第128話 妖精いるの?

 受験シーズンに突入した。ダンジョンの増加が影響してか、来年度からうちの学校も開拓者科なる学部が新設されるそうだ。

 と言っても開拓者適性があれば入学試験の結果に下駄を履かせます程度らしい。

 あと、在校生も1、2年生の有資格者は転科が可能だという。

 まぁ、美術・体育・武道の授業が開拓者育成の授業に代わり1~3年生の合同になるだけらしいけどね。せっかくだから自分も開拓者科に転科することに。ただ、生徒じゃなくて先生待遇らしい。

 これは開拓者ランクがC級に昇格したのが原因らしい。まぁ異世界からの資源持ち込みでギルド内での評価が爆上げしているからね。


「差を付けられちまったな」


 スポーツ刈りで細目でへの字眉の同級生の男の子赤虎隆司せきこりゅうじくんが呟く。


「まぁ私は常に後塵を拝してますが!」


 茶髪ポニーテールのギャル風少女の冬山心ふゆやまこころちゃんが笑う。

 ちなみに彼、彼女も開拓者科に転科するという。

 開拓者科は大学も新学部として設立している大学があるので、二人ともそれを狙っているらしい。

 自分も某大学から声をかけて貰っている。まぁ、異世界の資源を研究資料として色々納めているからね。その辺は考慮してもらえるのだろう。

 まぁ、大学を出なくても、何なら高校中退でも異世界開拓だけでも充分やっていけるだろうけどね。


「そう言えば異世界にお前以外にいくすべは見つからないのか?」


「解んない。最も解った所で行けるのはギルドや国家機関の人間が優先だと思うよ?」


 隆司くんの質問にそう答える。実際そうだし・・・


「そりゃあそうか」


 あっさりと納得する。まぁ、ギルドも国家機関もJ隊駐屯地中にギルドがあるから、秘密裏に自分に接触しよと思えばできるからね。


「ならさあ、異世界の道具とかは融通してもらえるの?」


「いいと思うよ?何が欲しい?」


 心ちゃんが聞いてくるので、スペースから短剣やエルフ布を取り出す。短剣は自分が火属性を付与したものだ。


「ただ、宣伝している訳じゃないから入手経路は秘密でお願いしゃす」


「あ、うん」


 自分のお願いに二人は頷く。結局、火属性の短剣二本がドナドナされていった。



 テイムの中級スキルのひとつが解放された。後詰の予備部隊トリアリイという簡単に言うとパーティーに参加出来るテイムモンスター数の拡張だ。

 レベル2毎に1人増えてMax10で2パーティー分となる。

 取りあえず大ダメージを食らったときなどに予備部隊と入れ替えスイッチをすることで緊急退避出来るというのは継戦能力の面からも大きい。問題は2軍の戦力が育っていないことだろうか?前衛は疾風、チビ、紅桃、龍神丸で十分だが、後衛のペンタントちゃんのような魔法と回復がこなせる火力支援職が欲しいところ。ということで調べ来ました。


「よう来た。うむ。いつもすまんの」


 金髪に少しふくよかな体。片乳を豪快に露出させたこの異世界の女大神ルナ・オルガさんが差し出された「大吟醸土佐鶴」のラベルの付いた一升瓶とスルメを大事そうに抱え込む。


「欲しとるのは回復と魔法を使えるモンスターじゃったの・・・」


 ルナさんは横にあった大福帳みたいな用紙をペラペラと捲る。記憶してないんだ・・・


「神さまを長く続けるなら、適当に忘れることが重要なのよ」


 なんかどこぞの吸血鬼の始祖さんみたいなこと言い出した。まぁ、言いたいことは解るけど・・・


「う~ん。回復魔法はもっとらんが、体力回復液や傷薬を分泌するスキルを持っている蛙人というモンスターがおるな。土魔法と水魔法を得意としておる」


 蛙人・・・以前、呉で会った軍人っぽいヤツだろうか?


「蛙人の油はオイルオブガマといって、打ち身や切り傷に良く効くらしいぞ。まぁ初級回復ポーションのちょっと良いぐらいの効果らしいが」


 う~ん微妙だ。


「両方を求めない場合はどうなります?」


「魔法はういっち。回復はくれりゃく。どちらも妖精族だな」


 妖精!いるのか!?しかも種族として!

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