第150話 ゴーレムの再討伐

 広場に入るとゴーレムの視線がこちらを向いたのが何となく分かり、緊張感が伝わってきた。しかしまだ俺たちがいる場所は入り口付近だからか、ここまで襲ってくることはない。

 やはりあのゴーレムの一番の役割は、階段の死守なんだろうな。


「よしっ、今度こそすぐに倒してやるぞ」

「そうだね。足の付け根狙いで、そこが壊れたらそこから胴体を割ろう」

「了解、俺は魔法に専念するよ。ミルはゴーレムの攻撃をできる限り惹きつけて欲しい。ミレイアは弓で援護をお願い」

「うん。危なかったらバリアも使うね」

「分かった。そこはミレイアの判断で」


 軽く打ち合わせをしたら、さっそく戦闘開始だ。ミルとウィリーがゴーレムに駆けていき、まず跳躍したのはミルだ。ゴーレムの顔部分に飛び付いて、爪での攻撃を喰らわせた。


『うう、やっぱり僕の爪は通りません……』


 ミルからの悲壮感漂う悔しそうな念話が聞こえてきたその瞬間、ゴーレムがミルに向けて水平に腕を振り回す。ミルはその攻撃を上手く避けて、腕の上に乗ったようだ。

 ゴーレムの腕の上を器用に走り回るミルに、ゴーレムは焦れているのか体を鬱陶しそうに動かしている。


 そんなゴーレムに対し、次に攻撃を仕掛けたのはウィリーだ。ウィリーは全力で振り上げた斧を、完璧な狙いで足の付け根に振り下ろす。


 ――ガンッッッッッ!!


 凄い衝撃音が聞こえ、足の付け根部分にヒビが入ったのが分かった。やっぱり相手の攻撃パターンや弱点を知ってると強いな。


 ゴーレムは傷をつけられたことに激怒したのか、ウィリーに攻撃の矛先を変えた。ミルが乗っている振り上げた拳を、凄い速度で垂直に振り下ろす。


「うわっ……っ」

「トルネード!」


 ミレイアの結界はできれば大多数に見せたくはないので、俺がトルネードを使って飛んできた瓦礫を防いだ。


 するとトルネードが消えた次の瞬間、ミレイアが一本の矢を放つ。その矢はゴーレムの足の付け根にほど近い胴体へと飛んでいき……弾かれるだろう、そんな予想とは裏腹に、胴体に矢先が突き刺さった。


「ウィリー! そこに少しのヒビがあるから、次はそこを下方向から狙って!」

「分かった!」


 ヒビが見えていて、攻撃場所を知らせるために矢を放ったのか……本当にミレイアの弓の実力は凄いな。


「おりゃあぁぁぁ!!」


 気合いを入れるためかそう叫びながらウィリーの一撃が繰り出されると、ゴーレムの胴体にはビシッと大きな亀裂が入り、そこからガラガラと崩れていった。

 瓦礫の山の中から球状の物体が転がり出てきて、それを真っ二つに割ったら、ゴーレム討伐は完了だ。


「よしっ、倒せたな」

「もうゴーレムなら問題ないな」

「簡単に倒せるね」

『いずれは僕が一人で倒せるようになりたいです!』


 ミルの宣言に苦笑しつつ頭を撫で、俺は出現していた宝箱の蓋に手を掛けた。開くと中にあったのは……


「棍棒?」

「そうみたいだな。これ、ゴーレムの胴体の素材と同じやつでできてるんじゃないか?」

「本当だね。じゃあ、かなり頑丈なのかな」

「持ってたら使えるかも」


 ウィリーに持たせたら凶悪な武器になりそうだ。斧みたいにピンポイントじゃなくて、広範囲に対して攻撃したいときに使えば良いかもしれない。


「ひ、光の桜華の皆様! もう討伐されたのですか!?」


 俺たちが棍棒を囲んで話をしていると、広場の入り口から声が掛けられた。そうだ、今は宝箱の中身より六層にいる人たちを救出しないと。


「はい! もう倒したので入っても大丈夫だと思います」

「分かりました……」


 ティトーさんたちはかなり警戒しながら、ゆっくりと広場に足を踏み入れた。そして何も起こらないことを確認してから、安心したように体の力を抜く。


「本当に、簡単に倒してしまわれましたね……」

「二回目なので倒し方も分かっていましたからね」

「それにしても、こうまで簡単に倒されるとは……」


 ティトーさんはよほど驚いているのか、瞳を見開いた表情のまま固定されてしまっている。他の職員の皆さんも、クランメンバーの人たちも同様だ。


「とりあえずゴーレム討伐に関することは後回しにして、六層の人たちを救出に行きましょう」


 誰もが呆然としているので苦笑しつつ声をかけると、ハッとしたように皆が階段に視線を向けた。


「そうですね。皆、行くぞ」

「は、はい! 早く助けに……!」


 俺たちを先頭にして皆で階段を下りると……下りてすぐの場所に、たくさんの冒険者が座り込んでいた。この場所から動かないでいてくれたのは朗報だな。




〜あとがき〜

「神に転生した少年がもふもふと異世界を旅します」

コミックス1巻が明日、8/12に発売となります!

ぜひコミックス版のトーゴたちのこともよろしくお願いします!

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