第61話異世界がどうかは解らない
J隊の監視体制は早々に緩くなった。
異次元の扉の内に自分が籠もると、こちらの世界から遮断されることが判明したからだ。
いつでもどこでも鍵で異次元の扉を開けて内に籠もれば誰にも手が出せないというのはかなり安全である。
そこで中古の組み立て式のコンテナハウスを注文。J隊の田中さんたちのお手伝いもあって、冷暖房完備の生活空間を作る事が出来た。
清水生成が使えるから上水道が水饅頭がいるから下水施設やゴミ箱が要らない。電気はコインがいざという時は紅桃もいるし、なぜかネットワークも使える。あれ?肉があったら自給自足で引き籠もれるんじゃない?
さて、異世界への扉の鍵を使って見よう。
「ひらけ胡麻!」
異次元への扉の壁に鍵を当てて時計回りに回す。
ガチャリ
扉が開く。
「ほぁ・・・」
扉の外は鬱蒼とした森の中だった。
「召喚。紅桃!チビ!疾風!ペンタントちゃん!」
ぼうっと光で描かれた召還陣が浮かび上がり、順に紅桃。チビ。疾風。ペンタントちゃんがその姿を現す。
「お?見たことない風景だな?」
「異世界らしいよ」
「へぇ~確かに魔素はダンジョンより濃いな!」
紅桃は鼻をヒクヒクさせながら呟く。
「これが異世界なのですか?ごすずん」
「これがネェ」
えぇっと・・・疾風とチビが人語喋ってる!
「え?疾風とチビが・・・喋ってる!?」
思わず声が裏返る。
「おぉ!」
「にゃんと!」
疾風もチビも驚いている。
「これはあれだな。ラノベ的に言うところの共通語がある世界だな」
そう結論付ける。
「しかしこの様子だと、斥候役が必要になるね・・・」
見回す限り広がる木を眺めながら呟く。
ダンジョンなら盗賊スキルで何とか代用が出来るけど、これだけ広いと専門の斥候職がいた方がいいだろう。狩人か、護衛として考えている忍者か・・・
「そうだ。画像を撮らないと・・・」
撮影ドローンを起動し、ネットに繋がない設定にして飛ばす。
「うわぁ見る限り数キロは森の中っぽいね」
撮影ドローンから送られてくる映像を見ながら呟く。
「いずれにしろ今回はここまでだね。戻ろう」
撮影ドローンを回収して異次元への扉をくぐる。
「これが・・・異世界ですか?」
ドローンの映像を見ながらJ隊の田中さんが唸る。
「まだ探索していないので、これが森タイプのダンジョンの可能性もあるのですが・・・」
一応懸念していることを伝える。フィールド型は地下にあっても太陽が照りつけ風が吹き水が流れる事も不思議ではないからだ。
「取りあえず自分は斥候職を見つけて育てることにしました」
「その間の探索は?」
「あ・・・そうですね。検証のため田中さんたちをあちらに送らないといけませんね」
ポンと手をたたく。
取りあえず田中さんたちの詰め所に行き、異次元への扉を開く。
「じゃあ異世界への扉を開きますね」
異次元の壁に鍵を差し込み時計回りに捻り「ひらけ胡麻」と呟く。扉の外はさっき見た鬱蒼とした森の中だった。
「あれ?」
扉をくぐろうと田中さんが一歩前に出ると外には出られなかった。
「もしかして・・・田中さんパーティー申請をお願いします」
「あぁ」
田中さんが空中でなにやら操作する。
『田中陽一さんからパーティー申請をされました』
という天の声が聞こえるのでYesと答える。
「これでどうです?」
声を掛けると、田中さんは異世界の方に入ってくる。
「なるほど。今のところ九竜くんのパーティーのみ侵入が可能ということか・・・」
なんというか、そういう事らしい。で、田中さんのパーティー5人を自分のパーティーに入れて招き入れる。
「召喚。紅桃!チビ!疾風!ペンタントちゃん!デュロック!」
ぼうっと光で描かれた召還陣が浮かび上がり、順に紅桃。チビ。疾風。ペンタントちゃん。デュロックがその姿を現す。
「テイムモンスターはパーティーメンバーとして換算されないようですね」
自分がテイムしたモンスター5人が召喚されるのを確認して頷く。
「おい一ノ瀬。お前のテイムモンスターは召喚出来るか?」
問われてセミロングの女性J衛官が召喚呪文を唱える。
ぼうっと光で描かれた召還陣が浮かび上がり、ウルフが四頭召還される。
「テイマー6人なら1個歩兵小隊が運用出来るということか・・・」
「召集しますか?」
「そうだな・・・召集と仮拠点の設置とテイムスキル集めだな。あと俺もテイマーになるぞ」
「異世界探索にテイムスキルが必須になるとは・・・」
「まあ、異世界探索に広範囲探索能力が必要になるとは思いませんよ」
パーティーで唯一テイムスキルを持っていて残留が確定の一ノ瀬さんが慰めていた。
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