第46話オーガプリンセス
『オーガプリンセスか。初めて見た』
『こりゃあ、小学校砦への援軍だな』
コメント欄がざわつく。
オーガプリンセスいわゆる鬼姫。オーガのレア種。
180はある身長。見事に鍛えられた筋肉に、たわわな乳。おぉ布越しにもその存在を主張するポッチが、どんだけポッチ、力強いのよ・・・
「こんのぉ!」
ミリタリーアーマーベストのお姉さんが特殊警棒を伸ばしてオーガプリンセスに殴りかかる。
続いてローブのお兄さんお姉さんも杖を翳して魔法を放つ。
「しゃらくせぇ!」
オーガプリンセスは素早く十字を切り腕を伸ばす。
「インドラの指!」
オーガプリンセスの人差し指から雷撃がほと走りローブのお兄さんを貫く。
ローブのお兄さんは二度三度身体を震わせて消える。これもまたー撃。
「うおぉ!」
ミリタリーアーマーベストのお姉さんが叫びながら特殊警棒を再び振り下ろすが、オーガプリンセスは腕で受け止めて反対の腕でリバーブローを放つ。
人間がリバーブロー喰らって三メートルぐらい宙に浮くってどうよ・・・
「ひいぃ!」
ローブのお姉さんがくるりと背を向けて走って逃げだす。
「逃がすかよ!」
オーガプリンセスは素早く十字を切り腕を伸ばす。
「インドラの指!」
オーガプリンセスの人差し指から雷撃がほと走りローブのお姉さんの延髄を貫く。命中精度がヤバいな。筋肉キャラじゃないぞ?
「疾風、チビ。回避を中心に立ち回って!ペンタントちゃんは魔法で攻撃!」
わんぉ、にゃぁ、はいと返事が返ってくる。
「てい!」
曼珠沙華で生成した毒をオーガプリンセスの顔面に向かって投げる。投げる。投げる。
経口摂取の毒なので、ポーション瓶が顔面で割れて偶然摂取してくれればという願いを込めて投擲する。
「くそっ顔ばかり狙いやがって!」
オーガプリンセスが忌々し気に叫ぶ。レア種なだけあって人の言葉がしゃべれるらしい。
「格上相手に手段とか選べないし!」
「ははっ!ちげぇねぇや!!げふっ!」
大口開けて笑っているオーガプリンセスの口目掛けて毒ポーションを投げると、見事に命中。瓶が割れて中味が大量に口の中に入る。
「うげぇ~」
オーガプリンセスの口からキラキラモザイク案件のものが吐き出される・・・曼珠沙華はリコリンというアルカロイド系の毒を含んで居る。
嘔吐や下痢。酷くなると痙攣や呼吸困難などの中毒症状を引き起こす。
毒はポーションにする際に濃縮しているので少量でも効き目はバッチリである。
「あがが。うぇ、おぇえ」
モンスターとはいえ女の子が出してはいけない音を出しながらのたうつオーガプリンセス。
疾風が槍でツンツンしている。
「テイム出来るかな?」
「多分可能です」
ペンタントちゃんが苦笑いしながら肯定してくれる。レベル差があっても、瀕死状態にまで追い込めばテイムする確率は高くなるのだ。
「テイム!」
毒消しポーションと回復ポーションを手に、オーガプリンセスにテイムを掛ける。
『上手くいくかね?』
『上手く行けば大幅な戦力アップになるね』
イレギュラーがすっかりワンサイドゲームとなってコメント欄が一気に弛緩する。
『雷撃魔法が使える第四段階の拳士か・・・親密度を上げるのが大変そう』
親密度・・・オーガだと親密度を上げるにはお酒だ。薬師には裏技があって、安いカップ酒でもスキルで濃縮してアルコール度数が高い酒が造れる。まあ、表向きには消毒用アルコールになるんだけどね。
で、オーガはアルコール度数の高いお酒が大好き。しかも薬師の濃縮するアルコールは蒸留する酒とは違い味や風味が飛ばないのだ。
なので酒造メーカーに就職する薬師もいたりする。まあ、薬師としてソロで活躍する方が遥かに儲かるので極少数だが・・・
「テイム!」
『オーガプリンセスが仲間になりたそうに見ている。』
何十回にして、オーガプリンセスの態度が軟化した。もちろんイエス!
「我が主に忠誠を」
げぇげぇえずきながらも片膝をついて頭を下げるオーガプリンセス。
「紅に桃で
そう言って二本のポーション瓶を紅桃に渡す。
「有り難き幸せ!」
紅桃は即座にポーション瓶を飲み干す。
「少しスペースで休んでなさい」
そう告げて紅桃を送還する。これで前衛3人が揃ったことになるのであった。
まあ、その前にモンスターテイムのレベルを10まで上げて、5体同時召還体制にしないといけないんだけどね。
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