異世界のある日常

第64話 異世界探索の第一歩

 異世界への扉が異世界に通じているらしいと確認が取れたことで、開拓者ギルドと国と九竜家との間で話し合いがもたれた。

 まず、画像の配信は当分クローズドにする。なぜかは判らないけど、異世界でもネットは使えたのだ。これが異世界ではなくフィールドダンジョンではないのか?と疑われている理由でもある。

 まぁ電波が届くのは異次元の扉に届いている電波を拾っている可能性があるんだけどね。

 あと、異世界への扉は使用権をDランドのようにチケット制にするという形になった。

 何かのきっかけで異世界に来れる人数が増えたときもチケット制にすることにする。

 既に決まっています。既に実績もありますとすれば後追いからも文句は出ないだろう。

 なお、チケット料は1ヶ月有効で新卒サラリーマンの月給ほどしたが、集めたドロップや資源は拾得した者の収益とした。

 現状だと、基地建設のために周囲の木を伐採して出る木材だけでもそこそこ高く売れそうだしね。

 そして、現状で自分の異世界探索は、自分が学生である都合上、土日に行うことになった。

 幸いなことに、自分が異次元の扉に移動しても異世界にいるJ隊の人が異世界から弾き出されることはなかったので。


「よお」


 1週間ぶりに再会したJ隊の田中さんは顔に物凄いクマを作っていた。

 そしてその脇には1体の迷彩服を着たコボルトがいる。


「おょ?もしかして田中さんテイマーに?」


「あぁ。異世界を探索するのには手数が必要だと感じてね。急いでスキルオーブを買い占めているよ」


 田中さんは笑う。まぁ今のところ自分以外で異世界に行けるのは開拓者なら五人だ。しかし全員がテイマーなら更に5体づつ30体の部下を連れて行くことが出来る。オークやオーガなら重機並みの労働力として、機動力があれば偵察隊として重宝するだろう。


「じゃあ行きますよ?」


 まず異次元の扉を開けて物質を運び込む。

 今回は異世界(仮)に偵察隊を送り込んで周囲を探索をするのと、探索ための最前基地を作ることだ。

 取りあえず今は太陽発電機と電波塔。それらを管理する建物と現地の細菌調査をするための建設するらしい。

 ちなみにここを拠点とする理由は、三百メートル東に行った所に水源地となる湖があって生水に細菌が混入していないかの調査が出来るのと生活水に困らないからだ。


「よし。じゃあ行ってきますね」


 異次元の扉から必要な物資を運び出した自分たちは水源地から流れ出る川に沿って方位磁石が示す南に向かって出発する。既にJ隊は1チームが北に向かっているそうだ。

 なお、今回は無線機の電波が届く範囲である往復20キロの距離を目標としている。


「カイヤ、オルティー、マシュル。偵察をお願い」


「「「了解!」」」


 三人はパタパタと空を飛んでいく。異世界なので全員と人語で会話が出来るのだ。


「異世界人いますかね?」


 疾風がぶんぶんと十文字槍を振りながら尋ねる。


「阿修羅さまのくれたアイテムの表記に間違いがなければ・・・まあ、疾風と会話が出来る時点で世界が違うと考えていい」


 まぁ単なる憶測でしかないんだけどね。


「異世界人かぁ・・・どんなのだろう?」


 多分大して変わらないと思うよ・・・まぁエルフとかドワーフといったファンタジー世界の住人たちがいるかもしれない・・・いるといいなぁ。



 2時間ほど川に沿って南下したところで先行していたカイヤから念が入る。


「主。主。森が切れて道みたいなものがあるよ」


 カイヤからの報告はある意味興味深いものだ。

 道がある。つまり下草を踏みしめて、それなりの生物が行き来している跡があるということだ。


「解った。そっちに行くよ」


 紅桃と疾風に道があるらしいと告げて足を早める。


「おぉ・・・」


 しばらく歩くと、森を意図的に切り開いて作った正に道というに相応しい空間が姿を表す。


「獣道じゃないね」


 紅桃が地面を触りながらつぶやく。

 確かに獣が歩いただけで出来る道ではなく、馬車が行き来できるぐらいには広い道が東から西へと伸びている。


「なるほど・・・」


 ごそごそと背負っていたリュックからリモコンを取り出し、背後からついてきていたダンジョンドローンを空中高くに飛び上がらせる。

 そしてスマホを取り出して映像を見る。

 ダンジョンドローンは開拓者の上下左右5メートルの範囲にしか移動出来ないので、長距離探索には向かないが、上空から周囲を見渡すことは出来るのだ。


「カイヤは道沿いに東をオルティーは道沿いに西をマシュルはここで待機」


「「「了解!」」」


 再び三人が散らばっていった。

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