第66話 商売するぞ!

「これいくら?」


 緑色の髪のエルフのお嬢さんが回復ポーションを手にとって訪ねてくる。


「瓶が銀貨10枚。中味は銅貨5枚ですね。あ、物々交換でもいいですよ?」


「ふ~ん」


 緑色の髪のエルフのお嬢さんは回復ポーションをレジャーシートに戻すとどこかへ歩いていく。


「これはなに?」


 黄土色のブチ模様があるコボルトが苺ジャムの入った瓶を持ち上げる。


「苺という果物を砂糖で煮たモノです。銀貨一枚かそれに相当する物と交換します」


 試食用の苺ジャムの入った瓶の蓋を開けてスプーンで中身をすくい差し出す。


「あんま~い!」


 尻尾が千切れんばかりに振られる。


「これは?」


 金髪のエルフのお兄さんが声をかけてくる。


「これはマーマレードと言います。柑橘類を砂糖で煮たものですが、皮の苦味が好みを分けますね」


 マーマレードの試食用の瓶を差し出すと金髪エルフのお兄さんはマーマレードを口にする。


「これは鉄じゃないな」


 ナイフを手にとり検分していた銀髪のエルフのお兄さんがつぶやく。


「鉄より固い鋼鉄製ですね」


「へぇ~。この弓とこのナイフと交換出来るかい?」


 銀髪のエルフのお兄さんが背負っていた弓をこちらに見せる。

 見た目は西洋の複合長弓で、こちらの世界では高価かどうかは判らないけど、自分たちの世界ではエルフの長弓として人気が出そうだ。

 まぁ、ダンジョン内では使えないだろうけど・・・


「へぇ。長弓かあ。初めて買い取る品だからおまけ付けるよ」


 そう言って苺のジャムを一瓶付ける。銀髪のエルフのお兄さん大喜びである。


「これでどうかな?」


 先ほどの緑色の髪のエルフのお嬢さんが一枚の布を手にやってくる。大きさは2メートル×2メートル。恐らくは手織りの布。原材料が何か判らないけど、それなりの価値はありそう。


の交換比率は判らないから、最初はいいよ」


 回復ポーションというよりはガラス瓶が欲しかったのだろう。緑色の髪のエルフのお嬢さんは喜んで受け取った。


「この剣が欲しい。いくらだ?」


「お客さんならいくらまで出せるの?」


 ドーベルマンっぽいコボルトが数打ちの剣を手に尋ねてくる。


「そうだな・・・金貨2枚なら出せる」


「そう。ならその値段で売るわ」


 数打ち剣に値段が付いた瞬間である。


「そうか。ならこれで」


 ドーベルマンコボルトは腰に吊った袋から2枚の金色の貨幣を取り出して渡す。

 高価な貨幣というのはどの世界でも考えは同じようで、王冠を被った立派な顎髭を蓄えた男性のバストアップの模様が刻まれていた。


「はい。確かに」


 代わりに数打ち剣を渡すと、目の前にある商品が自分たちの言い値で売ってくれると理解した住人はこぞって売買を始める。

 特に人気があったのは鉄や鉄鋼製の武器だ。

 ファンタジー定番の森の守護者という設定はこちらでも生きていて、大量の木材を消費する製錬はやっていないというのが理由だ。これは鉄製の農耕器具を売れば一儲け出来るのでは?取り敢えず頭の隅に書き留めておく。異世界転生・異世界転移と違いいつでも元の世界に戻れるのは大きい。

 鉄製品の次に売れ筋なのはジャムと小麦粉。ジャムはその甘さから。小麦粉は混じりモノのないのがいいらしい。

 この日の売り上は、金貨5枚。銀貨180枚。銅貨512枚。インップ村の生産物がそれなりの数集まった。

 それで判ったのは、銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚という単位で、街では宿一泊朝食付きで銀貨10枚するそうだ。

 ちなみに黒パン一個が銅貨10枚で白パン一個が銅貨30枚。

 銅貨1枚10円ぐらいかな?となると数打ち剣が1本20万円。宿は一泊で1万円か。数打ち剣・・・街に持ち込んだらいくらぐらいで売れるだろうか?

 歓待してくれるというので一泊することになった。

 お陰で色々知ることが出来た。

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