第111話 異世界配信
「はい。Qドラ権です」
SNSで告知した時間通りに配信を始める。
『こんにちは』
『こんこん!』
『待ってました』
コメント欄に即座に反応が返ってくる。
「今日は開拓者ギルドから許可が下りたので異世界探索映像の配信です」
餡餅:『¥5000。ありがたい』
え?何だ?赤字が入ったぞ。
『お、スパチャ解禁か?』
スパチャ?確かに申請はしていたけど?
猫直撃:『¥5000。おぉスパチャ行ける!』
犬迂回:『¥5000。5千円が上限か?』
『新規さんは上限が厳しいよ。税金とかややこしいから』
『へぇ』
「ありがとうございます。じゃあ映像行きますね」
そう言って映像を公開する。まずはインップ村。それからバギーに乗って流れるように風景を映し出してウジナに。
『水堀に土壁・・・中国やヨーロッパのような城塞都市じゃないんだ』
『どちらかというと日本っぽい』
まぁそうよね。
次にウジナの内部映像が流れる。まずは冒険者ギルド。
日本と違うのは獣人がいることだろうか?
『ネコ耳ケモ娘キター!』
コメント欄が大騒ぎである。
「ちなみに僧侶という職業はありますが、日本でいう宗教者ではなく、聖の魔法を使える人間という意味あいが強いです」
そう。この世界での宗教というのは、生まれて来たことを報告したあとは6月と12月、年に2度の挨拶と死者が出たあとに神社であの世に送るという儀式をおこなうだけだ。
そう言った感じの話を冒険者ギルドの酒場で僧兵っぽい人と話ている映像が流れる。その後に王都での巫女さんの「こちらでは神の名を出すことはありませんね。治って欲しい、死霊なら浄化を祈念します」
という話とチビの「信仰?なんですかそれ?」と可愛いらしく首を傾げる映像。何を思って回復スキルとか使っているの?という質問に、
「うん?怪我をしたら、治って下さいってお願いしているよ?」
という台詞が流れる。
時系列は全く違うんだけど、その辺は上手く繋いでいる。
ちなみに巫女さんの片乳ぽろーんは謎の透過光が被さっていた。勘がいいリスナーからはブーイングがあったけど無視した。
次に流れた映像は商業ギルド。
「いらっしゃいませ」
建物に入った所で挨拶される。
「登録は1番から3番。依頼は4番か6番になります」
「あ、はい」
案内されるように人の居ない1番窓口に並ぶ。
「登録ですね?露天ですか?お店ですか?」
黒い髪を頭の天辺にお団子に纏めた垂れ目気味の人間の神無月さんがその豊かな胸部装甲を揺らして尋ねてくる映像が流れる。そりゃあもうリスナー大歓喜。
『屋台か・・・』
「そうそう。店に卸すことも考えだけどさ。ぼったくり価格で転売されてもあれかな?って」
まぁ、自分も雑貨は転売しているのだから大きなことは言えないんだけどね・・・
そのあと屋台を注文をして一膳飯屋と雑貨屋を併せたような店をオープンさせたりした様子を見せる。お店を訪れる獣人や亜人の様子を見せる。そして最後に技術者ギルドを案内。
ガラス瓶に執着を見せるドワーフもまた大いにリスナーをわかせた。
スベスベ饅頭:『これってQドラ権に商品託せば異世界で売って貰えるのかなぁ』
いきなりの提案を受ける。
「屋台で取り扱えるものならなんとか?あと店舗とかはまだ資金とか色々足りないよね」
そう言って笑う。
「まぁうちの配信の古参であるスベスベ饅頭さんの頼みなら1品だけなら引き受けますよ」
スベスベ饅頭:『マジですか?』
うちの古参ってスベスベ饅頭さん。チャボさん。ルナちゃん。タイキックさんぐらいだからね。
スベスベ饅頭:『私、実は京都の和菓子屋やってて・・・』
わぁだからハンドルネームがスベスベ饅頭さんなんだ!
「どうしましょう?あ、スベスベ饅頭さんにDM送れるじゃないですか!じゃあ、ギルドと相談して連絡入れますね!和菓子ならちょっと良いお茶が欲しいな・・・」
このやり取りが後々ちょっとした騒動を引き起こすのだが、それはまだ少し先の話である。
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