第45話冷やしポーション始めました

[冷やしポーション始めました]


 シーツと物干し竿で即席で作った幟を立てかけ小学校砦の近くにポーション置き場を設置する。


『冷やし中華みたいなノリだな』


 コメント欄からツッコミが入る。


「戦闘には参加しないのです。このぐらいのお遊びは許して下さいよ」


『まぁ言いたい事は判る』


『Qドラ権に攻略は期待してないから別に良いけどね』


 なんというありがたいお言葉・・・


「おーい」


 声のした方を見ると、砦からポーションを切らせて撤退を選んだパーティーがやってくる。


「ポーション20個くれ」


 金属の部分鎧を身にまとったおじさんが声をかけてくる。


「はい」


 手提げ袋に回復ポーションを詰め込んでおじさんに渡す。


「おぉ本当に冷えてる」


 ネタをでポーションを冷やしていたのだが、お盆を迎えても衰えない暑さも相まって意外にも好評である。効能とかが変わる訳じゃないのにね。


「いや~回復ポーションの出前助かるよ」


 ミリタリーアーマーベストに身を包んだショートボブのお姉さんがニッコリ笑ってお礼を言う。


「いえ、これが仕事なんで・・・」


 最前線で戦っている人たちに比べれば自分らはモンスターが襲って来ない分楽なもの。


「でも、ここから第三砦までの往復時間が短縮されるんだ。その分こちらも稼げる」


 攻略組は基本+ドロップが収入になるそうだ。なのでポーション補給の為に往復する時間が短縮出来る分、収入も増えると・・・


「ぐぎゃぎゃぎゃ!」


 不意にゴブリンの鳴き声が響いてくる。


「敵襲!?疾風、チビ、ペンタントちゃん周囲警戒!」


 鳴き声と同時にテイムモンスターに指示を飛ばす。


「説明じゃあモンスターは襲って来ないハズなんだけど!?」


 注意深く当たりを見回す。


「おいなんだ今の叫び声は?」


 金属の部分鎧のおじさんとミリタリーアーマーベストのお姉さん、そしてローブを着たお兄さんと、お姉さんが周囲を警戒しながらこちらにやってくる。


「砦攻略中にはモンスターが湧かないって聞いたんですけど?」


「可能性はあるぞ。イレギュラーか越境モンスターだ」


 金属の部分鎧のおじさんが解説する。イレギュラーはその名の通り偶発な発生。

 越境モンスターはフィールドタイプダンジョンで発生する、他のフィールドモンスターがエリアを越えて襲撃してくる現象のことだ。

 なお、階層型のダンジョンでもこの現象は発生するが、その場合はスタンピードと呼ばれる大規模なモンスターの氾濫となることが多い。


『ー年で3回もイレギュラー級を引き当てた人がいると聞いてやってきました!』


『失礼な!半年で3回だぞ!』


『本年度のナンバー1トラブルメーカー』


『いや、本年度要らんやろ』


 コメント欄が酷いことになってるが、間違っていないのが悲しい。


「イレギュラーならゴブリンだけじゃない。その上位種もいるぞ」


 金属の部分鎧のおじさんがロングソードを構えながら辺りを見回す。


「ぐぎゃ」


 緑黄色の肌の中学生ぐらいの背の高さ醜い顔の生物が姿を表す。


「ホブゴブリン?」


 ミリタリーアーマーベストのお姉さんが警告を発する。もし先兵なら、更なる上位種が出る可能性があるからだ。


「ぐるるる」


 明らかに野太い声が響いてくる。


「ホブゴブリンが先兵かよ!ファイアボール!!」


 ローブのお兄さんがホブゴブリンに杖を翳す。杖の先から火の球が発生して飛んでいく。ファイアボールだ。


「ぐぎゃ!」


 顔面に直撃されて手持った棍棒を振り回しながら悲鳴を上げるホブゴブリン。


「アイスボール!」


 ローブを着たお姉さんがすかさず杖を翳すと、杖の先から水の球が出てホブゴブリンの顔面に直撃する。

 鼻と口に水が入りえずくホブゴブリン。


「おらぁ!」


 金属の部分鎧のおじさんがロングソードを振り下ろし、ホブゴブリンの首を刎ねる。一瞬にして黒い塵と化して魔石になるホブゴブリン。


「よし」


 ニカッと笑ってサムズアップする金属の部分鎧のおじさん。


「はっ!」


 鋭い呼吸音と共に金属の部分鎧のおじさんが吹っ飛ぶ。

 二度、三度と地面でバウンドすると金属の部分鎧のおじさんの身体が光に包まれて消える。

 と言うことは、金属の部分鎧のおじさん一発で死亡判定を喰らって「身代わりの護符」が発動。ダンジョンから排除されたということだ。


「え?」


 金属の部分鎧のおじさんがいた場所に桃色の髪にピンク色の肌。虎柄ビキニにニ本の角の大女がクキクキと首を鳴らしながら現れた。

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