第20話 8月6日に備えて

 横川アナの取得したアナウンサーというジョブだが、二つ目のスキルである批判という戦闘中に発動させることで敵の士気の降下スキルだったことで、敵、味方の能力に影響を与えるジョブの可能性が出てきた。

 似たようなジョブに吟遊詩人というものがあるけど、吟遊詩人は味方へのバフだけなので、アナウンサーというジョブがレベルが低いうちから相手のステータスに影響を与えるスキルが使えるというのは便利だ。


「前衛2体と後衛に回復1体が当面の目標ですね」


「それで中級中層なら無理なく小遣い稼ぎできます」


 自分の言葉にぷにっとさんが被せるように頷く。


「テイムはレベル6もあれば大丈夫ですし、テイムモンスターも運が良ければテイマーの集いで手に入りますからね」


 まあ回復職は適性の高いモンスターをテイムして育てる方が早いんだけどね・・・


 その後、サクサクとレベルを上げて、テイマースキルのスペースを取得させて本日のダンジョンアタックは終了となる。

 ちなみにチビは基礎レベルを10に聖戦士をレベル5にした上で棍棒術、回復ヒールを習得したのであった。



「ん?心からDM?」


 八月に入ってすぐ。クラスメートの冬山心ふゆやまこころちゃんからDMが着た。


「何々?8月6日にダンジョンアタックしないかって?」


 8月6日は広島は原爆と平和祈念の日で、市内は祈りに包まれるが、同時に原爆ドームダンジョンと呼ばれるダンジョンで大幅な弱体化が起こる。無論、長崎の平和祈念像ダンジョンも大幅な弱体化が起きる。このダンジョンの弱体化は8月9日まで続く。

 なので大勢の開拓者が日本全国ばかりか世界中からも集まってきて広島と長崎はお祭り騒ぎになる。

 ただ、この弱体期にこの二つのダンジョンを掃除しておかないと大変なことになる。

 なんと8月15日のお盆の時期に大量のアンデットモンスターが湧き地上を目指して百鬼夜行を敢行するのだ。このため広島と長崎の開拓者は該当するダンジョンに潜ることを推奨される。


「いいよ行こう」


 そう書いて返信すると、速攻でありがとうの返事が返ってくる。取りあえず開拓者ギルドのHPにアクセスし、8月6日に原爆ドームダンジョンに潜るクエストを受諾する。ついでに個人クエストに良さげなものがないか検索する。

 ちなみに原爆ドームダンジョンはアンデットや悪魔系のモンスターがメインである。


「となると、聖系統の道具を買ってこようか」


 外出の支度をして自転車に乗って近所のお寺に出撃。寺務所・・・寺社でいう社務所。お守りや御朱印を取り扱う所・・・でお札を束で購入する。

 開拓者ギルドでも売っている対アンデット・悪魔の特攻道具だ。アンデットや悪魔の身体に貼れば一時的に動きを封じることができる。


「あ、領収書下さい。宛名は九龍で・・・」


 忘れず領収書を貰う。開拓者の経費として落ちるからだ。

 ついでに使えそうな道具を探す・・・お?これは


「あの、これって金剛杵ヴァジュラですよね?」


「あぁ、それは鈷が一本だから金剛杵のなかでも独鈷杵どっこしょと呼ばれる法具ですね」


 職員さんが教えてくれるけど、確かインドでは武器だよね?山伏も護身用に持ち歩いてたし、その昔密教を題材にした漫画でも武器として使っていた。

 全長は30センチ。片手で握りしめると刃の部分が出る。刃に焼き入れをしていないからダガーではなくハンマー系の鈍器扱いになるだろう。お値段は5万。


 これも必要経費と2本購入する。ギルドカードはクレジット機能もあるのでカードで払う。早速、独鈷杵の威力を試してみようと、とある霊園に出現した初級ダンジョンに向かう。



「はい。Qドラ権です。今日は、8月6日に向けて新しく手に入れた独鈷杵とお札の試しをしにとある霊園に来ました。アンデットがダメなリスナーさんは退避!」


 ダンジョンドローンを起動し、配信を始める。


『今日はソロ?』


「はい。まあ、テイムしているモンスターでパーティー組めますから」


『侍と戦士と回復スライム。なら魔法系が欲しいよね』


「そうですね。タンクか魔法使いか迷うところです」


『やはり動物系?』


「まあこればかりはご縁ですね」


 と返す。火系と土系はいるので出来れば水系か風系が来てくれば嬉しい。

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