第80話 クラン結成
開拓者ギルドにクラン結成の申込みをする。ダンジョン的な不思議なシステムなはずなのに開拓者ギルドに届け出ないとクランとして認められないのだ。不思議。
なお、田中さん含め10人のJ隊の人と開拓者ギルドのギルド職員2人が初期メンバーとして登録された。開拓者ギルドとしても独自の調査員を潜り込ませるチャンスは逃さないのだろう。
「じゃあ行きますね」
まず異次元の扉を開ける。ついで異世界の扉を開ける。
「行こう」
田中さんが一歩踏み出し、それにJ隊の人が続く。
「おぉ・・・通れる」
感嘆の声が上がる。クランメンバー13人全員が異世界に足を踏み出した瞬間である。
「これで基地建設が捗る」
田中さんがうんうんと頷く。え?拡張するの?
「最低でも60人が全員がテイマーなら300の戦力が展開出来るとなると今の建物ではな」
J隊の本分は専守防衛である。積極的に攻めることはしないが、守ることには長けている。あぁここにいる人達は攻撃にも全振りだったわ・・・
取りあえず電波搭とその宿舎は小規模ながら基地と呼べる程度には拡張するらしい。
ということで一旦日本へ帰還。田中さんたちはスマホを取り出し各々電話をはじめる。
物質の調達やら重機の手配をしているのだろう。
明日までにどれだけ整えられるか・・・
翌日は駐屯地に集合する。既に駐屯地には物資を詰めたコンテナと小型の重機が並んでいた。なぜ小型の重機なのか?これは異次元の扉を通り抜ける幅に制限されるからね。
「じゃあ扉を開いてくれ」
田中さんの声に応えて扉を開く。重機があるのでどんどんコンテナが異次元の扉の中を通り異世界へと運ばれていく。
50人以上もいれば荷物捌きも早い早い。
「よし。取りあえず土嚢を積んで土塁を作るぞ」
「サー!」
どんどんと土が掘られ袋に詰められ土の壁が出来ていく。土嚢が袋ではなくインゴットのように積まれていくのを見るのは壮観です。
何年か前に広島を襲った大雨被害の際の復興でも見られた光景です。自分は覚えていませんが、両親が写真に収めたものを携帯で見せてくれたので知っています。
「インップ村に行きますが、便乗される方はいますか?」
搬入される荷物が全部異世界側に移動したのを確認して声をかける。
「あ、は~い。行きます」
黒色ショートカットの開拓者ギルドの職員である毛利元子さんが手を上げて返事をする。
「あ、自分も行きます!」
角刈りキツネ目のJ隊員である尾根子郎さんも手を上げる。
取りあえず紅桃を召喚し、異世界の扉を経由してインップ村に跳ぶ。
「お、クリュウさま!」
門の前まで移動すると、櫓の上から声がする。
「行商に来ました!」
そう言うと、ギリギリと門が開くので中に入る。
「お久しぶりです」
村長の家にジャムの瓶を携えてご挨拶。広場で露天を開く許可を得る。
あ、緑色の髪のエルフのお嬢さんだ。
「おねぇさんおねぇさん!」
呼ばれて緑色の髪のエルフのお嬢さんがやって来る。
「おねぇさんの風魔法が付与された布、好評でさ。他にあれがあれば引き取るよ!」
カチャカチャと回復ポーション以外のモノを入れたポーション瓶をスペースから取り出しながら声をかける。
「あら?あんな布に価値があるの?」
緑色の髪のエルフのお嬢さんが尋ね返す。
「十分十分。寧ろこっちが貰い過ぎかな?だからこれ、持っていって」
そう言って砂糖の入ったポーション瓶を渡す。
「これは?」
「砂糖だよ。甘い調味料」
通じるかな?蓋を開け中味を少し分ける。
「わぁ甘い!いいの?」
緑色の髪のエルフのお嬢さんがぴょんと跳ねる。
「いいよ。それより・・・」
「持ってくるわぁ」
緑色の髪のエルフのお嬢さんはスキップしながらどこかへ消える。
「ねぇこれなに?」
金髪碧眼のエルフのお姉さんがラムネの入ったポーション瓶を持ち上げる。
「ラムネです。甘くて口の中でシュワシュワして溶けるお菓子。瓶が銀貨10枚。中味は銅貨5枚ですね」
回復ポーションと変わらない?まぁ、ラムネのほうはお店買いだから、原価的にはこちらのほうが高いので・・・
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