第133話ダンジョンの情報ゲットした

 取りあえず依頼を受けるにあたり黒ケット・シーさんからオベロン王の風貌について尋ねてみる。

 ・・・ナニコレ?黒ケット・シーさんが差し出した肖像画は全部で5枚。どれも顔に面かマスクのようなものを被っており、素顔らしいものが描かれていない。


「ええっと・・・ギャグですか?」


「ギャグとは?」


 黒ケット・シーさんは首を傾げる。


「人を笑わせようとしています?という意味です」


 ギャグの意味が解らないようなので補足する。


「いえ、オベロン王は普段は一般人として生活しておいでです。なので正体がバレないように変装されます」


 厄介だな・・・


「どうやって本人確認をするのです?」


「あぁ、オベロン王はですね。一週間に一度は変装して街に買い物に出ます。それを見つけてください」


 黒ケット・シーさんは笑う。


「なんと・・・それなら自分たちは既に見たかもしれません」


 あの邂逅は、仲間入りフラグかと思ったけど、どうやらイベントフラグだったようだ。


「はぁ?」


 黒ケット・シーさんが首を傾げる。


「えぇっと、先ほど空中を浮遊する南瓜マスクの妖精を見ました」


 暫し訪れる沈黙。運が良ければ今日中に見つかるし運が悪ければあと一週間は見つからないということだ。


「取りあえず見かけたところを中心に探して見ますね」


「はい。お願いします」


 黒ケット・シーさんはにっこりと笑った。



 オベロン王の探索だが、実にあっさりと見つかった。というか、最初に見かけた所に大きく堅そうなフランスパンのようなパンを抱えて日なたぼっこをしていた。


「オベロン、へ、いかですね?」


「海洋生物っぽい呼ばれ方だな・・・いかにもオベロンだ」


 南瓜頭が大仰に答える。


「ギルドからの手紙です。受け取り証にサインをお願いします」


 この人に関わってはいけないと自分のゴーストが囁いているのだ。オベロン王に手紙と受け取り証とボールペンを渡す。


「インクはどこじゃ?」


「尖ったほうを紙の上に置いて文字を書いてもらえれば・・・」


 使い方を教えると、オベロン王は受け取り証にボールペンを走らせる。


「ほう?面白いペンじゃの」


 オベロン王はボールペンを色々な方向から眺める。


「お気に召したようなら献上しますが?」


「うむ。貰っておこう」


 オベロン王は嬉しそうな声を上げボールペンを懐に入れる。うん。機嫌は損なっていない。


「ほれ」


 オベロン王が受け取り証を返してくる。


「また会おうぞ」


 オベロン王は、パンを抱え直して冒険者ギルドに飛んでいく。まぁ、あんまり再会したくないかな?



「さて、この国の産業は・・・」


 オベロン王を見送って辺りを見回す。すると少し先にパン屋を発見。恐らくオベロン王がお忍びでパンを買った店だと推測できる。


「いらっしゃい!」


 店のドアをくぐると出迎えてくれたのは熊頭の獣人のおばさんだ。

 パンの種類は少なく、オベロン王が抱えてんいたフランスパンのような長いパンと楕円形のパンがあるだけだ。


「ここのパン屋のパン何で作ってるの?」


「長いのが小麦で楕円形なのがライ麦だよ」


 え?っと思ったけど多分異世界言語がいい感じに翻訳してくれたんだろと考える。


 フランスパンのようなパンを2本と蜂蜜を持ってカウンターに行く。


「銀板5枚と銀貨5枚だよ」


 案外安いな。城壁内にそれなりの穀物畑でもあるのかな?


「今日この国に来たのですが、意外に食べ物が安いですね」


 いくら城壁内が常春とはいえそう広くはないのを疑問に思ったので聞いてみる。


「あぁ、この国にはオベロン王がダンジョンマスターを務める食料ダンジョンがあるんだよ」


「食料ダンジョン?」


「地下50層からなる食べ物が採れるダンジョンさ」


 熊頭の獣人のおばさんが説明してくれるところによると、街の中心地に立っている塔は、オベロン王の居城でありその地下には食料をドロップするダンジョンがあるらしい。

 第一階層から第十階層までは穀倉地帯。第十一階層から第二十階層までは平原。第二十一階層から第三十階層までは湖。

 第三十一階層から第四十階層までは森。第四十一階層から第五十階層までは山岳という構成らしい。そして出現するモンスターの大半は草食系や昆虫系で、森や山岳で出没する熊や狼といった森でよく遭遇するような肉食系モンスター以外は危険はないという。


「ということは、マカハドマの特産品はそのダンジョンでドロップする何かですか?」


 興味があるので尋ねてみる。


「第三十一階層から第四十階層まである森の木材だね。この木材で製作された家具は最高級品だよ」


 熊頭の獣人のおばさんは笑って教えてくれる。木材ねぇ・・・

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