第11話 コボルトをゲットしよう

 陸上自衛隊駐屯地ダンジョンはかなり初期の頃に生えたダンジョンです。

 モンスターが武器や防具をドロップするので昔からかなり人気が高い。


「野良パーティーです!回復役を募集中!」


 ギルド掲示板の横で戦士らしい人がホワイトボードを掲げて立っている。他にも魔法使いっぽい人や盗賊っぽい人もホワイトボードを持って立っている。

 ネットのマッチングアプリではなく、直接対面というアナクロな募集をしているのは、初期の頃にマッチングアプリで詐欺案件や空募集といった悪戯案件が多発したから。


「へい彼女!一緒に潜らない?」


「いえ、結構です」


 軽薄っぽい茶髪の男戦士の声をかわしつつ掲示板の素材収集依頼書に目を通す。

 ドロップするのが鉄のナイフでも、数があれば鍛治師は鋳つぶしてショートソードや長剣に打ち直してダンジョンで使える武器に生まれ変わらせるため、ギルドよりは少し高く買うのだ。


「ダンジョン鉄5キロ・・・ナイフ五本だからこれが良さそう・・・」


 スマホでQRコードを読み込み 、常時クエストであることを確認する。


 ダンジョンに降りてテイマーの初期スキルであるハウスから召還で水饅頭を召還する。この召還は、生産職のスキルであるスペースと同じもので、異空間にモンスターを収容出来る空間を作ってそこにいるモンスターを召還するというもの。手荷物の飼育ゲージが手荷物から減るからちょっと便利。



 ダンジョンドローンを起動させ、配信ボタンを押し、視聴者が1になったのを確認する。


「Qドラ権でーす。突発的ですが、防具を新調したので駐屯地ダンジョンに着てます」


 当然だけど反応はない。スマホを操作し、SNS「XYZ」に広島駐屯地ダンジョンに挑戦と投稿しておく。


「グルル」


 第一モンスターが現れた!二足歩行の小学生ぐらいの子供の背丈に犬頭のコボルトと呼ばれるモンスターだ。

 手には棍棒が握られていて、粗末な布の服を着ている。犬種は秋田犬っぽい。


「がう!」


 コボルトが吠えながら棍棒を振りかざす。

 それをショートソードで受け流し、隙を作ると水饅頭が体当たりを敢行する。

 吹っ飛ばされるコボルト。持っていた棍棒が手から離れる。


「よし!」


 棍棒を蹴り飛ばしショートソードの腹でコボルトをペシペシ叩く。

 適度に弱らせテイムを発動。失敗したら回復ポーションで回復させて同じ事を繰り返す。

 テイムを成功させるにはモンスターの心を折るのが良いらしい。死ぬに死ねないと言うのは相当なストレスで心も折れやすいと、テイマーのネットサイトに記載されていたので、瀕死→テイム→回復→瀕死→テイムを繰り返して、テイムが成功するまでトライアンドエラーで試してみる。まあ、この方法はレベルの低い弱いモンスターでしか試せないんですけどね。


『コボルトが仲間になりたそうに見ている。』


 三回目のトライでコボルトが折れたのでテイムする。すかさず鑑定。


 種族コボルト

 名前なし

 性格中立

 職業なし

 性別メス

 レベル1

 体力1/15

 MPO/8

 力8

 頭脳7

 知恵5

 耐久10

 敏捷4

 器用5

 スキル杖術


 棍棒を持っていたからか、この子は初めから杖術持ってる。


「名前は・・・疾風だ!」


「ワン!」


 疾風が元気に挨拶を返す。ちなみにテイムしたモンスターもスキルやステータスがあれば職業部屋で職を得る事が出来る。ボス部屋に行く前に疾風の首にテイムモンスターの目印である赤のスカーフを巻く。

 これでこのダンジョンの第一階層のボスであるソードゴブリンぐらいなら余裕で倒せるだろう。

 蹴り飛ばした棍棒を疾風に渡し、第一階層のボス部屋に向かう。

 途中で遭遇するコボルトやスライムを倒して疾風のレベルを上げる。

 ついでにドロップするナイフや石斧、スリング、棍棒、厚い布服なども拾い集めていく。疾風の装備がどんどん良くなります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る