第81話 屋台を買うぞ。売るものも決めるぞ
インップ村でエルフ布(仮)を手に入れた後ウジナに転移する。
毛利さん尾根さんとはここで一度解散。自分は商業ギルドに向かう。
「ギルドマスターは?」
「あ、クリュウさま。ギルマスは留守です」
いつもの受付嬢に声をかける。
「どうしたの?」
「実は・・・」
受付嬢は一旦言葉を切って話始める。
どうやらギルド主任と反社の繋がりは厄介なほうに進んでいるらしい。
何でも、商業ギルドの会員の中に、ギルドと取り引き後に消息を絶った人間が二桁を超えているという。
チンピラAはその半分に関与していることを自白し即日に市中引き回しのうえ張り付け獄門。チンピラBとCはサドガシマに終身島流し。ギルドの主任は財産没収のうえ市民権剥奪。額に犬の漢字・・・いや漢字はないから犬という模様を刺青されて追放された。
出張中の商業ギルドのギルマスは事件の後始末をした後に責任を取って田舎の商業ギルドに左遷されることが決定しているらしい。まぁ、悪いことしてなくても部下の犯罪にはケジメをつけないとね。
まぁ本人が居ないのなら仕方ない。次はハカタヤに向かう。
「これが魔導コンロ!」
クマのお姉さんが手渡した動力源をコインにしたIHクッキングヒーターに目を大きく開く。判るよ・・・そちらが見せてくれた魔導コンロよりも平らで小さいもんね。
「これはね。専用の鍋でこう使う」
IHクッキングヒーターに薬缶を置き水を入れスイッチを入れる。
やがて薬缶が沸騰したのでスイッチを切る。
「お湯が湧いた」
聞くと、この世界の魔導コンロは火系の魔法を魔導具に刻んだモノで魔法とは違い長時間現象を維持させるけど、現象を維持させる為に消費する魔石の量が半端じゃ無いらしい。
まあスライムは大量にいるので魔石集めの手間がもの凄く面倒なくらい というレベルで収まっているとのこと。それこそ駆け出し冒険者の序盤のクエスト案件である。
「じゃあこのコンロを屋台に取り付けてください」
そう言って屋台の代金金貨5枚を払う。五日もあれば出来るそうなので、まずは汁物を売ってみようと思う。
取りあえず食べられているモノの傾向を探るべく大通りを歩く。
汁物は野菜の煮込んだモノ。魚のすり身を団子にしたモノを塩のスープに浮かべたモノ。スープスパゲティのようなモノもあった。
焼き物は魚や鳥らしき肉。ファングボアという魔物肉の串焼き。ただ調味料が塩だけだった。和風なのに味噌も醤油もない。なので汁物の屋台で買った野菜の煮物に味噌を溶かして飲んで見る。
あぁ美味しい・・・
「嬢ちゃん。買ったモノに何を加えて食べても構わないのだが・・・なんだいそれは?」
屋台のおばちゃんが、興味深い顔をして尋ねてくる。
「うちの故郷にある味噌って調味料だよ」
うん。美味しいね・・・
「どんだけ味変しているんだ・・・」
「うん?食べてみます?」
そう言って味噌を溶いた器を差し出す。
「ふんふん・・・」
おばちゃん、立ち上る味噌の匂いを嗅ぎながら、一口すする。
「あぁ・・・美味しい」
おばちゃんの顔が綻ぶ。
「あぁ、この調味料は数が少しかないんだ。融通出来ないよ?悪いけど」
一応釘を刺しておく。
「なんだい。あんた行商人じゃないのかい?」
を、鋭いね。
「良く判ったね」
「法被は着てるが中の服は違う。装備が冒険者のそれじゃない。なら行商人しかいないだう」
おみそれしました。
「凄いね。その通りだよ。まぁ調味料の好みは土地に拠るからね。保存が効かないものは量を用意しないんだ。売れないと大損だから」
苦笑いを浮かべて説明する。
「ん?保存の効く調味料は持って来ているような言い方だね?」
「あぁ、持って来てるよ」
そう言ってテーブルに砂糖、塩、唐辛子の入った壺を取り出す。
「これは塩と砂糖と辛いの?」
おばちゃん、壺から中身を少量取り出して味を確かめる。
唐辛子・・・まだ伝来してないのか。
「いくらだい?特にこの辛いの」
おばちゃん唐辛子に興味を持ったらしい。
「今回お試しだから銀札2枚でいいよ」
「うん。判った。塩と砂糖を一壺。辛いのを二壺頼むよ。あと味噌をオマケに付けとくれ」
おばちゃん商売人やね・・・
「いいよ。毎度あり」
味噌の入った壺もあわせて商売成立とした。
しかし味噌が売れる確証が得られた。来週は屋台で味噌汁とご飯で露天デビューするぞ!
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