第134話 入学説明会でのデモンストレーション

「でりゃあ!」


 胸に数字の5が書かれたゼッケンを付けた少年が木刀を振り下ろしながらチビに突っ込んでいく。


「にゃん!」


 チビが持っていた棒で少年を軽くいなす。

 いまやっているのは、来年度、この高校の開拓者科に入学する予定の生徒への稽古です。

 ちなみに疾風とチビ。ペンタントちゃんやカイヤたちも見習い開拓者たちの相手をしています。

 ちなみにダンジョンが出現して復権した稽古のひとつに剣道があります。まぁ、剣道は基本的に対人特化なのでここ5年でダンジョン用に進化したものになっています。まぁ、相手が人間より大きかったり小さかったり、人より早く地を駆けたり空を飛んだりするからね。

 ただ、特殊な相手を想定しているだけあって少々月謝がお高い。なので開拓者を目指す学生さんの中にはウチの学校を選んだ人も少なくないらしい。

 なにしろ自分が在学している間は自分がテイムした色々とタイプの違うモンスターたちと授業の形で稽古が出来るからね。


「ぎゃう!」


 龍神丸が鬱陶しそうに声を上げる。その周りには模造剣を構えた人間が取り囲んで殴りつけている。もっとも、スキルどころか職業にも目覚めていないズブの素人の一撃なのでドラゴンには痛くも痒くもないので、ただ鬱陶しいだけのようです。


「うりゃあ!」


 手に持った模造剣以外は開拓者の装備で身を固めたお兄さんが紅桃に打ちかかる。

 こちらで稽古しているのは学校のOBやOG。または近隣に住む駆け出し開拓者の皆さんです。

 自分は運良くテイムに成功したが、オーガプリンセスは基本的には上級ダンジョン下層の中ボスクラスですから。テイムされているのなら一度は戦ってみたい相手なのです。

 で、今回の学校の入学説明会で出稽古が行われるという情報が開拓者クラブ経由で近隣に流出したらしく、紅桃たちとの模擬戦の為に十人ほどが並んで順番が回ってくるのを待っている。

 こちらは回復魔法が使えるペンタントちゃんがついているので少々手荒い。まぁペンタントちゃんの回復魔法の鍛錬も兼ねているからいいんですがね。


「わふぅん!」


 疾風が刀の先から火の球を出して的に当てる。

 これは、武器に属性を付与することで魔法の発動媒体として使えることのデモンストレーション。しかもブリットアローアローランスランスボールに引き上げるぐらいになる。

 どういうことか?というと、魔法にもレベルがあって、レベル1からレベル5は魔法礫。レベル6からレベル10までは魔法矢といった具合にレベルが上がると威力も性質も変わるのだ。無論、レベル10の魔法礫という使い方も出来る。具体的に言うと数が増えるのだ。

 ただ魔法玉マジックボール級以上を唱えた場合は不明。なぜなら、うちの疾風のジョブは魔法戦士サムライだけど戦士寄りのせいか魔法の覚えは今ひとつで、未だ魔法矢マジックアローしか使えないからね。

 ただ、魔法使いとしての魔法なら判る。最上級は魔法嵐マジックストーム。なら魔法戦士サムライの方がいいじゃんってなるけど、まぁ、属性武器を持ってレベルを上げたとしても、同じレベルの魔法使いの魔法の威力には遠く及ばないんだけどね。


「スイマセン。Qドラ権さん」


 開拓者らしき女の人が声を掛けてくる。


「はい。なんでしょうか?」


「Qドラ権さんの商品を売って貰うことはできますか?」


 女の人は恐る恐る聞いてくる。


「あぁ、すみません。自分まだ未成年なんで、ギルドを通しての売買しかやってないんですよ」


 申しわけなさそうに答える。実際、ギルドを通したほうが便利なのだ。特に所得税とかの申告関係は開拓者ギルドの発行する書類であっという間に済んでしまう。まぁ、異世界に転移出来るようになって収入が増えたので税理士さんを雇うように開拓者ギルドからはアドバイスはされたんだけどね。

 このあと、属性武器の性能が知れ渡って忙しい日々を迎える事になる。

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