第153話 十層の守護者
しっかりと安心できる場所で眠りにつけたことで体力を回復させた俺たちは、それからも洞窟を寝床にする作戦で問題なくダンジョン探索を進めていった。
七層を超えて八層に入り、九層から十層に下りたところで、すでに六層以下の探索を始めてから四日目に突入していた。
「やっぱり魔物の数が多いから時間が掛かるな」
「そうだね。でもさすがに虫型の魔物にも慣れたかも」
「もう気持ち悪いって感情も湧かなくなったよ。でも数が多すぎてうざったいことには変わりないけど」
「そろそろ違う魔物を倒したいですね」
そんな会話をしつつ、片手間で魔物を討伐できるまでに成長している。虫型の魔物はとにかく数が多かったり死角から襲ってくるのが厄介なだけで、個々の力はあまり強くないので、戦い慣れてしまえば楽なのだ。
「十層の守護者は何の魔物だと思う?」
「そうだな……俺の予想は巨大なスネークだな!」
「確かにあり得そう。でもスパイダーって可能性もありそうじゃない?」
「そうだね。スパイダー、たくさんいるよね」
「僕はフロッグ系の可能性もある気がします!」
「うわぁ、もし沼地に巨大なフロッグがいたりしたら、かなり厄介だな。装備が汚れて最悪だぜ」
そんな会話をしつつひたすら先に進んでいくと、十層の広場に到着した。どんな環境の広場なのか、緊張しながら覗き込むと――
――そこは、五層の広場とほとんど変わらなかった。
「普通に洞窟みたいな広場なんだな」
「本当だね。でも魔物は……あっ」
ミレイアが上を見上げて固まったのでそちらに視線を向けると、そこにいたのは巨大な蜘蛛だった。しかもその蜘蛛、骨で出来ている。
「スケルトンのスパイダー、でしょうか」
「多分そうだよね」
「あれ、どうやって倒すんだ?」
「骨を粉々にするとか?」
スケルトンってかなり厄介だな……魔物図鑑にスケルトンの魔物も少しだけ載っていたけど、明確な倒し方は分からず、とにかく粉々にするとか逃げるべきとか、そんなことしか書かれていなかった。
「色々と試してみるしかないかな」
「そうだね。今日は休んで、明日の朝に万全の状態で挑もうか」
「そうするか」
「では今夜の洞窟を見つけましょう」
それからの俺たちはいつも通り洞窟を見つけ、明日に備えて美味しい食事を堪能し、早めに眠りについた。
次の日の朝。万全の体調で目覚めた俺たちは、朝食をとって少しだけ休んでから広場にやってきた。
「さて、今日はあいつを倒すか」
「そうだね。まずは骨を砕く感じでいく?」
「それしかないよな」
「後はあいつの攻撃パターンも見極めよう」
「分かりました。魔法も使ってみますね!」
皆で軽く打ち合わせをして顔を見合わせてから、一斉に広場内に足を踏み入れた。
俺たちが足を踏み入れた瞬間、スケルトンスパイダーはカタカタカタッという不気味な音を響かせながら、こちらに視線を向けてくる。
目はないんだけど、なぜか視線を感じる気がするな。そんなところも不気味だ。
「よしっ、いくぞ!」
「はいっ!」
気合いを入れるためかウィリーとミルがそう言ってスケルトンスパイダーに駆けて行ったので、俺とミレイアも戦闘準備だ。
ミレイアは弓が効かなそうなので結界を、俺は魔法で遠距離攻撃をする。
「ロックアロー!」
骨には火や雷などはあまり効かないだろうと予想して、物理攻撃となる土魔法で硬い石の矢を放った。するとその矢はスケルトンスパイダーの一本の足に命中したが、バンッッという何かが弾ける音を響かせて、ロックアローの方が砕け散った。
「うわっ、あの骨かなり硬いかも」
「次は僕が!」
ミルの爪による攻撃はキンッという甲高い音を響かせながら一本の骨に傷をつけたが、切断するまでには至らなかったようだ。
「俺もいくぞっ!」
ウィリーは俺たちの攻撃でその硬さを悟ったのか、攻撃しようとしていた場所を変えて、ミルが傷をつけた場所に狙いを定めた。
振り下ろした斧は……おおっ、なんとか骨の切断に成功したらしい。
「よしっ!」
しかしスケルトンスパイダーには痛覚がないのか、一本の足の骨がなくなったぐらいで、全く動揺もしていない。
それどころか予想以上に素早い動きでウィリーの下に近づくと、近距離から雷魔法を放った。
「……っ、結界!」
ミレイアの結界でなんとかダメージは防げたけど、かなりギリギリだった。
「雷魔法が使えるのは厄介だね」
「そうだな……倒し方もよく分からないし。やっぱり全ての骨を切断するしかないのかな」
「まずはそれを試してみるしか……って、え?」
話の途中で、ミレイアが突然スケルトンスパイダーから少し離れた場所を凝視したのでそちらに視線を向けると、まさかの先ほど切断した骨が、カタカタと動いていた。
その骨はどんどん動きを大きくしていき……スケルトンスパイダーに向かってかなりの速度で飛んでいくと、元々あった場所に収まった。切断された部分も、完全に修復されている。
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