第82話 アメリカに情報が漏れた模様
陸上J隊K田駐屯地に呼び出されたので、ノコノコと出向く。学校の近くなので異次元の扉は使わない。
「ハーイ!初めまして。シャーロッテ・ガーリー・ホームズといいます」
駐屯地に入るなり、迷彩のズボンに巨乳眩しい黒いタンクトップ。金色のショートカットに薄い雀斑。色の濃いのサングラスをかけた年の頃は自分とさして変わらない少女が気さくな態度で声をかけてくる。どなたですか?
「岩国の米軍基地に所属する冒険者・・・おっと日本では開拓者と言うのでしたね」
どうやら自分の同業者のようです・・・ということは、クラン結成で異世界に行ける人数が増えたという最新情報が米国に漏れたということです。
「まぁ貴女の想像の通りよ。これからよろしくねクランマスター」
サングラスを外し小さく頭を下げると、シャーロッテはそのまま開拓者ギルドに入っていった。うん。実に日本語が流暢だ。
「よう。CM」
田中さんが声をかけてくる。
「CM。クランマスターの略ですか?」
「クランマスターは長いからな」
田中さんは笑う。隣りには迷彩服を着たコボルトとカラス天狗がいる。
「ぴぃ」
スルスルと自分の影からカイヤが姿を表す。
「ぴぃ」
「びぃ」
「びぴぃ」
なにやら二言三言、話あうとカイヤは自分の影に戻る。
「なんだ?」
「なにやら情報を交換しましたね?」
「それより、もう会ったか?」
田中さんは話題を変える。
「シャーロッテ・ガーリー・ホームズですか?ついさっき会いましたよ」
じろりと田中さんを睨みつける。
「情報の解禁が早過ぎませんかね?」
「悪いって・・・日米協定の関係でな。で、異世界の情報は今の優先共有なんだよ」
だからといっていきなりの横入りとか・・・まあ今までの6倍。55人も送り込めるとなると調査忰をタカリに来るか?
「米だけ?中とか韓とか横入りしてこない?」
アメリカはね。仕方ない。戦後70年以上、色々とズブズブだしJ隊とも繋がり太い。
でも中、韓は厚かましいだけだ。ちょっかいかけてくると厄介だ。
「今のところない」
「そうですか?なら先に言っておきますけど、アメリカだからってこっちは融通はしませんよ?」
多分J隊のエラい人も自分の有用性は判っているだろう。例えば自分を輸送先に送ればその後の輸送コストは大幅に減るし、異次元の扉に物資を詰め込んでおけば災害被災地での活動展開は迅速に行われる。
そしてアメリカだって気付くだろう。
自分を送り込めば一瞬にして特殊部隊59人と物資を世界中どこにでもデリバリー出来る事を。
恐らく自分の特殊能力はこれ以上広がったりはしないだろう・・・しなければいいなぁ・・・まぁちょっと覚悟はしておこう。あとハニートラップには最大限注意だ。自分はモテない。いいね?
学校が終わり、今日はほんの少しだけ異世界に行く。
今、異世界のJ隊駐屯地の近くに50メートル四方の土地を柵で囲い込みそこで走る草を栽培している。
栽培といっても囲いを作り、ダンジョン産の走る草を放っているだけだ。走る草は、魔石を鋤き込んだ場所に走る草を置いて土に植物育成系のスキルを行使していれば勝手に増えるのだ。
「デュロック召喚」
植物育成系のスキルを持っているこの度目出度くレディオークに進化したデュロックを召喚する。
レディオークに進化してデュロックはますますオークとしての体形からかけ離れてモデルのようになってきている。
「デュロック。お願い」
「御意」
デュロックは一礼すると柵の中に入ってスキルを行使していく。
彼女の足元を走る草がかけていくのはなんだかシュールだ。
「そらよ」
紅桃が持っていた袋の中から魔石を取り出し派手に撒く。
「はっ」
続いてデュロックがトンと地面を叩くと、放射線状に土が盛り上がって魔石を飲み込み沈む。
わちゃわちゃと走る草が耕された土の中に潜り込む。明日の朝になれば一回り小さな走る草二つになって走り出すことになる。ダンジョンって不思議。
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