさんと言うらしい女性がしてくれた説明は、俺たちにも関係があるものだった。
「六層に行った連中は戻ってこられないのか?」
「ゴーレムが五層に戻る人たちのことも、通してくれないみたいで、倒さないと……」
六層から五層に戻るのにも、ゴーレムが復活してたら倒さないといけないってことか。それからゴーレムが時間経過なのか他の条件なのか分からないけど、何かしらで復活するということが分かったな。
「六層の連中はどのぐらい生き残れる? 水や食料はあるのか?」
「水は大丈夫。食料は……二週間ぐらいなら。六層の環境にも、よるけど」
「そうか。それなら今から助けに行けば間に合うな。マリベル、お前は地上で休んでいろ」
「間に合うって……でも、ゴーレムを倒せないと意味ないんだよ!」
悲痛な声音でそう叫んだマリベルさんに、ティトーさんは俺たちのことを示した。
「大丈夫だ。この方たちが守護者を討伐した光の桜華というパーティーだから、ゴーレムは倒せる」
「俺たちに任せとけば大丈夫だぜ」
「あなたの仲間は助けるよ」
「わんっ!」
守護者を討伐したという言葉に呆然と俺たちのことを見上げたマリベルさんは、少しの間だけ事情を飲み込めなかったようだけど、すぐ瞳に涙を浮かべて深く頭を下げた。
「仲間を、仲間を助けてください……! よろしくお願いします!」
「任せておいて。ティトーさん、俺たちだけで向かいましょうか?」
「いえ、ダンジョン内で起きたトラブルを解決するのもギルドの仕事です。予定通り私たちも向かいます」
「分かりました。ではさっそく行きましょう」
それから俺たちは急いでダンジョンの入り口に向かい、予定よりもスピードを上げて五層の広場を目指し足を進めた。
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