第114話 年の始めの~

 テイムしたモンスターが何を食べるのか?疑問に思った方もいるだろう。

 正解は、人間の食べるものなら何でも食べるし、飲む。ただし、食べなくてもいい。モンスターたちは魔素が吸収できればそれだけで生きて行けるのた。なので、極端に言うと魔素が溢れるダンジョンに連れて行けば食事を与える必要はないのだが、彼らは人間の食べる物を欲しがる。例えばゴボルトの疾風は骨付きの鳥肉がケット・シーのチビはアジの刺身が大好物だし、オーガプリンセスである紅桃は酒全般が大好きだ。なので一週間に一度はそれら大好物な物を与えるようにしている。

 で、だ。今回テイムしたスモールドラゴンの龍神丸だが、今までのテイムモンスターの傾向から雷属性を付与した魔石を与えているのだが、同時にワイルドボアのモモ肉を与えている。

 今のところこれが大好物なようで、親密度を上げる意味もあって頻繁に与えている。無論、ワイルドボアは異世界産なので、今日は異世界駐屯地の周辺で狩リだ。


「ぶもー!」


 体高1メートル近いワイルドボアが物凄い勢いで走っている。木という障害物も何のそのである。


「せい!」


 紅桃が一抱えある岩を投擲する。


 ドゴン


 岩の直撃を受けてよろけるワイルドボア。あれでまだ動けるのか!


 ギャ!


 よろけた先に龍神丸が待ち受ける。


 ぶん


 なぎ払った尻尾がワイルドボアを直撃する。

 ずしんとワイルドボアが倒れて動かなくなる。


「よし回収!」


 疾風とチビが駆け寄ってワイルドボアを担いでこちらにやってくるので異世界への扉を開き、そこに入れる。


 バチッ


 電気のようなものがワイルドボアに走り、ボトボトと床に小さな虫が落ちる。

 ワイルドボアに寄生していた病原体を保有したダニだ。

 どうやら異次元への扉にはこういったダニや病原体を絶対殺す機能が搭載されているらしく、地球から異世界、異世界から地球への病原体、病原菌の類は排除されるようだ。まぁコンテナハウスに放置されていた捨て忘れた食べ物がカビることも腐る様子も見せなかったことから推測し、腐りかけた生肉がいつまでも変化しなかったから得られたことなんだけどね。

 異次元の扉を経由して泉に運ぶ。


「仕留めました!」


「おう!そこに置いてくれ」


 J隊の九十九志郎つくもしろうさんに声をかける。彼は猟師の家系らしく獣の解体はお手のもので、隊員が狩ってきたモンスターを綺麗に解体してくれるのだ。


「肉だけでいいんでよろしくお願いします」


 そう言ってる横でチビと疾風はワイルドボアを木に吊す。チビが魔法で穴を掘り疾風がワイルドボアの首をかっ切り血抜きをする。あとは九十九さんの出番だ。


「あとよろしくです」


 挨拶して森に戻る。既に三体のワイルドボアが積み上がっていたのでそれから三回往復したのであった。



 年が明けた。流石に両親も自宅に帰ってきており、久しぶりの一家団欒である。

 まぁ、母親は疾風とチビに構っていて忙しいし、父親は紅桃と酒を飲んでご機嫌だった。

 なお、年始の特別な金銭授受はなかった。代わりにオーガキングの牙を使った刺突剣を貰った。材料はいま詰めている研究所にそこそこあるのだそうだ。オーガ素材の武器や防具を作っているんだっけ?


「試作品?」


「牙に柄を装着しただけの武器」


 なるほど、極めてオーソドックスな造りの武器だ。それを試作品とか聞かれても困るだろう。


「ありがとう」


 それだけ言った。


 三が日が過ぎて両親は再び出張先に戻った。頑張ってください。

 こちらも駐屯地に顔を出す。


「あけましておめでとうございます」


「おめでとう。今年もよろしく」


 田中さん以下クランメンバーともご挨拶して異世界に・・・そして、異世界でも正月を祝うという習慣があるのはちょっとびっくり。というか、冬至から10日間ほどは公式的には休みらしい。

 屋台とギルドはそうでもないらしい。ご苦労さまです。

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