第131話 おい。止めろ!
ネットショッピングは好評のうちに終了した。初回で100本近い受注に開拓者ギルドからは盛大なお小言を貰ったが、向こうとしても大事な商売相手だと思っているのだろう小言で済んだよ。
しかし100本か・・・せいぜい10本程度だと思ったのだが、人工とはいえ魔剣である。甘かった。ドワーフに話を持ち込むべきだろうか?
因みに自分の仕事は、刃の部分の金属に火属性を付与して柄の部分にある火属性の魔石に繋ぐための線を書くことだ。属性付与した金属と同じ属性の魔石を繋ぐ事で、使う人の魔力が少なくても、その属性の力を引き出すことが出来るという謎仕様。もうね、この辺は考えないことにしました。
あ、違う属性だと全く反応しませんでした。上手く行かないものです。
『お館様お館様。こちらカイヤ』
異次元の扉を抜けた途端念話が入る。お館様呼びするのは、たぶん最近試聴しているネットチャンネルの大河ドラマの影響だろう。異次元の扉の内まではネットが繋がるんだよね。
「はい。聞こえますよ?」
『マカハドマにつきました』
「了解。すぐに向かいます」
意識の中でカイヤのいる場所を感知すると異世界の扉を開く。
ビュー
うぉ寒い!そう言えばマカハドマの場外は常冬でした。
「お館様!」
黒くて丸い毛玉が懐に飛び込んでくる。
「一度戻ろう」
カイヤを回収して異世界の扉をくぐる。そしてダウンのコートを着てマフラーを巻いて再び外に出る。無論、疾風、チビ、紅桃、ペンタントちゃん、カイヤも召喚している。
城壁にある扉のドアノッカーを鳴らすとゆっくりと扉が開く。
「入国希望者か?」
対応に出てきたのは白い熊の獣人だ。
「はい。行商人をやっています」
懐から冒険者ギルドと商業ギルドのタグを取り出し差し出す。
「後ろの五人はパーティーのメンバーですので、入国料は一括して払います」
白い熊の獣人は「ふむ」と頷くとなにやら書類に書き付ける。
「銀貨6枚だ」
「はい」
銀貨六枚を取り出して渡すと、銀色の札六枚と交換される。
「この銀札は入国許可証だ。なお、出国の際には銀貨一枚で引き取るので忘れないように」
なるほど、入国税は実質0ということか。まぁ、銀貨一枚なら通行手形としてそのまま保有してもいいでしょう。
紐を通す穴もあるのでギルドタグを通している紐に通す。
「ようこそ。マカハドマへ」
反対側の扉をくぐって外に出る。
「寒くない?」
外に出て感じたのは今の日本では感じられない(
もっとも、入国する前は真冬のカッコだった自分たちには暑いと感じているんだげど・・・)早春ぐらいの気温だということだ。
「常冬じゃないって言ってましたが、本当だったんですね」
ペンタントちゃんがつぶやく。
「寒くなくて良かったぜ」
紅桃がガハハと笑う。紅桃、寒いのちょっと苦手だもんね・・・
「おっ!あれ妖精かな?」
疾風が顔を向けた先には、体長50センチの揚羽蝶のような羽根を持ち、魔法使い風のロ一ブを着こなした南瓜頭の何か・・・そして南瓜頭の上には魔法使いが被るような三角帽子が載っている。いわゆるジャック・オー・ランタンなスタイルの何かが、手に犬の骸骨を吊り下げた杖を両手にふよふよと漂っている。
「背中に蝶の羽が生えているから多分妖精だと思うけど・・・」
「しかし、なんだあのカッコは?」
紅桃が首を傾げる。
「コスプレってヤツですかね?」
ペンタントちゃんも首を傾げる。
「南瓜を愛する妖精、かな?」
なんかそんな設定のゲームキャラクターがいたなとか思いつつ眺めていると、照る照る坊主みたいな格好の妖精とかも飛んでいるのが見える。
「変な妖精もいるもんだな」
紅桃は呆れたようにいう。
「個性的でいいと思うにゃ」
チビが笑う。まぁ言いたいことは解る。
「にしてもあれは無いよ」
疾風が笑う。おい。止めろ変なフラグを立てるのは!
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