第77話ギルドマスターとのOHANASI
ズリズリとチンピラAを引きずりながら商業ギルドに入る。
「お姉さん。ケリーってヤツ居る?」
顔見知りになったお姉さんに声を掛ける。
「ケリー主任ですか?」
退勤準備をしていたらしいお姉さんが首を傾げる。
「さあ?兎に角、ケリーってのに用があるの・・・」
ちらりとチンピラAに視線を送ると、お姉さんは顔をしかめる。
「少々お待ち下さい」
お姉さんは、面倒くさいみたいな顔を隠すことなく奥に引っ込む。
「大変申し訳ありません。ただいまケリーはギルドマスターと会議中です」
奥から帰ってきたお姉さんは申し訳なさそうに口を開く。
ふ~ん。ギルドマスターとねぇ・・・
「あのさぁ。商業ギルドって・・・簡単に顧客の情報を外に流すの?ってギルドマスターに聞いて貰える?」
チンピラAの顔をカウンターに叩きつけると、お姉さんの顔色が変わる。
「この馬鹿。自分が大金持っているから金を融通しろって恐喝してきたんだよね。不思議よね?普通はこんな小娘がお金を持っているとか思わないよね?」
ガンガンっと紅桃がチンピラAの顔をカウンターに叩きつける。
「でね、自分がお金を持っているってコイツらが知っていたのが、商業ギルドのケリーが情報源だってゲロったんだわ。そうだよね?」
紅桃がガンガンとチンピラAの顔をカウンターに叩きつける。
「はひぃ」
「ほらね」
ニッコリと笑って見せると、お姉さんは慌てて奥に走る。
「ギルドマスターがお会いするそうです」
お姉さんが疲れた顔をして、自分たちを奥に招く。
「マスター。クリュウ様をお連れしました」
「入れ」
中からの返事を待って中に入る。
中には恰幅のいいハゲた老人がいた。
「ギルドマスターを務めておるチッャビンだ」
ハゲ爺さんが自己紹介をする。
「D級商人のクリュウです」
一応、はじめましての挨拶をする。
「あの胡椒を卸して頂いたのがこのようなお嬢さんとは!」
演技とは思えない表情で語りかけてくるチッャビンさん。この人はシロかな?
「話は通っていますか?それとも最初から?」
「いや、話は通っている。うちのケリーが反社に取り引き情報を流して襲わせた・・・で良かったかの?」
チッャビンさんの言葉に頷いてみせる。
「正直言うと信じられんのだが?」
「正直を言うとですね?こっちは、商業ギルドが反社と連んで商人から金と商品を巻き上げてるって疑ってるんですよ」
「何じゃと?」
チッャビンさんの眼光が鋭くなる。
「組織末端が反社と連むのは、まぁある事ですが、主任にまでになった方が片棒を担いでいるとなると・・・ね」
「その情報が正しいと?」
「自分たちは下手人からその証言を得た。だからそちらで情報を売ったヤツを引き渡せといってるんですよ」
こちらの要求を突きつける。
「一方的にこちらを悪者扱いとか話にならんな」
チッャビンさんはやれやれと肩を竦める。
「別に無視しても構いませんよ?まあ、ここでのやり取りが色んな所に噂となって広がるだけですから・・・」
相手がギルドマスターと言っても、商業ギルドが全国組織なら単なる支部長です。権力があるとしても拠点にしている街止まり。なら、この揺さぶりは有効なはずです。何しろ他の地区の商業ギルドのギルドマスターからすれば足を引っ張る絶好のネタですから。
「かあっ!その年で胡椒の取り引きを任されているだけはあるな。いいだろ。キッチリ調べて対応しちゃる」
チッャビンさんは豪快に笑う。
う~ん。すでに犯罪は成されているから、トップは知らなかったでは済まないんだけど。まぁいいか・・・
待ち合わせの時間になったので田中さんたちと合流。情報交換をする。
当然のことだけど商業ギルドのやらかしと胡椒が金貨50枚で売れることのヤバさも報告する。
田中さんは少し考えて胡椒を売ることを断念した。短期で貴重品が持ち込まれた場合の混乱を懸念したからだ。
まぁ間違いなく商業ギルド経由で街の破落戸共に嗅ぎ回される。当分はひっそりとした方がいいと言うことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます