第63話 戦力増強

 大師寺中級ダンジョンの第11階層からは和風のモンスターが出始める。

 今目の前にいるのは一目に一本足。唐傘のボディ。そう唐傘お化けだ。


 ばふん。バラバラバラ。


 傘の部分が開いて回転しながら襲ってくる。うん。綺麗なお姉さんの足ならいいんだけど、毛むくじゃらのおっさんの足が迫ってくるのは勘弁して欲しい。しかも何の嫌がらせか、おっさん足の唐傘お化けは褌のようなモノがヒラヒラしている。なおお姉さん足の唐傘お化けは白いパンツを履いていた。


「わんお!」


 疾風が槍で唐傘お化けの足の向こう脛を思いっ切りぶん殴る。


「ぎゃあ!」


 唐傘お化け、思いっきり涙目である。ここ中級ダンジョンの下層だよね?露骨に弱点晒していいの?


「にゃ!」


 チビが盾で唐傘お化けの向こう脛を叩くと唐傘お化けは悲鳴をあげる。うむ・・・ボーナスステージでは?


「でぇえい!」


 紅桃が手を組んでオルテガハンマー(両手を握って頭の上から振り下ろす)でとどめを差す。


 ボフン


 唐傘お化けは魔石と傘のような槍を落とす。

 懐かしいな。雨の上がった日によく傘を使ってのチャンバラをしたっけ・・・開拓者希望のお子様あるあるだ。もっとも中級ダンジョン下層でドロップするようなレベルの武器ではない。


「ガァ!」


 不意に上空から声がする。


「そっち行ったぞ!」


 紅桃が叫ぶと、空中をパタパタと羽の生えた子供がこちらを目指して飛んでくるのが見える。

 ペンタントちゃんも羽を持っているが、この生物は体に比べて羽がかなり大きい。あと顔がカラス。

 そうカラス天狗だ。


「ピー!」


 なるべく手加減しながらダメージを与える。


「わんお!」


 疾風が槍でカラス天狗を叩き落とす。

 じたばたと地面を這うカラス天狗をテイムする。

 失敗すれば回復ポーションを振り掛け小さく小突くとテイムを試みる。


『カラス天狗が仲間になりたそうに見ている。』


 もちろんイエスだ。こうやって6人ほどテイムすると第一階層に戻りテイムしたカラス天狗のスキルをチェック。使えそうにないカラス天狗は即座に解放する。

 解放されたカラス天狗はふよふよと空中をさ迷うとふっと消える。

 これは階層適応していないテイムされていないモンスターが階層を追い出したのだ。ただしイレギュラーは除く。

 そして使えそうなスキルを持つ三人のカラス天狗を残す。

 遠視スキル持ちにカイヤ。気配絶ちスキル持ちにオルティー。急所攻撃スキル持ちにマシュルの名前を与える。全員女の子で全員が忍者に転職出来たので忍者にジョブチェンジ。

 そこから取りあえず周回でレベルとジョブレベルを上げる。投擲。刀術。気配察知。急所攻撃。忍び足。隠密。忍者の初級スキルを習得させていく。中級ダンジョンなのでジョブもスキルもレベルがサクサク上がる。


「おらぁ」


「にゃあ!」


 紅桃とチビが敵のヘイトを稼ぎカラス天狗たちが背後から急所を攻撃するので、カラス天狗たちの急所攻撃のスキルレベルがじゃんじゃか上がる。


「そろそろ中級忍者にランクアップかな?」


「ピィ!」


 三人がビシッと手を上げるので第一階層の転職部屋に戻る。どうやら申告通り中級忍者略して中忍にジョブチェンジ出来るようなので全員中忍にする。


「中忍のジョブスキルをひとつ取得して今日はお仕舞い」


 そう言うと再び階層を降りて行く。

 カイヤが影潜り。オルティーが首切り。マシュルが火遁を覚えたのでこの日はこれで切り上げる。

 大師寺中級ダンジョンの開拓者ギルドでテイムした三人をテイムモンスターとして登録。三人いっぺんにテイムモンスターを登録するのは珍しくギルド職員には驚かれた。

 それからギルドのショップでカラス天狗たちの鎖帷子と小手を買い与える。痛い出費だけど必要な出費でもある。

 これで護衛役もなんとかなった。

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