第152話 虫型魔物の巣窟
「とにかく階段だけを目指して、どんどん先に進もう」
ミレイアが両腕を擦りながら言ったその言葉に、俺もすぐに頷いた。ミルとウィリーも同意するように、魔物と戦いながら叫ぶ。
「マジで早く先に行こう……!」
「トーゴ様っ、階段はどちらに……!」
なぜ俺たちがこんなに急いでるのかというと、あまりにも魔物の数が多く、そしてその魔物たちが軒並み気持ち悪い見た目をしているからだ。
「なんでこの森は虫ばっかりで、獣型の魔物もほとんどいないんだっ」
「ウィリーさん、上からビッグスパイダーが来てます!」
「うわっ」
ビッグスパイダーは俺たちの身長よりも大きな蜘蛛で、粘性の高い糸に絡め取られるとかなり厄介だ。
「ファイヤーボール!」
糸は燃やしてしまうのが一番だけど、胴体部分は火に強いという面倒な耐性を持っている。
俺のファイヤーボールで糸が燃え尽きた後に、ミレイアの矢が風を切りながら飛んでいき、ビッグスパイダーの頭部分に突き刺さった。
「ギョエェェェェッッ」
そんな気持ちの悪い叫び声を発し、木の上から地面に落ちてくるビッグスパイダー。長い足がわさわさ動いている様子は、鳥肌必至だ。
「また三匹の魔物が来る! 迂回するにも魔物がいるから、倒した方が早いと思う!」
「分かったぜ……って、今度はファイヤービートルか!」
ファイヤービートルはカブトムシ型の魔物で、大きさはそこまでではないけどかなり硬く、火魔法を操る。
「結界で止めるから、ぶつかったところを倒して!」
「分かったぜっ!」
三匹のファイヤービートルがウィリーに向かって高速で飛んでいる最中、衝撃音を響かせてミレイアの結界にぶつかった。その衝撃でふらついているファイヤービートルを、ウィリーの斧とミルの爪攻撃が襲う。
「ミレイア、ナイス!」
「ウィリーとミルちゃんもね」
「二人とも! また五匹の魔物がいるから、ちょっと左寄りに進んで欲しい」
「分かったぜっ」
それからも俺たちはほぼ休む暇なく魔物と戦い続け、六層から先の地獄の門ダンジョンを攻略していった。
「やっぱり今まで冒険者が入ってなかったから、こんなに魔物が多いんだよね」
「そうだと思う。他の人たちがゴーレムを倒せるようになって、ここにも来れるようになれば変わるんだろうけど」
十層の守護者を倒したら一度地上に戻るから、またここを通らないといけないのが憂鬱だな……十層から二十層までは、一気に進んでクリアを目指そう。
「トーゴ、夜はどうするんだ? 休まないわけにはいかないよな?」
「そうだな……どこか森が途切れてる場所か、洞窟なんかを見つけよう」
「そういう場所じゃないと、安心して寝られないよね」
マップを広範囲にして現在いる七層を確認すると、ここからちょうど階段がある方向に向けて進んだ先に洞窟があるのが分かった。
「ここはどう? 少しだけ階段までの最短距離からは外れてるけど、方向は階段寄りなんだ」
皆にも見えるようにマップを表示して指差すと、覗き込んだ皆は頷いて賛成してくれた。
「ちょうど良いな」
「とりあえず行ってみようか」
「そこまで広くなさそうなところも良いですね」
洞窟があるのはまだ一時間以上歩かないと着けない場所だったので、そこからはまたひたすら魔物を倒して先に進む。
そしてそろそろ疲れてきたな、皆がそう感じ始めた頃、やっと目の前に洞窟が現れた。
「ここだな」
「結構遠かったね。ちょっとした岩山にある洞窟なのかな」
「中に魔物は……うん、十匹以上はいるみたい。全部倒して中を快適な空間にしよう」
「よしっ、俺に任せとけ」
ウィリーはやっと休める場所に到着したということで張り切って、斧を片手に洞窟の中を覗き込んだ。しかし暗くて何も見えなかったのか、すぐに顔を引っ込める。
「トーゴ、魔道雷球か火魔法で中を照らしてくれ」
「了解。じゃあ中まで照らせるように火魔法にするよ」
ファイヤーを洞窟内でいくつか発動させて、中の様子が見えるようにすると……そこにいたのは、蛇だった。十匹以上の蛇がそれぞれ洞窟内を動き回っている。
「うわっ、またこいつらか」
「ウォータースネークだね。何匹いるんだろう」
さっきまでも森の中で散々倒してきた魔物だ。水魔法を使うけどそこまで脅威ではなく、倒すだけなら問題ない。
「じゃあ倒してくる」
「僕もいきます!」
それからウィリーとミルによってウォータースネークは全て討伐され、俺が魔法を駆使して洞窟内を綺麗に洗い流したことで、快適な寝床を確保した。
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