第41話 毒のポーション

「マジですか?組織的に防御されたら厄介ですね」


 西洋の甲冑を着た女性が唸る。砦を攻略する場合、攻撃側は3倍の戦力をもってあたるべしという理論からすると戦力差は気になる所だ。


「いま鬼たちは拠点毎に分散しているので、各個に撃破するのが最上です」


 ギルド職員さんが苦笑いする。


「予想される数は?」


「オーガジェネラル1、オーガ16、ホブゴブリン32、職付きゴブリン64、ゴブリン400、スライム・走る草多数」


「ゴブリン職付き64体はちと厄介だな」


 職付きというのはソードとかアーチャーとかマジシャンとか特化型と呼ばれる種でゴブリンの上位種だ。これらの上位がホブゴブリンになる。


「えらく具体的ですね」


「オーガジェネラルの砦ダンジョンは海外にも数例ありますからそこからの推測です」


 なるほど・・・根拠はあるらしい。


「ボスが出張ってくる可能性は?」


 階層型ではないので、ボスの移動を妨げるものはないんだよね。


「トレインしてきたら可能性はないことはないけど・・・まあ大丈夫でしょう」


 トレインというのは、モンスターが人間を追いかけて来る性質を利用して、別の場所まで連れて行く迷惑行為のことだが、少し考えてギルド職員さんは無いだろうと断言する。開拓者が身元バレしているレイド戦でトレインする意味はないからね。


「ただし、ここが安全地帯であることは保証出来ないんだけどね」


 何か怖いこと言い始めたよ!?



 港に上陸してすぐにベースキャンプを設営する。

 といっても港は無人島になる直前まで人が生活していたので手入れは最小限で済んだ。

 早速生産組はポーションの作成や武器、防具の修理準備を始める。


「何か面白いものないかな?」


 ポーションは十分に余裕があるので、辺りを散策することにする。

 ふむふむ・・・薬師的に面白いアイテムが落ちてないかな?

 走る草やスライムを狩りながら、しばらく近辺を探索する。


「ここは・・・元田んぼかな?」


 少し街を外れたところで水路と草原が出現する。

 そしてそこにはダンジョンらしい光景が広がっていた。それは草原一面に咲き誇っている曼珠沙華の花だ。

 季節はまだお盆休み。曼珠沙華の花の時期ではない。つまり咲いているのは曼珠沙華に見えて曼珠沙華ではない・・・ダンジョン曼珠沙華というやつだろう。


「えい」


 曼珠沙華を一本手にとって引っこ抜く。すると曼珠沙華は「ぎい」と鳴いて球根の下に生えている足をばたつかせる。


「モンスターだった・・・」


 素早く腰に吊っていたナイフを球根部分に差し込むと、曼珠沙華のモンスターは球根を残して消える。


「ドロップは球根かぁ・・・」


 曼珠沙華は葬式花、墓花、地獄花という物騒な別名があるように球根にアルカロイド系の毒を含有する植物だ。

 しかし長時間水にさらして毒抜きすれば食べられるし、利尿・除痰作用があるので漢方としても利用されている。


「よし。狩ろう」


 疾風とチビとペンタントちゃんを召喚し、曼珠沙華のモンスターを狩り取るように指示を出す。

 擬態なのか土中に埋まって動かないから、走る草より狩り易い。

 あっという間に五十個近い球根が収穫出来る。

 先ず粉砕10で球根を粉々にして乳鉢に投入。

 清水生成で生成した水とともに攪拌10でまぜまぜ。

 出来上がったポーションを瓶に詰めてポーション鑑定を発動させる。


「曼珠沙華の毒水?」


『わぁお名前からして物騒』


 コメント欄からツッコミが入る。


『え?毒ポーション作ったの?大丈夫?というか毒ポーション作れるの?』


「まぁ毒と薬って表裏一体ですから・・・」


 そう。毒水と鑑定では出てはいるけど、


「曼珠沙華の毒水か・・・使い勝手はあんまりなさそう」


 そうこの毒。鑑定の説明では経口摂取ってなっているのよね・・・体格のいいオーガだと致死量も多そうだし・・・まあ作るけど。

 曼珠沙華の毒水は30本作ることが出来た。

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