第40話 出発!鬼ヶ島!!

「おはようございます」


 自衛隊駐屯地ダンジョン前の開拓者ギルドに到着すると、ボードを持ったギルドの職員さんが小さく頭を下げてきた。


「「おはようございます」」


 自分と茶髪ポニーテールのギャル風少女の冬山心ふゆやまこころちゃんが頭を下げる。レイドの参加者に若干の余裕があったので心ちゃんを誘ったのだ。


「バスはもう来ていますので」


 案内されたのでバスに向かう。小型の観光バスにはすでに人を乗せて待機していた。


「本日はレイド参加誠にありがとうございます」


 座席に座ること10分。先ほどの受付の職員さんがバスに乗り込んで来て頭を下げる。

 座席には受付の職員さんを含めて25人。現地に25人の合計50人プラステイムモンスター20体によるレイド戦。うち10人が生産職がメインで、自分は一応生産職となる。


「スペースって楽よね」


 心ちゃんが笑う。もっとも、大抵の人間は荷物はアイテムバックに入れるだけで十分なんだけどね。

 まぁ、自分はテイマーの中級スキル中級スペース(生体)を取っているから庭付き一軒屋ぐらいの収納力はあるんだけどね。


 自衛隊駐屯地ダンジョンからバスで2時間。尾道港で大量の物資を受け取り・・・自分のスペースには50人を半月は余裕で賄えるだけの食糧、水、酒、調味料を収納させられて、チャーター船に乗り込んだ。


「引っ越し屋さんでも食べて行けるじゃん」


 心ちゃんがケラケラ笑う。実際、物資の入った長さ36メートル高さ22メートルの貨物コンテナがまんま収納出来るとは思わなかったよ。

 これにはギルド職員さんもびっくり。実は、テイマースキルの中級スペースが、自分のテイムしたモンスターとそのテイムしたモンスタ一の所有物を収容するという性質から、コンテナ買ってペンタントちゃんに渡したら、コンテナごと収納出来るんじゃない?って話になって、中古のコンテナなら全然払える金額だったから試しに買ってみたら中身ごと収納出来たんだよね。

 テイムしたモンスタ一に貨物コンテナを与えるテイマーが居なかったから発見されなかった裏ワザなのかもしれないので、現在他の人でもそうなるかは調査はして貰っている。

 一応、現時点では自分一人だけのスキルだったのでギルドにチート能力者として捕捉されてしまったよ。


 チャーター船に乗って1時間ほどで目的の島に到着した。以前は住人が住んでいたけど過疎化して5年前には無人島になってしまった島で、港周りの建物は利用可能。

 水は利用不可能だけど電気は生きている。

 水はスキルで補えるから問題ないし、電気が生きているのは大きい。


「現時点で判明しているのは、鬼の拠点は昔のこの島にあった山の中腹にあった中学校」


 ギルド職員さんがホワイトボードに貼った地図の上の山の中腹に磁石でポンと印しを置く。


「その麓にある昔は小学校があった場所に拠点が一つ」


「そして、そこから幼稚園があった3か所の合計5か所を幼稚園から順番に攻略するのが目標です」


「直接中学校を叩かないのか?」


 西洋の甲冑を着込んだ戦士らしい男性が手を挙げて質問する。


「戦力分散は悪手ですし、全員が直接中学校を攻撃した場合、中学校からと小学校からと挟撃されたときにヤバいですからね」


 ギルド職員さんは苦笑いをする。


「次にドローンで探索したモンスターの分布です」


 キュキュッと地図の上に4色のマーカーで囲みを描いていく。


「中学校付近ではオーガを中心としたモンスターが4体をチームに徘徊し、小学校付近ではオーガを隊長としたホブゴブリン3体のチームが徘徊しています」


「パーティーを組んでいる・・・と?」


 和風の鎧を着た戦士の質問に、ギルド職員さんは黙って頷く。


「幼稚園付近ではホブゴブリン4体のチームが徘徊し、幼稚園から遠くなるとホブゴブリンの数が減ってゴブリンが増えていきます。また、ホブゴブリン、ゴブリンともに弓や魔法を行使する個体も確認されています」


 それはあまり聞きたくない情報だった。

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