第71話技術者ギルドと商業ギルド

 冒険者ギルドをお暇したところで一旦解散し、自分は技術者ギルドに向かう。技術者ギルドは冒険者ギルドの斜向かいにあって、こちらは平屋の木造住宅。ただ、こちらは受付カウンターと受付の人?いやドワーフの人だった。


「すいません。冒険者ギルドから推薦を受けました駆け出し薬師です」


 元気良く受付の要件を言う。


「ほう。冒険者ギルドの職業適性で薬師が出たのかい?」


「はい。あぁ初級の回復ポーションなら作れます」


 スペースから回復草と乳鉢を取り出してドワーフの人の前に置く。

 まずは回復草を粉砕し乳鉢に投入。清水生成で生成した水とスライムの粘液を入れて攪拌スキルで攪拌して整える。


「どぼどぼっと!」


 ポーション瓶に詰めて蓋をする。


「初級回復ポーション!」


 ポーション瓶をすすすっとドワーフの人に差し出す。


「なんだこの瓶は!」


 あ、瓶のほうに食いついた・・・


「ガラスですが何か?」


「ガ・ガラスだと?」


「えぇ・・・ガラスです」


「これをどこで手に入れた?」


 なんだか目が怖い・・・


「商売のネタを喋る訳ないでしょ?」


「薬師だと言っただろう?」


「このガラスの瓶も含めてのポーション作成ですよ?」


 ドワーフさん腕を組んで考え込みます。


「とにかく、薬師として登録してください」


「いや、このガラスのことを言え!」


「あ、ならいいです。ここで登録するの止めます」


 ひょいとポーション瓶を取り返し、ギルドを出る。


「ま、待て!」


 急いで席を立ちこちらに来ようとするので、ちらりと紅桃を見ます。すると紅桃は小さく頷いてドワーフの人の前に立ちます。


「何する気だよ?こっちにはもう用は無いぜ?」


 パキポキと指を鳴らしながら紅桃は立ちふさがる。


「ええい退かんか!ワシはあのガラスを」


 ドワーフの人がそのゴツイ腕で紅桃をどけよう手を伸ばす。


「確か、こうだよな?」


 すっと相手の側面に入り、相手の腕に自分の腕を乗せて下がり、更にもう一方の手を乗せて引き込むように投げる。

 小手返しという技だな。この前、学校で紅桃が戸隠先生にポンポンと投げられた技だ。さすが紅桃。きちんと覚えている。


「あいだだ!」


 腕をキメられたあとひっくり返されたドワーフの人が地面で喘ぐ。


「怖いねぇ~」


 仕方ないので次は商業ギルドを目指す。

 冒険者ギルドと技術者ギルドに向かうようにある建物にコインがこぼれ落ちている金袋を象った看板が掛かっているので、ここが商業ギルドだろう。


「いらっしゃいませ」


 建物に入ると向こうから挨拶される。


「登録は1番から3番。依頼は4番か6番になります」


「あ、はい」


 案内されるように人の居ない1番窓口に並ぶ。


「登録ですね?露天ですか?お店ですか?」


 黒い髪を頭の天辺にお団子に纏めた垂れ目気味の人間のお姉さんがその豊かな胸部装甲を揺らして尋ねてくる。


「露天とお店で別なのですか?」


 思わず聞き直す。


「はい。税金支払いの関係で区別されています。お店だと年間の売上、露天だと売上に関係なく申請日数で支払い額が変わります」


「あぁ、露天規模だと売上どうこう申請させても確認し辛いですね」


「はい。そうですね。あとランクによっても・・・」


 へぇ。商業ギルドにもランクがあるのか・・・って聞いたら、納める金で売って良いものの種類も変わるらしい。

 例えば露天のFランクは銅板5枚で月に10日間。食糧品のみ。

 Еランクは銀板5枚で月に10日間までで、生活品まで。

 Dランクは金貸1枚で月に20日間までで、剣や防具といった生活用品ではない道具まで。

 Сランクは金貨1枚と銀板5枚で1カ月までで売るものに制限はなし。

 Вランクは金貨2枚で半年でAランクは金貨2枚銀板5枚で1年末満の商売が出来る。かなり大雑把だと思うが、少なくともこの街にВランク以上の露天商は居ないらしい。まあ、天候も気にせず毎日露天するような人なら店舗売りにするだろう。

 ちなみにそれ以下はランク外で無料。ただし、無料であっても露天をする際には商業ギルドにチケットを貰いに来る事になるそうだ。

 ここまで聞いて、店売りに関しては尋ねなかった。どう考えても店を構えて商売するつもりが無いからだ。基本、気ままな露天売り。定期的に既存の店に卸すぐらいだろう。

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