第76話チンピラ確保!

 屋台だけど、結構あれこれ設計して見積もりを出して貰った。お値段なんと金貨5枚。

 ナイフ5本で屋台のお店が持てる・・・魅力的なお話です。ちなみに魔石を燃料にした魔導コンロを入れるスペースを設置していますが、魔導コンロは頼んでいません。地球産の魔導コンロの方が高性能で低燃費なのです。


「ご主人。破落戸のねぐらを特定しました」


 影からぬっとカイヤが顔を出す。

 やはりというか、あのチンピラたちは大したお咎めもなく解放された模様。これは自分たちで処すべき案件だね。


「よし。これからそいつら殴りに行こうか」


「や!」


 テイムモンスターたちが意気揚々と歩き出す。

 カイヤの案内のもと、街の北東に進んで行く。

 街の様子が徐々に寂れ、壊れた箇所の修理も段々と手抜きが目立ってくる。いわゆるスラム街だ。生気のない虚ろな目の老人が壁に寄りかかっている。


「どこの世界も変わらないらしい・・・」


 といっても自分はTVとか創作の描写でしか知らないんだけどね。


 カイヤがある建物を指差す。漆喰が剥がれて所々土塀の中味が露出している長屋だ。

 隣は住人が居ないらしく入口の戸が少し開いている。

 もったいないけど回復ポーションを戸の隙間に流し込み音を立てないようにして開ける。

 予想通り住人は居らず、薄い壁に耳を付けて隣りの音を聞く。


「畜生!エラい目にあったぜ」


「ケリーの野郎・・・明日会ったら絶対に〆める!なにが大金持ちのガキが一人だ。お付きがいるじゃねぇか!」


 大荒れである。まぁ、こっちの情報を流した人の名前は判った。隣りのヤツらをボコってから商業ギルドに乗り込もう。

 紅桃に合図を送ると、紅桃は大きく息を吸い込む。


「ふん!」


 震脚で床を踏み抜き、肩から背中の部分を壁にぶつける。八極挙でいうところの鉄山靠という技かな?


 ボゴン


 壁に大きな穴が開き、隣りの住人が馬鹿面下げてこっちを見ている。


「御用だ!」


 チビと疾風が棒を構えて突撃する。


「なんだお前ら!」


「いや、なんだは無いでしょ。お礼参りだよ」


 自分はゆっくりと隣りの部屋に入る。


「てめえら俺たちが青竜組だって知ってて殴り込みか!」


「いや知らないし知る必要も無いでしょ」


 肩を竦めて見せると、チンピラBの顔が真っ赤になる。


「イキがるんじゃねぇ!」


 チンピラBが殴りかかってくるが、紅桃によって阻まれる。


「イキがる・・・ねぇ」


 紅桃はむんずと片手でチンピラBの頭を掴み持ち上げる。


「恨むならお咎めなしであんたらを解放したお役人を恨みなよ。痛い目に遭わないまま逆恨みとかが一番タチが悪いんだから」


 紅桃はチンピラВの腹にパンチを一発叩き込む。


「げぼらっ」


 チンピラВは口から汚い虹を描きながらビクビクと身体を震わせる。


「さて」


 疾風とチビの方を見ると、チンピラСが疾風とチビによって棒で袋叩きになっていた。


「ふむ。チンピラAはまだ帰っていないのか、それともここには居ないのか?」


 しゃがんでチンピラСを覗き込む。


「ねぇ。あんたらのリーダーはどこ?」


 出来るだけ悪役っぽい口調で尋ねる。こういったことが出来るのも数多あるラノベのお陰です。ラノベ万歳です。


「あ、兄貴はまだ帰って来てない・・・」


 チンピラСは顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら答える。

 帰ってくるのか・・・面倒くさいなぁ。

 ただ、このまま待つのも意味がないので、カイヤを見張りに残して商業ギルドに向かう。

 と、商業ギルドから

 チンピラAが出てくるでなないか!


「紅桃・・・」


「あいよ」


 紅桃はペキポキッと指を鳴らしながら、チンピラAに近づく。


「あぁ?」


 チンピラAが紅桃に気がついたときには逃げも隠れも出来ない距離だった。


「ちいぃ!」


 慌てて逃げようとするが、紅桃がむんずとチンピラAの首根っこを押さえる。


「珍しいところでお会いしますね」


「て、てめぇ!離せ」


「だれが・・・逃がす訳無いでしょ。ケリーって人間に会いに来たのですか?それとも別の人ですか?」


 ニッコリと笑ってチンピラAに詰め寄る。


「し、知らね!」


 はい。意外な人間と繋がってますねこれは・・・

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