神に転生した少年がもふもふと異世界を旅します
蒼井美紗
序章 神界転生編
第1話 神への転生
「新たなる神よ。目を覚ますが良い」
……うん? 今なんか声が聞こえた気がする。
アニメに出てくる神様みたいな声と話し方だったな。昨日の夜、アニメをつけたまま寝ちゃったのかなぁ……
起きてテレビを消した方が良いんだろうけど、とにかく眠い。目を開くのが億劫だ……、このまま二度寝しよう。そして次に目が覚めた時にテレビは消そう。
そう思って幸せな夢の世界に旅立とうとしたところで、また同じ声が聞こえてきた。
「新たなる神よ。早く目を覚まさんか」
今度は呆れたような声音に変わったな。ダメだ、気になって目が覚めてきたよ。せっかく気持ちよく眠ってたのに……
俺は流石にうるさいので一度起きてテレビを消そうと思い、まだ少し重たい瞼を開いた。すると目に飛び込んできた光景は……
いつもの自分の部屋ではなく、天井が見えないほど巨大な建物の中だった。
…………え!? 何ここ!?
俺は一気に覚醒して、慌てて飛び起きて周りを見回す。待って、何ここ、全く身に覚えがないんだけど。あり得ないほど広くて大きな建物の床で寝ていたようだ。
全体的にキラキラと光っていて幻想的な建物だ。というか、天井高すぎない? まじで天井が見えないレベルなんだけど。
どうやって作ってるのかわからないほど巨大なガラス窓は、お洒落なステンドグラスになっているので外の様子は確認できない。
そうして周りを見回していて、ふと気づいた。目の前には巨大な像があるんだけど、今まで置物だと思ってたんだけど…………今、動いた気がする。
やっ、やばい、怖すぎる。確認したいけど怖すぎて確認できない。だって、足首ぐらいまでで俺の身長ほどの、めちゃくちゃ巨大な像なんだ。デカすぎるよ!
でも、もし敵なら、逃げなきゃだよな。いや、そもそも像が動くなんてあり得ないし。というか、マジでここはどこなんだ! 夢なら覚めてくれ!
俺は夢が覚めてくれることを祈って、手で両耳を塞いで体育座りをした。何も聞こえないし何も見えない。
多分今見た風景や聞いた声は全て夢だ。また目を開けたら俺の部屋があるはず。絶対そうだ、そうじゃないと困る。目を開けたら俺の部屋、目の前には本棚がある。そして横にはベッドがあって、青色のカーテンがかかってるはず。下には絨毯が敷いてある。そして最近買ったお気に入りの漫画が机の上にあるはず。
そう自分に言い聞かせて、勇気を出してもう一度目を開いた。そして恐る恐る顔を上げてみると……
…………目の前に、巨大な像の顔があった。
「ぎゃゃぁあああああ!!!!」
俺は恐怖から思いっきり叫んで、転げるように巨大な像から逃げた。いや、逃げようとしたけど腰が抜けて逃げられなかった。
立ち上がれないけど何とか逃げようと足と手をがむしゃらに動かしていると、また最初の声が聞こえた。
「そのように怖がらなくとも良い。なぜ毎回こうも怖がられるのだ。この姿は気に入っているのだが、変えるべきだろうか? この姿が一番楽なのだがな……」
そんな声が聞こえた。声音は少し寂しそうで落ち込んでいる様子だ。
俺はその声で少しだけ冷静になり、こんなに巨大な像から逃げられるはずもないし、どこに逃げれば良いのかもわからないし、とりあえず腹を括って巨大な像と向き合うことにした。
「おお、お主は順応が早いな。酷いやつは我に攻撃をしてくる者もおるのだ。しばらく逃げ続けた奴もいたな」
「あ、あなたは、だ、誰、ですか? ここはどこ、ですか?」
恐怖から思わず声が震えたけど、腰が抜けて座り込んだままだけど、しっかりと巨大な像の顔を見ながらそう問いかけた。
「我は宇宙の根源だ。そしてここは我の島だ」
「宇宙の、根源?」
「そうだ。我が存在していることで宇宙が存在し、宇宙が存在していることで我が存在している。宇宙の意識体とでも言えばわかりやすいか?」
……いや、全く何を言っているのかわからないです。宇宙の根源って何? 宇宙の意識体?
