第157話 再びダンジョンへ
グロリアさんとマリベルさんからお礼の品を受け取った日から、約一週間が経過した。
現在の俺たちの目の前には……広大な砂漠が広がっている。
「やっとここまで来た」
「もう虫のエリアを通りたくないから、今回でクリアしちゃいたいね」
「本当だな……虫はあんまり倒した手応えがないし、好きじゃない」
「かなり倒した感じはしましたけど、数は全然減ってませんでしたよね」
やっと虫から解放されたことで大きく伸びをすると、広大な景色と相まってなんだか気持ちが良い。でもこれからこの砂漠の中に入っていかないといけないんだよな。
「ミル、さっそくカバンに入る?」
「はい! 良いですか?」
「もちろんだよ」
今回のために準備したマチがしっかりとあるカバンを開けると、ミルがぴょんっと飛び込んだ。カバンの中から尻尾を振って見上げてくる小さなミル……可愛い!
「凍ってる果物も入れておくね。溶けたらまた凍らせるし教えて欲しい」
「ありがとうございます!」
「じゃあこれでミルは完璧で、後は俺たちだ。着替えて準備をしよう」
それから皆で砂漠仕様の装備を身につけたところで、準備完了だ。
「さっそく行くか!」
「そうだね」
「暑いからできる限り早く階段に向かおう。ちなみに階段までは……徒歩で二時間ぐらいかな。普通の道路だった場合だけど」
「じゃあ、砂漠ならもっと掛かるか?」
「多分そうなると思う」
砂漠を歩くのがどれほど大変なのか、いまいち分からないのだ。もしかしたら、予想の何倍もの時間が掛かる可能性もある。
魔物との戦闘も砂漠上ってなると、いつもとは勝手が違うだろうし。
「とりあえず経験してみないと分からないよね。トーゴ、近くに魔物はいる?」
「いや、一キロ以内は魔物の反応が二つだけで、どっちも階段とは違う方向だ」
「それなら最初は砂漠に慣れる時間が作れるね」
「確かにそうだな。まあとにかく、行ってみるか!」
ウィリーのその言葉で俺たちは砂漠に降り立つことになり、全員で最後の階段を降りた。砂漠の感触は……サラサラと全く粘り気のない砂なので、あまり踏ん張りが効かないというのが最初の印象だ。
「足が埋まったりはしないけど、これは戦いづらいな」
「力を入れたら滑って転ぶかもね」
「気を付けよう。特にウィリーは前衛だから気をつけて」
「おうっ!」
皆でしばらくは楽しく話をしながら歩いていたけど、すぐに砂漠の辛さに気づく。普通の地面を歩くよりも足を上げて前に出すのに体力を使い、普段の何倍も疲れるのだ。
この中で魔物と戦うのは辛いな。
そんなことを考えていたらフラグになったのか、マップで魔物が近づいてくるのが分かった。
「皆、魔物が来るよ。全部で三匹」
「分かった」
「おうっ!」
「皆さん頑張ってください! 僕もできれば風魔法で頑張ります」
全員で構えていると――俺たちが立っている地面が揺れ、砂漠にヒビが入った。
「下だ!!」
その瞬間に俺は叫び、咄嗟に土魔法で足場を作った。そこに皆で飛び乗った瞬間、地面から巨大なミミズみたいな魔物が飛び出す。
「サンドワームだよ!」
ミレイアの言葉を聞いて、事前に頭に入れておいた砂漠の魔物に関する情報を思い出した。サンドワームは神出鬼没で獲物を丸呑みにするんだ。
ただそれさえ避けられれば、倒すのはそこまで大変じゃない。
「まずは俺がいく! おりゃあぁぁ!」
ウィリーは俺が作った足場を強く蹴ると、斧を振りかぶりながらサンドワームに向かって飛び込んだ。
さっそく戦闘開始だ。
〜あとがき〜
皆様お久しぶりです。こちら連載がずっと止まっていて申し訳ございませんでした。
実は8/30に完結巻となる漫画三巻が発売されました。この物語の最後までコミカライズしていただくことはできなかったのですが、漫画を描いてくださっていた下田先生が最後まで素敵に描いてくださいましたので、お手に取っていただけたら嬉しいです!
下田先生の描かれる漫画はとても優しい雰囲気で、ミルが本当に可愛くて、もう続きを読めないことがとても寂しいですが、3巻分の漫画を何回も読み返そうと思っています。皆様もぜひ!
そしてweb版ですが、凄く中途半端なところで止めてしまっていたので、少しずつ更新して完結、もしくはキリが良いところまではなんとか書きたいなと思っています。
不定期更新となると思いますが、気が向いた時にでも覗きに来ていただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします!
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