第65話 第一村人発見?

 それから30分ほど経った。その間、J隊の田中さんに電話で連絡しようとしたけどやはりというか電波はとどかなかった。電波は今のところ異次元の扉の周辺のみのようだ。

 まあその辺は基地が出来るとかすれば追々改善されるだろう。


「主。支道を見つけた」


 カイヤから念話が入る。


「オルティーは偵察を続けて。自分らはカイヤを追う」


 そう言って東へ向かう。

 五分ほど歩くとカイヤがパタパタと飛んでいるのが見える。

 支道は道の南側にあり、人が一人通れそうだ。


「これは・・・」


 道の脇に立て看板があり、なにやら記号が書いてある。

 じっと見つめていると記号が文字であり、どういう意味かが解る。異世界言語様々である。


「インップ村?」


「インップ村だね」


「インップ村・・・」


 自分に追随するように紅桃と疾風もつぶやく。どうやら字を書く習慣がある生物の集落があるようだ。うむ。行ってみるか・・・


 カイヤを先頭にマシュルを上空に配置して支道を進む。

 やがて、粗末な門と柵で周囲を囲った木の建物群が見えてくる。


「止まれ!インップ村に何の用だ」


 門の脇にある櫓から男の声がする。

 見上げると、そこには長弓を構えた優男がいる。第一村人発見!


「旅の行商人だ特産品があるなら見せて欲しいし、買いたいものが有れば売ろう」


 現地人と遭遇したときの口上を述べる。


「ちょっと待て」


 しばらくすると門が少し開き、先ほどの優男が出てくる。門はすぐに閉まった。

 身長は180センチぐらい。金髪碧眼で髪は肩まであり、どちらかというとヒョロリとしている。そして何より目立つのは笹穂状の長い耳。いわゆる日本産のエルフだ。


「インップ村のデュオだ。貴女は?」


「ヒロシマのクリュウと言います。旅の行商人をやっています」


 そう言って袋を経由してスペースから回復ポージョンの入ったガラスの瓶を取り出して渡す。


「あぁマジックバッグ持ちか・・・」


 どうやら自分が軽装だったので行商人と言うのを怪しんでいたらしい。


「なんだ?壺か?」


 ガラス瓶を指で弾きながらつぶやく。


「ガラスという素材で出来た壺に入った回復薬です。綺麗でしょ?」


 そう言って取り出した回復ポージョンを差し出す。


「ガラスというものはもっと濁っているものだが、これは・・・うむ。ポーションが劣化したら蓋を開けなくても判るな」


 うんうんと頷く。なるほど、ガラスがないのではなく不純物を取り除いた製造法が普及していないだけか・・・

 まあ、ガラスの製造には大量の燃料が必要だから森の住人には広がらない文化かもしれない。


「どうです?回復薬に需要は無くてもガラスの容器には需要があるのでは?」


 追加で4本ほど回復ポーションを取り出して渡す。まぁポーション瓶はスキルでいくらでも作れるからね。

 はっ。もしかして、こっちの世界のスライムは小瓶をドロップしないのかな?


「デュオさんなら、このポーションにいくら出します?」


 物価が判らないので取り敢えず聞いてみる。


「そうだな・・・回復に銅貨5枚。瓶に銀貨10枚かな?」


「ちなみにパンはおいくらですか?」


「う~ん。村では物々交換だからな・・・」


 なんと物々交換。まぁ経済活動の規模が小さいと貨幣ってあんまり流通しないのかもしれない。


「外部と交易しないのですか?」


「鉄製品を買うぐらいだな。それでも物々交換がメインだ」


 難敵である。仕方ない。値段はあちらに決めて貰おう・・・


「まぁ入ってくれ」


 デュオさんに案内されてインップ村の門をくぐる。

 村人は・・・エルフとコボルトっぽい。比率は6対4ぐらい。

 村の広場に案内されたので、スペースからレジャーシートを取り出して回復ポージョンや解毒ポーション。あと数打ちの剣やナイフ。皮の防具に保存食とか果物のジャムの瓶詰めやワインのボトルを取り出す。鬼ヶ島ダンジョンで用意して使われなかった物資だ。


「おぉ・・・かなりの大容量のマジックバッグだな・・・」


 驚きの声が上がった。

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