第19話 スイカの提灯というパペット

「にゃ!」


 チビがメイスを振り上げて突撃する。

 立ちはだかるのはスイカ頭の人形。あれはジャック・オー・ランタンの日本版ともいわれるスイカの提灯と呼ばれるモンスターのパペット。


「にゃ!」


 チビがメイスを振り下ろすが、スイカの提灯は素早くかわす。ゴーレムなのに機敏だ。


「ゴーレムなのに動きが機敏。特殊スキル持ちかもしれません。どうします?テイムしますか?」


 横川アナに判断を任せる。


「ええっと、取りあえずテイムするね」


 まぁ気にいらなければ解放すればいい話だ。


「チビ、疾風!そいつを押えて!」


「わふっ」


「にゃ!」


 疾風とチビがスイカの提灯を押さえつける。


「ええっと、テイム。テイム!」


 横川アナがスイカの提灯に手をかざし叫ぶが変化はない。


「一度回復させます。えいっ!」


 回復ポーションをスイカの提灯にぶつける。


「疾風!手加減してぶん殴る!」


「わふっ!」


 疾風がスキルを発動させて持っていた木刀でスイカの提灯をぶん殴る。


「横川さんもう一度テイムです!」


「あっはい!テイム!・・・おぉハイ!!」


 スイカの提灯がぼんやりと光る。

 ボンと音が鳴り響いてスイカの提灯はぬいぐるみ感増し増しの姿に変化する。


「スキル持ちですか?」


「あぁ持ってる持ってる。早足だよ」


 横川アナが答えてくれる。


「布ゴーレムだとあまり実感出来ないかもしれませんが、石ゴーレム辺りからはかなり有能なスキルですよ」


 笑って説明する。この辺は学習済みである。


「へぇーじぁコイツを育ててみます」


「取りあえずこれをお貸しします」


 そう言ってスペースから大きなトンカチを取り出す。チビ用の予備の武器だ。


「ゴーレムは腕力で殴りつけるのが得意です」


「でも、こいつ頭はデカいけど体は針金みたいだよ?」


 横川アナは懐疑的な顔をします。


「大丈夫です。ゴーレムがハンマーを持ち上げるのに必要なのは筋肉では無いのです。あとテイムモンスターを信じてあげること。これは重要です」


 そう。ゴーレムは他の魔物とは違い魔法的な何かで動いています。生物学的に必要なものはありません。


「あと、早めに名前を付けてあげて下さい。親密度の上がり方に違いが出ます」


「へえ、そうなんだ・・・太郎。ハンマーを受け取れ!」


「マ“!」


 スイカの提灯型のゴーレムがハンマーを受け取りぶんぶんとハンマーを振る。


「おお、マジだ」


「まあ、モノを持ち上げるのに身体の大きさ的なものは必要ですが、それはレベルと進化先に依るでしょう」


「進化、先?」


「普通に進化すると布、木、石、鉄ですが、定期的に・・・そうですね肉とか与えるとミートゴーレム、例えるならフランケンシュタインとか、骨を与えるとボーンゴーレムとかに特殊進化するようです」


 1円玉を与えると鉄じゃなくアルミ。5円玉だと黄銅!10円玉を与えると青銅ゴーレムに成った例もある。多分銀や金を与えると銀ゴーレムや金ゴーレムになるだろうとも予想されている。金ゴーレムは量的に無理か。


「じゃあ、スペース習得まで狩りを続けましょう」


「あいよ!」


 ぷにっとさんが先に進むことを提案する。取りあえず疾風、チビ、太郎の三体?を先頭にダンジョンを進みます。


「かかって来い!」


 ぷにっとさんが挑発を発動させてコブリンのぬいぐるみゴーレムを呼び寄せ、疾風が手加減してぶん殴る。横川アナがテイムを鍛え(当然失敗するのだが)て太郎とチビが交互にモンスターを倒す。今やってるの接待とか寄生とかお姫さまとか言われる探索だが、これはどちらかというとチュートリアルだ。多分。


「あ、テイムのレベルが上がった」


 意外と早くレベルが上がったらしい。まあ、成功しても保有制限に引っかかっての失敗判定だから経験値がいい感じで入っているのだろう。あとでネットに上げておこう。

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