第151話 救助と六層以下へ
「な、なぜここに……!」
「ギルドマスター!」
「助けに来てくれたのか!?」
俺たちが六層に足を踏み入れると、暗い雰囲気で力なく座り込んでいた冒険者たちが、一斉に希望を取り戻した様子で立ち上がった。
その中でティトーさんの下に歩いてきたのは、綺麗な赤い髪をポニーテイルにした、カッコいい女性剣士だ。
「ギルドマスター、この度はお手間をとらせてしまって申し訳ない。私の判断ミスでこのような結果に……」
「グロリア、今回は失態だったな。しかしこうして助かったんだ。次から気をつければ良い」
グロリアって、マリベルさんが言ってた名前だ。このクランのトップはこの人なのかな。
「それはもちろんだ。……しかし、なぜここに来ることができたのだろうか。広場にはゴーレムがいて上に戻れなかったのだが」
「それは光の桜華という、この三人の冒険者のおかげだ。ゴーレムの討伐に成功した方たちで、今回も救助に力を貸してくださった。マリベルたちが六層に下りることができたのは、光の桜華の皆様がゴーレムを討伐されたからだ」
その言葉を聞いてグロリアさんは驚きを露わにしたけど、すぐに深く頭を下げた。
「この度は救助の助力を、本当にありがとう。心からの感謝を伝えたい」
「いえ、私たちがゴーレムを討伐してしまったことも原因の一つですから」
「そんなことはない。私が安易に六層へ足を踏み入れてしまった判断ミスだ。まだゴーレムを倒せない身で、足を踏み入れるべきではなかった。……これは聞いても良いのか分からないが、どうやってゴーレムを倒したのだろうか」
グロリアさんのその言葉に、他のクランメンバーも興味津々な様子で俺たちに視線を向ける。
「私たちの倒し方はあまり参考にならないと思うのですが、それでもよければ」
「もちろんだ」
すぐに頷いたグロリアさんとクランメンバーを見て、俺は苦笑を浮かべつつ口を開いた。
「俺たちは、ウィリーの馬鹿力によるゴリ押しでゴーレムを倒しました」
その言葉にほとんどの人たちが頭上にはてなマークを浮かべたのを見て、ウィリーが斧を持って高く掲げる。
「この斧なんだけど、持ってみるか? これで思いっきり足の付け根を叩き割ると胴体が割れて、その中にある球体を壊せば討伐できるぜ」
ウィリーが片手で軽々と差し出した斧にグロリアさんが手を伸ばしたので、俺は慌てて足の上に落とさないようにと注意を促した。
そしてウィリーが手を離すと……斧は、かなりの速度で地面に落ちた。
「は……?」
グロリアさんや、周りの人たちは呆然の表情だ。
「え、そんなに重いんですか?」
「わざとじゃなくて?」
「俺も持ってみていいですか?」
それからクランメンバーが順番に斧を持ち上げ、その重さを正確に理解したところで、斧を軽々と振り回すウィリーには畏怖の視線が向けられた。
「ウィリーは、本当に凄いのだな」
「おうっ。でも俺は光の桜華の中で強い方じゃないぜ? トーゴとミルの方が圧倒的に強いし、ミレイアにもいろんな技術で負けてるからな」
「……そうなのか」
「あんまり参考にならなくてすみません。ウィリーみたいな馬鹿力を持つ人がいない状態で倒すなら、ゴーレムの攻撃を利用するのが良いと思います。ゴーレムが足を振り下ろす時に、その下に土魔法を用いて硬い槍を作るとか」
他の人も倒せるようになった方が俺たちの希少性が下がるかなと思いそんな話をすると、グロリアさんは真剣な表情で頷いた。
「ありがとう。その方向性で戦術を考えてみよう」
それからティトーさんが中心で今後の動きが決められ、マリベルさんたちは全員で地上に戻ることになった。俺たちはこのまま守護者に関する検証だ。
「では光の桜華の皆様、ゴーレムがどのような基準で復活するのかを検証するため、これから下層に向かっていただくので構いませんか?」
「はい。それでお願いします」
本当は五層の広場にギルド職員の方に残ってもらい、このまま俺たちも地上へ戻るはずだった。
でもそれだと広場からの距離が重要なのか、地上へ戻ることが重要なのか分からないので、まずは距離の可能性を確認するため下層方向に、具体的には十層まで向かうことに決めたのだ。
予定では十一層に入ったところで、地上へ戻ることになっている。
「では俺たちはさっそく下に向かいますね。五層の広場での待機、よろしくお願いします」
「はい。そちらはお任せください」
「じゃあ行ってくるな〜」
「行ってきます」
「わん!」
俺たちはクランメンバーにも見送られ、深い森に足を踏み入れた。
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