「わかってないな」
「す、すみません」
俺は反射的に土下座をして謝る。すぐに謝罪が出るのは日本人の性だ。
「そのように怯えなくとも良い。我はお主に害をなす存在ではない」
「わ、わかりました」
「お主は地球から選ばれたのだったな。お主は今まで地球で一つの生命体として生きていたはずだ。しかしお主は神に選ばれた。よってこれからは神として生きてもらうことになる」
もう何が何だかわからない。話が急展開すぎるし、訳がわからなすぎる。
本当に何が起こってるんだ? 意味不明の事態すぎて頭が働かなくなってきた。神とか宇宙とか、意味わからないし。そもそも何で俺はこんなところにいるんだ。昨日は普通に自分の部屋で寝たはずなのに。
……うん? 気づいたら知らない場所にいた。これって、最近流行りの小説みたいじゃないか?
もしかして、もしかしてこれって、流行ってた異世界転生ってやつ!?
「もしかして、これって異世界転生ですか!?」
「いや、それとは違うな」
って、違うんかい! じゃあ本当に何これ。
「お主は異世界に転生したのではなくて、神になったのだ」
神になった。さっきからやたらと神が出てくるな。
うん? 待って、神になったって言ったよな。俺が? 俺が神になったってこと? 俺が、神に、なったってこと!? それ本当!?
「お、俺が神になったんですか!?」
「さっきからそう言っている。神の数が減ったとき、お主が今まで生きてきた地球も含めたこの宇宙の星全てから、一つの魂が選ばれる。そして選ばれた魂は神界に呼び寄せられ神となるのだ」
ちょっ、ちょっと一旦整理しよう。とりあえず、今はこの巨大な像の言うことを信じるとする。
そうすると、俺はこの宇宙で神になる魂として選ばれたってことだよな? そしてこれからは神として生きていくってこと? じゃあ、地球の俺は死んだのかな……。元気だったはずなんだけど。
「それでは、地球の俺は死んだのですか?」
「まあ、少し違うがその認識で良い。地球の下界でお主は死んだことになっているだろう」
「そうですか……。確認ですが、地球に戻ることはできないのですか?」
「それは不可能だ。一度肉体から離れた魂は、再度戻ることはできない」
……そっか。ちょっと寂しいけど、でも仕方がないな。実を言うとそこまで日本での生に未練はない。
俺の家族は俺が中学一年の時に事故で皆死んでしまって、俺は親戚の家に住まわせてもらってたから。親戚の皆は優しかったけど、それでも疎外感を感じていた。
唯一の心残りといえば大学ぐらいかな。お金を出してもらうわけにはいかないから必死に勉強して、奨学金を貰える形で大学に合格できたんだ。その合否発表がちょうど昨日のことで、無事合格してお祝いをしてもらったところだった。
大学のキャンパスライフに憧れはあったけど、でもそこまで未練があると言うほどではない。
そうなると、もうこの状況を楽しんだほうが得な気がしてきた。まだ夢かもという可能性は捨てきれないけど、夢ってこんなにリアルじゃないと思うし。これは十中八九、現実だろう。
神になれるなんて、宝くじに当たるよりも余程確率が低いよね。もう幸運だと思ってこの状況を楽しもうかな。
そう考えたら楽しくなってきた。だって神に転生だ。異世界転生も凄いけど、神って凄い!
神って何が出来るんだろう。俺ってこれから何をするんだろう? ワクワクしてきた!
「お主、先ほどまではあんなに怯えていたのに、なぜ急に楽しそうになったのだ?」
「色々と考えたら、神になれるなんて余程の幸運じゃないかと思いまして」
「確かに確率は低い。そう考えればお主は幸運だな」
「そうですよね! あの、神って何をするんですか?」
俺は神としてやることが気になって、少し急かすようにそう聞いた。
〜あとがき〜
読みに来てくださってありがとうございます。
※コミカライズの原作はweb版ではなく書籍版ですのでご了承ください。web版と書籍版ではストーリーが異なります。
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